2015年01月02日

toujyouka016.jpg 誰がために壁は倒れた?

ベルリンの壁が崩れて四半世紀が過ぎました。
旧共産主義圏の国ぐにの、その後の経済状況はかんばしくない、
という指摘があるのでご紹介します。

「誰がために壁は倒れた? 資本主義への移行の収支決算」
(はてなブックマーク)

ちなみに第二次世界大戦の終了から四半世紀後は1970年です。
冷戦崩壊後からすでにこんなに時間が経っているのですね。

 
調査対象となった旧共産主義圏の国ぐには、
旧ソビエト連邦、東ヨーロッパ諸国とモンゴルです。
かつての「東欧共産圏」と考えてよいと思います。
これらの国ぐにを経済成長率によって、「明確な失敗国」「相対的な失敗国」
「追随国」「成功国」の4つにカテゴリわけしています。

kyuu-kyousanken-keizaiseichou.png

成長率1.7%は裕福なOECD加盟国の平均です。
成長率2%は、所得が2倍になるのに35年かかるので、
それほどの高度経済成長ではないのですが、
いちおうここでラインを引いて、これ以上を「成功国」としています。

成功国の成長率をさらにくわしく見ると、
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ウズベキスタン、ラトビア:2%
ブルガリア:2.2%
スロバキア、カザフスタン:2.4%
アゼルバイジャン、エストニア、モンゴル、アルメニア:3%前後
ベラルーシ:3.5%、
ポーランド:3.7%、
アルバニア:3.9%
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となっています。


このあと
--------
3%以上の経済成長率か?
資源輸出に経済を頼っているか?
所得格差は大きく開きすぎているか?
民主主義は定着したか?
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といった条件をつけて、どんどんしぼっていくと、
冷戦崩壊後、民主主義と資本主義経済が定着した国は、
ポーランド1国だけという事態になるのでした。

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1989年11月9日に人々が資本主義への移行によってもたらされると予想した、
経済の他の欧州諸国への収斂、格差の緩やかな拡大、
完全な民主主義は、ポーランド1ヶ国においてのみ実現した。
範囲を広げてもせいぜい他の2つの小国において実現したと言えるに過ぎない。
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この結果は、わたしに言わせればさほど意外でもないです。
はなはだ残念なことではありますが、こんなものだと思います。
そう簡単には追いつかないだろうと思っていました。

ひとつの国になったドイツでさえ旧西側と旧東側とのあいだで
格差がかなり残っているくらいです。
国全体が共産主義だったところは、なおさらだろうと思います。

「「ベルリンの壁崩壊」から25年」
(はてなブックマーク)
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格差は今も残り、旧東ドイツ地域では失業率が10%を超え
西側より大幅に高いほか、1人当たりのGDPも
西側の3分の2程度にとどまっています。
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むしろ「経済の他の欧州諸国への収斂、格差の緩やかな拡大、
完全な民主主義」が、「資本主義への移行によってもたらされる」と
素朴に信じていた人がたくさんいるらしいのが意外です。
民主主義も資本主義経済も、相応の経験を積むことで
成熟できるのであり、それまでの蓄積がない社会が
一朝一夕に実現できるものではないからです。


さらにこれら旧共産主義圏の国ぐには経済だけでなく、
政治面や文化面でも停滞や後退をしていることを指摘しています。
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予想より悪い展開を見せた政治
控え目に見積もっても25万人がこれまで犠牲になった打ち続く戦争
ロシアとウクライナの平均寿命の大幅な低下
欧州の旧社会主義国の人口の低成長、ないしマイナス成長
汚職、政治の私物化

ロシアが四半世紀の間に芸術、文学、哲学、科学の分野において
国際的に何の業績も残さなかったのは1800年代初頭以来初めてである

重要な政治的指導者という点でも欠落が見られる
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そういえばロシアには目立つ文化人がめっきりいなくなりましたね。
補助ブログの8月19日エントリで、ロシアは先進国から
脱落してきていると、わたしは書いたのですが、
文化面でかかる脱落ぶりが顕著だったわけです。


こうした政治、経済、文化の諸方面にわたる停滞・後退の原因は、
共産主義政権時代の抑圧と考えることになるわけです。
冷戦崩壊以前は、共産主義イデオロギーのソフトパワーによって
なんとか国力を保ってきた、ということなのでしょう。

そしてそれだけでなく、これら旧共産主義圏の国ぐにが
共産主義化する前から、中進国や後進国だったこともあると思います。
よって共産主義化しなかったとしても、現在の旧西側諸国の水準に
追いついたかどうかはわからないと、わたしは思います。

このような政治、経済、文化の停滞や後退を見ると、
こんなことなら共産主義体制を続けていたほうが
まだよかったのではないか?という意見もあるかもしれないです。
(「誰がために壁は倒れた?」というタイトルは、そう言いたげですよね。)

わたしは現状がこのようでも、共産主義がずっと続くよりは、
終焉したほうが、まだましだったと思いますよ。
「きのうの世界」は記憶が美化されてよさげに見えるものです。
不健全なシステムで国力を維持しても、いつかどこかで破綻するでしょう。


付記:

追記のようなエントリがあります。

「誰がために壁は倒れた? 資本主義への移行の収支決算・おまけ」
「誰がために壁は倒れた? 資本主義への移行の収支決算・おまけその2」

posted by たんぽぽ at 22:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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