2015年02月13日

toujyouka016.jpg アメリカの保育事情

長谷川豊氏のとんでもない少子化対策の続き。

「女性管理職が少ない理由」
「また専業主婦願望問題」
「長谷川豊の少子化対策」

「保育環境を整えれば子供を産む、という大ウソ」
「フランスの少子化対策を、僕は成功と言わない」

 
長谷川豊氏は記事の後半で、延々とニューヨークのお話をしています。
ご存知のようにアメリカ合衆国は先進国でただひとつ、
少子化問題に悩まされていない例外的な国です。
それで効果的な少子化対策に反対したい人には
アメリカ合衆国の事例は、都合よく利用できるのかもしれないです。


アメリカ合衆国の出産・育児の事情は、前に話題にしたことがあります。
このときいただいたコメントで端的に紹介されていると思います。

「どこの出生率が高い国?」
「どこの出生率が高い国?(2)」

アメリカの平均出産年齢は25歳、というデータがあります。
http://amefuji.blog22.fc2.com/blog-entry-1869.html
アメリカは育児が市場化されていて、出生率も日本よりかなり高く2.0以上です。

・人種による出生率の違い
 ヒスパニック系>黒人>白人
・メキシコは平均出産年齢が若い。メキシコ移民がアメリカの
平均年齢を下げている?(ヒスパニックはカトリックが多いことが影響しているかと)
・中絶に強固に反対する勢力が存在する
・アメリカには公的保育制度がなく、市場で行わざるを得ない
(ベビーシッター、民間保育園)

(Posted by kiriko at 2012年09月26日 23:54)

アメリカ合衆国は人種ごとによる出生率の違いが顕著です。
とくにメキシコからの移民がアメリカ合衆国の平均出産年齢を
引き下げている可能性があります。

このように日本やヨーロッパ諸国には見られない特徴が
アメリカ合衆国にあって、それが出生率を高くしているということです。
こうした事情を無視して、「アメリカでは少子化は起きてないんですよ」
などと言われても、日本に当てはめられないことです。
単に「わかってないだけ」と言わざるをえないです。


長谷川豊氏は、マンハッタンのお話でこんなことを書いています。
「アメリカ合衆国では出産・育児と仕事との両立支援なんてない」と、
印象操作でもしたいのでしょうか?
臨月に入るでしょ?休めると思います?休めるわけないでしょうが?
アメリカですよ?会社に利益もたらさないんだったら死ねよって世界です。
当然、出産の超直前までみんな働いてます。

なんでそんなに急いでベビーシッターを探すかっていうと…
アメリカの育児休暇って、基本的に6週間です

2013年2月にアメリカ合衆国にある日本企業が、
現地の女性社員から女性差別で提訴されたことがありました。
なぜ訴えられたのかというと「子どもを産むことは出世上の自殺行為」と、
女性社員たちが警告されたことがあります。

「日本企業が訴えられた」

こうしたことを見ていると、アメリカ合衆国も出産・育児と仕事の
両立支援は、ヨーロッパの先進国並みに浸透していると思います。
長谷川豊氏の考えでは、アメリカ合衆国では
「差別的」と思われて、やっていけないだろうと思いますよ。


さらに長谷川豊氏は、アメリカ合衆国では保育所がすくないことや、
保育料がやたら高額であることを、挙げています。
出産して病院から放り出されたお母さんがまず何をすると思います?
ベビーシッター探しです。

トライステートエリアでは、日本とは全然違って
保育園なんてものはほとんどありません。
保育園のことはデイケアって言って、たまーにあるんですが、
近くにあるケースなんてむしろレアです。
そして、保育園であっても、月に月〜金で預け始めたら、大体10万前後かかります。
ちゃんとしたところなら15万以上かかります。

ベビーシッターが普通です。で、ベビーシッターは大体月に…
25〜30万ほどかかることも珍しくありません。

これは上述のコメントの引用中にあるように、
アメリカ合衆国には公的な保育制度がなく、
ベビーシッターや保育園はすべて市場化・民間化しているからです。


長谷川豊氏は日本でも保育制度をすべて民営化すれば、
少子化対策は解決するとお考えなのかと思います。
(堺屋太一氏はそうお考えのようですけれど。)

日本では保育制度は行政が担わなければむずかしいと思います。
すべて民営化したら、質はなおさらですが
数を保証することもむずかしくなると思います。
またアメリカ合衆国なみに保育料が高くなったら、
利用できるかたはほとんどいなくなるでしょう。

長谷川豊氏は書いていないのですが、アメリカ合衆国では
ベビーシッターがたりない、すなわち日本でいう
「待機児童」の問題は起きているのかと思います。
堺屋太一氏のお話では「ベビーシッターがいつでも来てくれる」そうです。
なので供給は需要をカバーできていると思われます。)

「待機児童」問題が起きていないなら、保育制度がすべて民間で、
かつ保育料が高額であっても、まがりなりにも
保育のニーズを支えられていて、アメリカ合衆国の現状には
なんとか合っているのだろうと思います。


フランスやスウェーデンみたいに、働く時間や家族環境があまりにも
日本と違うところと比較するんじゃなくて、
日本と同等の労働環境のところと比較してみろよ、と言いたいのです。

アメリカ合衆国は「日本と同等の労働環境のところ」ではないと思います。
上述のように、日本とおなじ調子で「子どもを産むことは
出世上の自殺行為」などと言うと、裁判で訴えられるからです。
日本の少子化を進行させる大要因である
「長時間労働」などという企業文化もたぶんないでしょうね。

日本の少子化問題を解決したいなら、日本とおなじように
少子化を経験して、それを克服した国を検討する必要があります。
その方法は日本でも導入可能で、かつ効果がある必要があることを考えると、
必然的にヨーロッパに眼を向けることになり、
スウェーデンやフランスに注目するということです。


長谷川豊氏はニューヨークで取材してきたと言っています。
なので書いていることにうそはないのでしょう。
僕、少子化問題にキー局で働いていた時から何度も取材して
特集を組んできたので、興味があって、ニューヨークに赴任した時に、
トライステートエリア(←マンハッタン周辺の地域ですね)の
子育て環境と育児・保育状況を取材してたんです。

ところが少子化問題に対するじゅうぶんな背景知識がないと、
なぜそうなっているのか、取材した事実に対して、
適切な分析や解釈ができないということだと思います。
それで記事のように、自分の考えに都合のいいように
事実をつまみ食いしたような「分析」になるのだと思います。
維新の党のブレーンの堺屋太一氏とおなじレベルかもしれないです。


関連記事:

「「専業主婦が増えれば少子化は解決」という意見で頭痛が痛い」
「女性の社会進出は少子化の原因なのか? 〜少子化を止める二つの方法〜」
(はてなブックマーク)

「「専業主婦になりたいわけじゃない!」 
元フジ長谷川豊アナの少子化対策案に現役ママから反論が殺到」

(はてなブックマーク)

posted by たんぽぽ at 21:56 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさんがここで時々扱ったきた長谷川豊氏が、ついにテレビから追放されました。
どれだけ失言を繰り返してきたでしょう。
メディアにかかわる人間が、あまりに偏った思想で、いつかこうなるだろうとは思ってました。
Posted by うがんざき at 2016年10月06日 07:24
むかしのエントリにコメント、ありがとうございます。

>長谷川豊氏が、ついにテレビから追放されました

予想以上の大炎上になりましたね。
ネットの発言が原因で、たくさんあったレギュラー出演が
全部なくなるというのは、これまでになかったのではないかと思います。


>いつかこうなるだろうとは思ってました

わたしはこのあたりは悲観的な予想をしていて、
ああいうのは視聴者受けするし、それゆえいつまでも
メディアに重宝されるだろう、くらいに思っていたです。

実はまだ悲観的で、しばらくは鳴りをひそめるだろうけれど、
いずれまた出てきて、元の調子になるのではないか、
なんて思ったりしているのですが。
Posted by たんぽぽ at 2016年10月07日 20:57
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