昨年の12月の記事ですが、かなりひどいニュースがあったのでした。
シェアハウスに入居しているシングルマザーの女性を、
ハウスのほかの入居者に男性がいるという理由で、
「事実婚」と見なしてひとり親家庭を対象とした
「児童扶養手当て」と「児童育成手当て」を打ち切る
ということが、東京都国立市であったのでした。
「シェアハウス 住人に異性いるだけで ひとり親手当て打ち切り」(1/2)
「シェアハウス 住人に異性いるだけで ひとり親手当て打ち切り」(2/2)
「交際ないのに...なぜ 「行政 あまりにしゃくし定規」
シェアハウス 児童手当打ち切り」(1/3)
「交際ないのに...なぜ 「行政 あまりにしゃくし定規」
シェアハウス 児童手当打ち切り」(2/3)
「交際ないのに...なぜ 「行政 あまりにしゃくし定規」
シェアハウス 児童手当打ち切り」(3/3)
シェアハウスというのは、最近クローズアップされている集合住宅で、
居間やトイレ、バス、キッチンなどは共用で、
このほかに各入居者ごとの居住スペースがあるというものです。
入居者同士はおたがいに他人どうしです。
このシングルマザーの女性と、ほかに入居していた男性も
事実婚関係にはないし、生計も完全にべつという「他人」です。
国立市の担当者に言わせると、「キッチンなどが共用の建物では
居住者全員を同一世帯として扱う」ことになっています。
それでキッチンが共用のシェアハウスが同一世帯扱いとなり、
親族でない異性がいると「事実婚」扱いとなるということです。
これはあきらかに納得いかないことですよ。
背景は1980年に厚生労働省(当時は厚生省)が出した
事実婚の規定に関する通知があって、これにもとづいています。
このときはもちろん、シェアハウスの存在は念頭にないです。
そして通知によると「事実婚」とされるのは、
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1. 原則として同居を要件
2. 社会通念上夫婦としての共同生活と認められる事実が
存在していれば、それ以外の要素は一切考慮しないで取り扱う
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となっています。
国立市はこの1.の条件だけを取り出して、
「事実婚」と認定して、手当ての支給を打ち切ったのでした。
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今年10月になって市が都に別件の問い合わせをした際、
キッチンなどが共用の建物では居住者全員を
同一世帯として扱う、と指摘された。
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直接の判断をしたのは、記事を見たかぎりでは東京都のようです。
国立市はそれにしたがったという感じです。
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都は「異性と住所が同じなら、同一世帯ではないことが
客観的に証明されないと受給対象から外れる。
シェアハウスだからだめだという話ではなく、
各区市で判断してもらうことだ」としている。
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「シェアハウスだからだめだという話ではな」いなどと言っていますが、
都の判断基準だとほとんどのシェアハウスで
入居者は手当ての受給資格がなくなるのではないかと思います。
通知のうち2.の条件「社会通念上夫婦としての共同生活と
認められる事実」は、すっかり無視していることになるでしょう。
シェアハウスの入居者どうしは、一般の集合住宅の入居者どうしとおなじで
通常は家族関係にはないからです。
「生活実態を無視するな」という批判はとうぜんありますよ。
「同様のケースは他にもあるのではないか」というのは、
わたしも思うところです。
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「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長は
「生活実態に目を向けないのはおかしい。
同様のケースは他にもあるのではないか」と指摘する。
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シェアハウスの業界団体も、つぎのようにコメントしています。
業界団体としては、入居者が行政から不利な扱いを受けるのは、
シェアハウスの経営にかかわりかねないと思いますし、
このあたりは問題視してほしいところだと思います。
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連盟の神田美雪理事は「実態もないのに入居者同士が
事実婚と認定されるケースは、これまで把握していない」と話す。
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シェアハウスは家賃が安く経済的負担が軽減されることに加えて、
他の入居者との交流があって、心理的孤立も減らせるので、
貧困層向けの集合住宅として注目されつつあります。
貧困層の救済的性格があるともいえるシェアハウスに
入居していると、行政から不利な扱いを受けるとあっては、
独り親世帯のような貧困層は、いよいよ暮らしにくくなるというものです。
離婚後300日規定もそうですが、行政というのは、
家族に関することでは、過剰に杓子定規になる傾向があるのかと思います。
その杓子定規なやりかたによって不利な扱いをされるのは、
いつも弱い立場の人たちということになります。