2014年12月20日

toujyouka016.jpg 信仰としての家族思想(2)

前のエントリの続き。
日本人の中には因習・反動的な家族思想
宗教の代わりになっているというお話です。

「サザエさんに見る日本の“家族信仰”は異常 
『シングルマザーの貧困』著者が語る、標準以外を無視する社会」

(はてなブックマーク)


 
>フィクションに現れる家族信仰

すくなくない日本人が、かかる「家族教」にとらわれていることは、
フィクションに現れると思います。
創作ゆえに作者の偏見が反映されやすいからです。

サザエさんの新聞連載が始まったのが1946年です。
それから70年近く経っているのに、ああいうユートピア家族とでもいうべき
標準世帯を前提に、制度が作られているのが問題です

『サザエさん』は日本の家族を語る上でやり玉に挙げられますね。
波平とマスオは平凡な会社員ですし、フネとサザエは専業主婦ですから、
「家族教」が教えるところの「正しい家族」だと思います。
もっともサザエさんの家庭は2世帯で暮らしているし、
夫が妻の親と同居ですから、かならずしも典型的ではないかもしれないです。


もっと最近に作られたずっと「典型的」な作品があります。
臼井儀人氏の『クレヨンしんちゃん』です。
『クレヨンしんちゃん』の家庭環境の特徴はつぎのようでしょう。
こうした家庭が平凡なしがない庶民として描かれるのですね。

「少数派を排除する「日本の大衆コンテンツ」に未来はあるのか?」
日本での子ども向けアニメ作品にありがちな家庭環境というと以下のような特徴がある。
・東京郊外のベッドタウン住まい
・お父さんはサラリーマンでお母さんは専業主婦
・長男長女の4人家族
・裕福ではないが貧しくはなく、家庭環境は良好

まさに「家族教」の教える「標準家族」が、
ふつうで多数派であるかのように描かれている典型だと思います。
じつはこのような家庭環境はふつうでも多数派でもないのですが、
このあたりは上述のサイトで分析しています。

子どもアニメの描く家庭像は現実の日本と大きくずれていて、
疑似マジョリティの世界となっている。
もっというと「バブル期の理想家族」の次元で止まっているのだ


それでも漫画が描かれた当時は、本当に平凡なしがない
庶民だったのでしょうが、現在の基準では庶民の暮らしの
平均からは逸脱した裕福層になっているのですよね。


このように平均より恵まれた暮らしをしている
アニメに登場する家族を、「平凡で多数存在する庶民」と、
すくなくない人が思い込んでいるのではないかと思います。

「標準家族」という信仰は、時代の変化に追随できず、
現実からどんどん乖離していってもそのままということです。
時代に合わせた変化ができないところが、
信仰の信仰たるゆえんなのだろうと思います。


>合理性のない家族信仰

「家族教」というものは、信者だけが理解できる信仰ですから、
正当化する合理的な理由なんてないと言えるでしょう。
それゆえ信者たちは合理性を問われたり批判されたりすると、
美醜の問題にすり替えたり、感情的な反発をすることになります。

安倍首相はよく「美しい」という表現を使いますね。
彼は美しい家族像に収まらないものに目を向ける気があるのかどうか
これは、繰り返しますが美醜や感情の問題ではなく、人権の問題です。

「美しい」なんてことばが出てきたら要注意ですね。
それは彼らの信仰に合致しているというだけということです。
そして「美しくない」という彼らの信仰のもとに、
教義に合わない存在を迫害する可能性があるということです。

選択的夫婦別姓の反対派(非共存派)も、
しばしば「夫婦別姓なんてわがままだ」とか、
感情むき出しで攻撃してくることがあります。
これも信仰ゆえに反対する合理的な理由がないので、
感情的に反発するしかない、ということでもあると思います。


記事では最後に、基本的人権と民主主義の問題だと
述べていることは、注意したいと思います。

シングルマザーもその子どもも安心して暮らせる社会は、
平等意識や人権意識のうえに成り立つものです。
そしてその意識は、民主主義社会の拠って立つ基盤でもあります。
これだけは、みんなで守っていただきたい。
シングルマザーのことはきらいでも、
民主主義のことはきらいにならないでください!

腹が立ったり美しいと思えないのは自由だが、
そう思われる人たちにも生きる権利はあるということです。
そして自分が腹が立ったり美しいと思えない人も、
おなじ社会でいっしょに暮らすのが民主主義だということです。

posted by たんぽぽ at 21:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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