報告書を発表したのでした。
これがネットでちょっと話題になったのでした。
「OECD「トリクルダウンは起こらなかったし、所得格差は経済成長を損なう」
という衝撃の報告について」
(はてなブックマーク)
トリクルダウン現象というのは「したたり落ち」で、
裕福層がより裕福になれば、その富が自動的に中間層や
貧困層にも流れてきて社会全体が裕福になる、というものです。
(裕福層や大企業に都合のいい理屈だと言えます。)
約25年前と最近とのデータを比較したところ、
そんな「したたり落ち」はしていないことがわかったのでした。
それどころかOECD加盟国のあいだでは、格差が広がっていることが
だんだん問題になっている、ということも指摘されています。
現在は過去30年間で裕福層と貧困層の格差が最大という時代です。
記事では1985年と2011年とで所得格差のジニ係数が
どう変化したかを図にしめしています。
ほとんどのOECD加盟国で、ジニ係数が大きなっている、
すなわち格差が広がっていることはあきらかです。
26年間でかろうじてジニ係数に変化がなかったと言えるのが、
フランス、オランダ、ベルギーの3国だけです。
ジニ係数が小さくなったのは、OECD加盟国の中では
開発途上国に近く、もともとの格差が大きかった
ギリシャとトルコの2国だけという事態です。
(図にしめされた国の中では、日本はジニ係数が大きいほうですね。
日本以上に格差の大きい国は、OECDの中では開発途上国に近い
トルコとメキシコのほかは、自己責任の国と言われるアメリカ合衆国と、
かつてのサッチャー主義のイギリス、そしてイスラエルだけです。)
ようは金持ちばかりがますます金持ちになっていたのですよ。
貧しい人たちはあまり所得が増えないどころか、
不況時には所得が減ってますます貧しくなっているということです。
トリクルダウン現象なんて虚構だったと言わざるをえないです。
過去30年でOECDに加盟する諸国の大半でトリクルダウンは起こらず、
富裕層と貧困層の格差が最大になったということ。
その中でも1%の超富裕層を始めとした最上位の富裕層の平均所得が
特に増加していると同時に、下位10%では好況時の伸びが遥かにゆるやかな一方で
不況時には落ち込み、相対的所得貧困が指摘されています。
わたしに言わせれば、いままでトリクルダウン現象が
信じられていたことのほうが、意外にして衝撃ですよ。
政府が富を積極的に動かさないかぎり、富の再分配なんて起きない
ということは、とうぜんの認識だと思っていました。
ヨーロッパの国ぐには、第一次世界大戦に前後するころ、
旧来の貴族や近代以降台頭した資本家に偏在した富を
再分配させるための「経済の民主化」政策を行なったのでした。
日本では戦後の財閥解体と農地改革がこれに当たります。
これほど極端でないにしても、政府がなにもしないでいると、
お金はあるところにばかりどんどん集まっていくということです。
それを防ぐためには、富を再分配させるための
一定の施策が常づね必要ということになります。