OECDが「トリクルダウン現象は起きない」という報告書のことです。
「OECD「トリクルダウンは起こらなかったし、所得格差は経済成長を損なう」
という衝撃の報告について」
(はてなブックマーク)
この報告書ではさらに格差が広がっていくと、社会全体が停滞して
経済成長が鈍くなるということも指摘されています。
つぎの図に格差があった場合となかった場合の
人口ひとりあたりのGDP成長率をしめしてあります。
(この図、見かたがちょっとわかりにくいんだけど。)
藍色のダイヤ型プロットは、実際の成長率です。
水色の棒グラフは格差の影響がなかった場合の成長率、
オレンジ色の棒は格差によって経済成長に影響が出た部分です。
水色の棒とオレンジの棒を加えたものが藍色のダイヤになります。
オレンジの棒はほとんどの国でマイナス側に伸びていて、
格差の影響が経済成長を阻害していることをしめしています。
よって実際のGDP成長率(藍色のダイヤ)は、
水色の棒の値より小さい値をしめすことになります。
なぜ格差があると経済成長が鈍くなるのかは、
OECDによると、それは「人的資源の蓄積を阻害することにより、ということです。
不利な状況に置かれている個人の教育機会を損ない、
社会的流動性の低下をもたらし、技能開発を妨げる」ためです
これも容易に理解できることだと思います。
(ある意味わかりきったことで、なにをいまさらの感もありますね。)
「社会的流動性の低下」というのは、「貧困の連鎖」ですね。
格差が大きい社会においては、貧しい家庭に産まれた子は
教育が受ける機会を持てず、社会に出てからも
所得の大きい知的職業につけず、貧困層となりやすいということです。
10月25日エントリで、親が高学歴のほうが
子も高学歴であることが多いことや、親の年収が高いほうが
大学進学率が高いことをしめしたのでした。
格差が大きい社会ほど、この傾向が固定化されるようになり、
親の学歴や年収があったほうが、高等教育を受けるために
より有利になるということです。
父学歴別にみた,学校卒業者の大卒・院卒率。どの社会でも,親の学歴と本人の到達学歴は密接に関連している。 pic.twitter.com/FuVyp4Neqy
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2014, 6月 7
前近代においては、高等教育を受けられるのは、
ひとにぎりの特権階級だけでしたし、
いわゆる「識者」もそうした中にしか現れなかったのでした。
すべての国民が一定以上の教育を受けられる現在のほうが、
知性が特権的だった前近代よりも、社会や経済が早いペースで
発展しているのはあきらかだと思います。
日本の江戸時代には寺子屋が普及していて、
同時代のヨーロッパ諸国よりも、日本の教育水準は高かったのでした。
それが明治時代以降の急激な発展の原動力のひとつになった
ということを、聞いたことがあるかたもいらっしゃるでしょう。
ここまで極端でなくても、格差が小さいほうが、
より多くの国民が高等教育を受けられますから、
社会全体の知的水準が高くなり、知的活動や生産的活動にかかわる
人数が多くなって、社会の発展をうながすことはあきらかでしょう。