2015年01月04日

toujyouka016.jpg 格差が経済成長を阻害

前のエントリの続き。
OECDが「トリクルダウン現象は起きない」という報告書のことです。

「OECD「トリクルダウンは起こらなかったし、所得格差は経済成長を損なう」
という衝撃の報告について」

(はてなブックマーク)

この報告書ではさらに格差が広がっていくと、社会全体が停滞して
経済成長が鈍くなるということも指摘されています。

 
つぎの図に格差があった場合となかった場合の
人口ひとりあたりのGDP成長率をしめしてあります。
(この図、見かたがちょっとわかりにくいんだけど。)
藍色のダイヤ型プロットは、実際の成長率です。
水色の棒グラフは格差の影響がなかった場合の成長率、
オレンジ色の棒は格差によって経済成長に影響が出た部分です。

2. 格差変動(1985-2005年)のその後の累積的成長(1990-2010年)に対する影響(推計)

水色の棒とオレンジの棒を加えたものが藍色のダイヤになります。
オレンジの棒はほとんどの国でマイナス側に伸びていて、
格差の影響が経済成長を阻害していることをしめしています。
よって実際のGDP成長率(藍色のダイヤ)は、
水色の棒の値より小さい値をしめすことになります。


なぜ格差があると経済成長が鈍くなるのかは、
OECDによると、それは「人的資源の蓄積を阻害することにより、
不利な状況に置かれている個人の教育機会を損ない、
社会的流動性の低下をもたらし、技能開発を妨げる」ためです
ということです。
これも容易に理解できることだと思います。
(ある意味わかりきったことで、なにをいまさらの感もありますね。)

「社会的流動性の低下」というのは、「貧困の連鎖」ですね。
格差が大きい社会においては、貧しい家庭に産まれた子は
教育が受ける機会を持てず、社会に出てからも
所得の大きい知的職業につけず、貧困層となりやすいということです。

10月25日エントリで、親が高学歴のほうが
子も高学歴であることが多い
ことや、親の年収が高いほうが
大学進学率が高いことをしめしたのでした。
格差が大きい社会ほど、この傾向が固定化されるようになり、
親の学歴や年収があったほうが、高等教育を受けるために
より有利になるということです。


保護者の年収と進路

前近代においては、高等教育を受けられるのは、
ひとにぎりの特権階級だけでしたし、
いわゆる「識者」もそうした中にしか現れなかったのでした。
すべての国民が一定以上の教育を受けられる現在のほうが、
知性が特権的だった前近代よりも、社会や経済が早いペースで
発展しているのはあきらかだと思います。

日本の江戸時代には寺子屋が普及していて、
同時代のヨーロッパ諸国よりも、日本の教育水準は高かったのでした。
それが明治時代以降の急激な発展の原動力のひとつになった
ということを、聞いたことがあるかたもいらっしゃるでしょう。

ここまで極端でなくても、格差が小さいほうが、
より多くの国民が高等教育を受けられますから、
社会全体の知的水準が高くなり、知的活動や生産的活動にかかわる
人数が多くなって、社会の発展をうながすことはあきらかでしょう。

posted by たんぽぽ at 22:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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