いわゆる「アベノミクス」の中のデフレ脱却のための金融緩和が、
なぜどのように経済状況を改善するかを、お話したのでした。
これをご覧の中には、「アベノミクス」の恩恵なんて
自分は感じていないというかたも、すくなくないと思います。
今回は安倍政権の経済政策で割りを食っている層、
しわ寄せが来る層について、お話したいと思います。
「アベノミクスと日本の「中間層」の行方を考える」
(はてなブックマーク)
「アベノミクス」で割りを食うのは、以下の「中間層」とされる人たちです。
アベノミクスは政策の波及順序として、はじめの段階では、
資産を保有する富裕層と、雇用が得られたり時給が上がったりすることで
労働市場の弱者層とがメリットを得る一方で、中間層の実質賃金が低下する、
「中間層が割を食う」政策パッケージだ
この「中間層」とは、株や不動産のような資産はとくにないけれど、
雇用と給料がいちおうは安定している勤労者としています。
年収は400万円程度としていますが、もっと高収入でも資産がなければ、
ここでいう「中間層」に入れてよいとしています。
多くの人が「庶民」とイメージできる層だと思います。
「中間層」とは、主として「雇用と給料が安定している勤労者」のイメージだ。
年齢や家族構成、居住地域などによって中間層と感じられる
所得は異なるだろうが、世帯主が正社員で年収400万円以上、
というくらいのサラリーマン世帯を想定している。
年収が高くても、管理職でも、ストックオプションを含む
株式や不動産を億円単位で持っていない方は、
経済構造的には中間層の仲間と考えてよかろう。
>実質賃金の低下
中間層へのしわ寄せとして、最初に取り上げたいのは実質賃金の低下です。
デフレ時の金融緩和によって、インフレに向かうと
市場に出回るお金が増えて貨幣価値がさがることになります。
それゆえすでに雇用が確保されている人たちの
実質賃金が下がるということです。
デフレ時に金融緩和を行なうと失業率はすぐ改善しますが、
失業率が低くなって企業の生産性が高くなってこないと、
一度下がった被雇用者の実質賃金には反映されないです。
よって実質賃金が上昇するまでには、すこし時間がかかることになります。
「アベノミクス」は実質賃金への政策的な対処もあって、
それが「第三の矢」と呼んでいるもの(成長戦略、規制緩和など)なのですが、
いまのことろ成果は出ていないということです。
つぎのように2013年6月ごろから、金融緩和の効果が
出てきたようで、実質賃金指数が下がり始めています。
痛烈なのは、2014年4月の消費税増税によって、
急激に実質賃金指数が落ち込んでいることです。
この点に関しても、消費税増税が失敗だったことはあきらかです。
10%に増税したら大変なことになったでしょう。
えーと・・・マスコミはアベノミクスによる円安のせいで実質賃金が下がったって言っているけど、このグラフを見ると消費税増税によって実質賃金が下がっているようにしか見えないのですが・・・ pic.twitter.com/GRXxSUUB4X
— 山本博一(ひろ) (@hirohitorigoto) 2014, 10月 30
関連記事:
「実質賃金1.3%低下、4カ月連続減少 10月毎月勤労統計」
>消費者物価指数の上昇
引き続いて物価の上昇について見て行きたいと思います。
これも金融緩和の効果が現れる2013年6月ごろから、
物価上昇率がプラスとなり、以後じわじわと上昇率が上昇しています。
企業の収益を高めるために物価指数の上昇率を上げるのが、
金融緩和のそもそもの目的ですから、とうぜんの結果ということです。
テレビ・新聞では報道されないアベノミクスの正体! ٩(๑`ȏ´๑)۶ RT @ykabasawa: 上がる物価と下がる実質賃金
アベノミクスにより経済悪化 pic.twitter.com/wAPa1gUv7L
— SAM ☮ (@2525slow) 2014, 11月 15
消費者の立場からすれば、物価が安いほうが
ものを買いやすいことは、いまさら言うまでもないことです。
よってデフレ脱却にともなう物価上昇は、
雇用と収入がいちおう安定している中間層にとっては、
かえって負担が増えることになります。
2014年4月の消費税増税で、消費者物価が急激に
上昇していることが、ここでもきわだっています。
もちろん金融緩和や景気回復と無関係の物価上昇です。
かかる物価高は実質賃金の低下で生活が苦しくなった中間層の家計を、
いっそう圧迫するということです。
>円安
円安は輸出を有利にするので、貿易収支が改善されるし、
日本国内に生産拠点が帰って来る傾向を促進するので、
国内に雇用が増えることが期待できるのでした。
ところが円安は輸入に不利になりますから、
輸入に頼る物品の物価高を招くことになります。
日本はとくに食料品などに輸入品が多いですから、
一般の消費者の家計をかなり身近なところで圧迫することになります。
「円安120円台:食品値上げ、家計圧迫 輸入牛肉3割高」
>株価の上昇
株価は企業の経営状態を直接的に反映しますから、
株価が高くなれば雇用状況が改善されることが期待できます。
ここでの「中間層」はというと、株式とか不動産といった
資産をほとんど持たない人たちです。
(日本人の8割は株式を持っていないのですが)
よって株価が上昇しても、それが直接的に「中間層」への
恩恵となることはないことになります。
日本経済の後退に関するBBCの記事。賃金が上がっていないのに増税によって消費者心理が冷え込んだことが要因と分析。人口の8割が株を所有していないので株価上昇が恩恵にならないとも。/http://t.co/teCq3xeY1E pic.twitter.com/BGlYyQFekO
— Shotaro TSUDA (@brighthelmer) 2014, 11月 17
「実質賃金は下がって、デフレ脱却と円安で物価が上がって、
株価の上昇は自分には関係ない」というのが、
「中間層」が置かれている状況ということになるでしょう。
「アベノミクスの恩恵なんてない」というかたにとっての経済波及効果も、
だいたいこうしたものではないかと思います。
付記:
安倍政権の経済政策は中小企業や、大手の下請けも圧迫するという記事。
アベノミクスの効果がいまだ波及しないところが多く、
また原料を輸入に頼る業界は、原料費の高騰で経営が苦しくなっています。
「建設業界、中小企業にしわ寄せがくるアベノミクス」
「円安の恩恵どこまで? 最高益のトヨタも下請けは悲鳴」