2015年02月21日

toujyouka016.jpg 民法改正を大法廷回付

選択的夫婦別姓と再婚禁止期間の訴訟について、
2月18日に最高裁大法廷に回付されることになりました。
大法廷が憲法判断をするのは、どちらも初めてです。
ひさしぶりの民法改正に関する大きなニュースです。

「夫婦別姓と再婚禁止期間で憲法判断へ」
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「夫婦別姓・女性の再婚禁止期間 最高裁、初の憲法判断へ」
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「最高裁大法廷:民法の夫婦同姓、再婚禁止期間…憲法判断へ」(1/2)
「最高裁大法廷:民法の夫婦同姓、再婚禁止期間…憲法判断へ」(2/2)
「夫婦別姓と再婚禁止期間、最高裁が初の憲法判断へ」
(はてなブックマーク)

「「夫婦別姓」最高裁が憲法判断へ
「結婚前の姓を使うためペーパー離婚した」原告も期待」

(はてなブックマーク)
「女性の「再婚禁止期間」最高裁が憲法判断へ--
原告代理人「新しい判断があると期待」」

(はてなブックマーク)

 
夫婦別姓をめぐる訴訟は、東京都内の事実婚の夫婦ら5人が
「結婚すればどちらかの姓を名乗ることを強制され、精神的苦痛を受けた。
規定は男女平等の権利を保障した憲法に反する」などとして
国に計600万円の慰謝料を求めた。

13年5月の一審・東京地裁は「別姓の権利を憲法が
保障しているとは言えない」として請求を棄却。
14年3月の二審・東京高裁も「違憲とは言えない」と判断した

夫婦別姓訴訟は、わたしのブログでも取り上げました。
ご存知のように1審、2審とも原告棄却に終わったのでした。

「夫婦別姓訴訟・請求棄却」
「夫婦別姓訴訟・控訴を棄却」


女性の再婚禁止期間の規定をめぐる訴訟は、岡山県の女性が
「離婚後、民法の規定によって再婚の時期が遅れ、精神的苦痛を受けた」
として国に慰謝料165万円を求めたもの。
この規定は、子の父親が誰かという推定が重なって混乱しないために設けられている。

12年10月の一審・岡山地裁は「規定は父子関係を
めぐる争いを防ぐ目的があり、合理性がある」として請求を棄却。
13年4月の二審・広島高裁岡山支部も同様の理由で訴えを退けた。

再婚禁止期間についても立法不作為の訴訟があり
(お恥ずかしながらぜんぜん知らなかったです)、
やはり1審、2審とも原告の訴えは退けられたのでした。

「女性の再婚禁止期間立法不作為訴訟につき岡山地裁の判決が出されました」
「女性の再婚禁止期間訴訟について広島高裁岡山支部の判決が出されました」

訴訟の判断 夫婦別姓 女性の再婚禁止期間

選択的夫婦別姓と再婚禁止期間の訴訟に対して
大法廷で憲法判断がなされることになったのは、
わたしには意外でびっくりしているところです。
これは両訴訟の原告のかたや原告団を支えてきたかたがたの
努力の産物であり、率直に評価したいところです。

夫婦別姓訴訟は1審、2審とも原告棄却になって、
行き詰まってどうしたらよいのかと思っていましたし、
ここに大きな可能性が出てきたことは、ひとまず期待したいと思います。

それでもあまり期待しすぎないように、注意はしたいのですよね。
以下の記事に別姓訴訟の原告のかたのコメントがありますが、
わたしもおなじことを思っていますよ。
これまでに何度となく「ぬか喜び」をさせられているからです。

http://www.bengo4.com/topics/2703/
最高裁大法廷に回付されたことについては、「いまはまだ半信半疑で、
過度な期待はしないようにと思っている」と述べつつも、

最高裁大法廷に回付されるのは、つぎのような場合です。
よってこのたび大法廷回付ということは、光明が見えたかとも思います。
http://taraxacum.seesaa.net/article/155540282.html#comment
・初めて憲法上の判断をするとき
・違憲判決をするとき
・憲法上の判断についての判例を変更するとき
は、必ず大法廷で裁判しなければなりません。
(裁判所法10条)
今回の場合は、合憲判決をするのは
先例に沿った判決なので、小法廷で裁判できるので
大法廷に回付する必要はないのです。
大法廷に回付されたと言うことは
第三小法廷では違憲との立場が多数を占めたということになります。

(2010年07月10日 21:30)


2013年3月に大法廷回付された婚外子の相続差別は、
1995年に最高裁大法廷で合憲の判決が出ていたのですよね。
それであらためて大法廷回付というのは、
1995年の判決が変更になる可能性が高かったのでした。

再婚禁止期間については1995年に、最高裁小法廷で
違憲の判断が出なかった過去があったのでした。
それで今回大法廷に回付されるということは、1995年と違った判決、
すなわち違憲判決が出る可能性が高いことになります。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150218-00002705-bengocom-soci
過去には、1995年に最高裁小法廷で再婚禁止期間が扱われたが、
「違憲」の判断は下されなかった。
今回、最高裁の憲法判断を示す可能性があることについて、
作花弁護士は「前と同じ理由で判断するなら、わざわざ大法廷で審理しない。
『違憲だけど、損害賠償を認めない』という判決もありえるが、
その場合も、法律改正が促されることになる」と期待を込めた。


選択的夫婦別姓は、過去の最高裁判決がないので、
今回が初めての最高裁判断となります。
よって上述の「初めて憲法上の判断をするとき」に該当するから
大法廷に回付された、という可能性が考えられます。

したがって同姓強制の現行民法に対して、
違憲判決が出ない可能性もあると、わたしは思っています。
そうなった場合、選択的夫婦別姓が認められるのは、
いよいよ遠い未来になってしまい(反対派は自信を持って反対するでしょうし、
ふたたび大法廷回付されるには15-20年くらいさきになりそうですし)、
かえって悲観的な状況となるので、戦々恐々としてもいます。

posted by たんぽぽ at 08:20 | Comment(13) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
ほんと、戦々恐々ですね。

最高裁の方々が常識的な方々であることと、日本の憲法が捨てたものでないことを祈るばかりです。

あと、これまで賛成、と言ってくださっていた政治家の皆さんには、ぜひ、「口先だけ」といわれないよう、ぜひ最高裁の判決前に具体的な行動に移っていただきたいと思います。
Posted by 魚 at 2015年02月22日 01:19
魚さま、おひさしぶりです。
このエントリにコメントありがとうございます。

>最高裁の方々が常識的な方々であることと、
>日本の憲法が捨てたものでないことを祈るばかりです

まったくですね。
夫婦別姓訴訟の大法廷回付の理由が、
「違憲判決をするとき」であることを祈るばかりです。

>これまで賛成、と言ってくださっていた政治家の皆さんには、

そうですよね。
でも比較的熱心とされている議員でも、この問題は動きがよくないですね。

2013年の婚外子相続差別のときみたいに、違憲判決が出てから、
政権党内で反対派が噴き上がるなんてことは、起きてほしくないものです。

2010年の婚外子相続差別の大法廷回付のときは、
当時の菅政権は民法改正法案の準備を始めたのですよね。
このときは原告が和解したので、あっさり法案提出の準備を
やめてしまうというていたらくに終わったのですが。
Posted by たんぽぽ at 2015年02月22日 08:26
会員アンケートなのですが、こんなアンケート結果がありました。設問が3択であるのがいいですね。
http://news.mynavi.jp/news/2015/03/04/093/
Posted by 魚 at 2015年03月04日 13:14
魚さま、コメントありがとうございます。

>設問が3択であるのがいいですね。
>http://news.mynavi.jp/news/2015/03/04/093/

ご紹介ありがとうございます。
これはなかなか興味深いアンケートですね。

この3択はわたしもとてもいいと思います。
選択制ということがはっきりわかりますし、
そうでなければ強制だということも、ストレートに表現していますしね。
(なぜいままでこの発想がなかったのだ?という感じです。)

========
Q.「夫婦別姓」についてどう思いますか? あなたの考えに近いものを選んでください。

結婚したら「夫婦同姓」か「夫婦別姓」か選べるようにするべき 71.3%
結婚したら全員が「夫婦同姓」にするべき 23.7%
結婚したら全員が「夫婦別姓」にするべき 2.7%
その他 2.3%
========

アンケートの設問がわかりやすいからなのか、
「選択制」が7割以上と、内閣府や新聞社の世論調査より高率ですね。
はっきり言われているからか、「同姓強制」の人は4分の1もないですね。
(それとも、これだけはっきり言われているのに、
「同姓強制」の人は4分の1近くもいると言ったほうがいい?)
Posted by たんぽぽ at 2015年03月05日 22:31
日本経済新聞も、やってくれました。
会員でないと見れないかも、ですが、
「選択的夫婦別姓、働く既婚女性は77%賛成 本社調査 」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG06H5U_W5A300C1CR8000/

=====(以下一部引用)====
 選択的夫婦別姓制度に賛成は77%、反対は23%。年代別では40代の8割が賛成と最も高かった。現在仕事で旧姓を使っている人に限ると賛成は83%にのぼった。2013年に内閣府が発表した世論調査では、20歳以上の男女の36%が容認、「同じ姓を名乗るべきだが通称として旧姓を使うのを認める」一部容認派を合わせても6割だった。

 制度が導入された場合、約半数を占めた「今からは別姓に変えない」派以外は、「別姓にしたくない」19%、「別姓にしたい」16%、「わからない」17%と分かれた。
=====
Posted by 魚 at 2015年03月07日 01:58
続報ですが、

新姓・旧姓、職場で使うのは? 旧姓派も4分の1
既婚女性1000人調査
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO83983770V00C15A3TY5000/

役員登記は妻の姓の「西端」、青野・サイボウズ社長
旧姓・新姓 規則改正で併記可能に
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO83941570U5A300C1000000/


こちらは少し前の朝日新聞ですが。

夫婦別姓どう思いますか? 読者のご意見紹介
http://www.asahi.com/articles/ASH323QDYH32PTFC005.html

これら以外も、大法廷回付を受けて、ほとんどの新聞が社説を載せていますね。例によって、頭にカビが生えている産経だけ他と違うことを言っていますが(笑)
Posted by 魚 at 2015年03月07日 12:02
しかし、役員登記とかパスポートとかの併記は個人的にはうっとおしいだけで、何の解決になっていないですね。上の青野社長が「中途半端」と述べられていますが、まったくです。
Posted by 魚 at 2015年03月07日 12:04
魚さま、またまたコメントありがとうございます。

>「選択的夫婦別姓、働く既婚女性は77%賛成 本社調査 」
>http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG06H5U_W5A300C1CR8000/

ご紹介ありがとうございます。
でもご心配通り、登録していないので記事の最初しか読めないです。
後日図書館で確認したいと思います。

現在仕事で旧姓を使っているかたを対象に訊くとか、
選択的夫婦別姓が導入されたときどうするかを訊くというのは、
実現しそうだという予測なのかな?


「現在仕事で旧姓を使っている人に限ると賛成は83%」というのは、
6分の5ですから、すごいと言えばすごいです。
本来とっくのむかしに実現してよい制度なのですから、
これだけの高い割合になるのは当然とも言えますね。

それだけずっと放置していたということでもあるのでしょうけれど。
かかる調査結果を政治家はどう考えるのかと思います。
賛成の政治家は援用するでしょうけれど、
反対の政治家は無視だったりするのかな?


>新姓・旧姓、職場で使うのは? 旧姓派も4分の1
>既婚女性1000人調査
>http://www.nikkei.com/article/DGXMZO83983770V00C15A3TY5000/

こちらもご紹介ありがとうございます。
(もしかしてこの記事に、上の記事で読めない部分が書いてあるのかしら?
前のコメントで引用した文章と、おなじ文章が出てきます。)

日経の調査は、いままであまり見たことがないような、
ちょっと変わった質問をしていますね。
旧姓と新姓のどちらを使っているかを訊いて、
それぞれに対して不便や困った経験を訊いています。
Posted by たんぽぽ at 2015年03月07日 21:39
>役員登記は妻の姓の「西端」、青野・サイボウズ社長
>旧姓・新姓 規則改正で併記可能に
>http://www.nikkei.com/article/DGXMZO83941570U5A300C1000000/

おお、サイボウズの社長のかたにインタビューですね。
前にもインタビューがあって、わたしがブログで取り上げたのですが、
青野慶久氏が通称使用していることは、だいぶ知られてきているのかな?
http://taraxacum.seesaa.net/article/409216787.html

>夫婦別姓どう思いますか? 読者のご意見紹介
>http://www.asahi.com/articles/ASH323QDYH32PTFC005.html

朝日新聞は意見募集をしたのですね。
寄せられた意見は多くが賛成だったのはよかったと思います。
反対派が大挙して意見を寄せることは、しなかったようですね。


>大法廷回付を受けて、ほとんどの新聞が社説を載せていますね

話題になるのはいいことだと思います。
いつものように話題になるだけで終わるのはよくないのですが。

>例によって、頭にカビが生えている産経だけ

産経はむかしから選択的夫婦別姓反対の論陣を
がんばって張り続ける、独自路線を走っていましたからね。
(読売でさえ賛成しているのに。)
いまさらこの新聞には、まともな見解は期待しないです。


>役員登記とかパスポートとかの併記は個人的にはうっとおしいだけで

ないよりはましかもしれないけれど、「応急処置」的ですよね。
まったくふじゅうぶんというかたも、たくさんいるでしょう。
Posted by たんぽぽ at 2015年03月07日 21:41
●夫婦別姓の合否について

日本は家族の一体性を大切にしてきた国だ。
日本人社会が名前ではなく 苗字で呼び合うのには重要な意味がある。 
永く先祖から受け継いできた苗字の継承は、その家系に汚点を造らせない作用が有る。
恥をかく生き方をすれば、自分だけではなく先祖の努力をも台無しにする。
苗字によって組織や社会に信用を与える構造といえる。
別姓が一般化すると個人主義が万延し、先祖を敬う社会が崩壊する。
墓の前で(先祖代々を想う時間)の大切さがわからなくなるだろう。

日本人は生真面目に働き、我が苗字を信用の看板とし、誇りとしてきた。
苗字で呼び合うことは世代を経た信用の積み上げであり、日本社会が生きていく上でとても重要なのだ。

別姓を認める社会になると、名で呼び合うのが一般化している個人主義の自分さえ良ければいいという、身勝手な中国・韓国と同じく低俗な国になってしまう。

別姓を合憲とする判決について、(保守的)だと言っている人は説明になっていない。 
平等という言葉に浮かれているだけだ。 そこには家族・社会・祖国日本にたいする愛・礼儀・信義が無い。


●再婚禁止期間について

6ヶ月を3ヶ月とうい半分にしたところで、社会問題の解決にはならない。
科学技術によって確立できる時代でありながら、こんな判決しかできないとは呆れた裁判だ。
親子のDNA鑑定を義務づければ、男性の不安も、相続の争いも解消できる。 騙し結婚も無くなる。
我が子であるかどうかの真偽が、最も尊重すべき事柄なのだ。
Posted by 月 光 (A.H.) at 2015年12月16日 23:00
典型的な家族思想の「信仰」の人が来ていますね。

>日本人社会が名前ではなく 苗字で呼び合うのには重要な意味がある

>日本人は生真面目に働き、我が苗字を信用の看板とし、誇りとしてきた。
>苗字で呼び合うことは世代を経た信用の積み上げであり、

それならなおさら結婚改姓するわけにいかず、
選択的夫婦別姓を認める必要がありますね。
(その理屈なら結婚改姓を禁止する必要があるくらいです。)
Posted by たんぽぽ at 2015年12月17日 22:03
妙なコメントへのご対応お疲れ様ですm(__)m

以下は上の投稿とは関係ない独白ですが、「行き過ぎた個人主義」ってなんですかね。
昔どこぞのカルトだかで流行していたとかいう「過激な性教育」とかいう用語と同じ腐臭がしますね。

個人主義とは個人を尊重する主義のこと。

「行き過ぎた個人主義」って他人を尊重しすぎる人のことですかね。まぁそういう人は生きていく上で、損をすることが多いかもしれませんね。

ちなみに、他人を尊重しないのは、自分勝手な人。
全体主義とは自分の勝手な価値観を全体に当てはめようとする人ですから、自分勝手な人の典型例ですね。

以上、つぶやきでした(笑)
Posted by 魚 at 2015年12月18日 19:36
魚さま、こちらにコメントありがとうございます。

>妙なコメントへのご対応お疲れ様ですm(__)m

ありがとうございます。
わたしのブログはひなびているけれど、
ときどきそういうコメントが来るのですよね。


>「行き過ぎた個人主義」ってなんですかね

ある種の人たちが呪文のように唱えるけれど、
ちょっと立ち入って考えると、なんのこと?と思いますね。
個人の尊重は当然のことですし、
そこに「行き過ぎ」なんてあるはずもないことでしょう。

>そういう人は生きていく上で、損をすることが多い

処世レベルでなら、そういうことはありそうですね。


>他人を尊重しないのは、自分勝手な人

つまるところ自己中心的な主張をしたい人が、
自分の独善に反する人を「自己中心的呼ばわり」するために、
「行き過ぎた個人主義」と言い出すということなのでしょう。
Posted by たんぽぽ at 2015年12月19日 08:56
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