フランスの家族政策が効果を発揮していることはよく言われますし、
それに触れた記事をこれまでにもいくつか紹介したことがあります。
日本も参考にするところはたくさんあるわけです。
「【こんにちは!あかちゃん 第24部】
少子化乗り越えた フランスから<上>手厚い家族給付制度」
「【こんにちは!あかちゃん 第24部】
少子化乗り越えた フランスから<下>家族を社会の根本に」
ここでは「下」の記事にある「三つの柱」を見てみることにします。
これはそっくり日本でも適用できることだと思います。
「フランスの家族政策には三つの柱がある。
一つは法的環境の整備。事実婚や婚外子の容認、異性同性のカップルに
結婚と同等の権利を与える「連帯市民協約(PACS)」の法制化、
同性婚解禁と、時代とともに進化している。
ひとつ目の柱は法的環境の整備ですが、
フランスでは「時代とともに進化している」ということは、
あたりまえとはいえすばらしいことです。
日本ではいまだに因習・反動的な家族観に捕われて、
時代とともに変化ができないでいるからです。
このひとつ目の柱は、日本で言えば選択的夫婦別姓の導入、
婚外子差別の撤廃、300日規定問題、事実婚の容認、
同性結婚など性的少数者の問題が相当することだと言えます。
そしてこれは安倍政権の「女性活用」の中では、
もっとも後ろ手になっているところだと、わたしは思います。
選択的夫婦別姓を認められるかが「試金石だ」とも言われますが、
この試金石はクリアできそうにないですね。
こうした法的環境の整備がもっとも遅れるのは、
因習・反動的な家族観に真っ正面から抵触するからだと思います。
こういうところに手をつけずに「女性活用」などと言うから、
「女は家庭を守れ」という旧式の秩序を維持したまま、
お金だけ稼いでもらおうとしている、
なんて思われることにもなるのでしょう。
二つ目は家族給付制度。家族の収入や子どもの状況に応じて、
全国家族手当金庫(CNAF)が財政的に支援する。税制上の優遇策もある。
ふたつ目はお金の問題ですが、財源という壁に当たりやすいせいか
これも日本ではあまり進んではいないですね。
「子ども手当て」は「ばらまき」と攻撃してつぶしました。
配偶者控除の廃止の代償として子育て世帯への支援が必要と
議論されているにもかかわらず、「子ども手当て」を再検討するのは
「タブー」になっているのか出てこないです。
幼児教育の無償化は公約にかかげていましたが、
その実態は「無償化」とは名ばかりの、かなりおそまつなものでした。
配偶者控除の廃止は、財源の確保につながるからか、
来年度にさき送りになったとはいえ、検討を続けてはいます。
三つ目は保育サービス。家庭と職業を両立させて両親が働けるよう、
子どもを受け入れるさまざまなネットワークを整備している」
3つ目に関しては、保育所の数はまがりなりにも増えているようです。
育児休暇の取得や休暇取得後の職場復帰については、
まだまだ整備はふじゅうぶんな感じです。
ワークライフバランスについては、たとえば長時間労働の制限を
法的に整備しようという動きはほとんどないです。
女性の採用や管理職への登用は、与党は数値目標をかかげています。
労働者派遣法を改正して、派遣で雇いやすくしようとするなど、
女性が労働市場の周辺部に追いやられていることに関しては、
あまり理解がないですね。
ここで大事なのは、これらの政策を小出しに行なうのではなく、
すべての政策を可能なかぎり全部いっしょに行なうことです。
まさに家族政策は「ありとあらゆること」が必要ということです。
記事では「何が最も効果的だったか」という質問に対して、
「愚問だな」という調子で、お答えしていますね。
何が最も効果的だったか。
「家族政策に秘策はない。いろんな施策を一緒に、横断的にやるしかない。
家族問題には教育、交通、住宅、健康の問題もある。
フランスの家族政策の特徴は、その政策の総合性にある。
家族特性に合わせた減税、住宅提供、家族介護、すべてが家族政策。
人口動態だけを問題にしてはいない。すべての家族が全体として
肯定的な環境で暮らすことを目指している」
さらに「人口動態だけを問題にしてはいない」とも答えていて、
フランスの家族政策は国民すべての幸福のためであり、
単なる少子化対策でないことをしめしていると言えます。
(記事中は「家族政策」となっていて「少子化対策」と書いてない。)
付記:
補助ブログの3月2日と3月4日エントリで、フランスにおける
出生率回復のための「シラク3原則」を紹介したことがあります。
「少子化は文化を滅ぼす 仏の「シラク3原則」に学べ」
1つめは、子どもを持っても新たな経済的負担が生じない、
2つめは、無料の保育所を完備、
3つめは育児休暇から女性が職場復帰する際、
ずっと勤務していたものとみなして企業は受け入れる。
この3原則と、婚外子を差別しないPACS(民事連帯契約)を、
ワンセットの政策パッケージとして導入しました。
1つめは、上述の「家族政策には三つの柱」のうち二つ目の柱、
2つめと3つめは、三つ目の柱に相当することになります。
「婚外子を差別しないPACS」が一つ目に柱ですね。
ここでも「ワンセットの政策パッケージとして導入」とあって、
ありとあらゆる政策を可能なかぎりいっしょに
行なうことが大事だとしています。