優先採用している企業がいまだに多いことをお話しました。
「面接官が「女子のほうが優秀」と感じるワケ 女子は「優秀だけど採らない」という現実」
(はてなブックマーク)
「同じ話が何度も蒸し返されるので、まとめておこうと思いました」
(はてなブックマーク)
こうした実力主義、能力主義と真っ向から反する人事を、
多くの企業で行なっている理由はなんなのかと思うところです。
わざわざ能力の劣る人材を採るのは、あきらかに非効率なことです。
かかる日本企業の非効率主義は、妊娠や出産で女性は仕事を
続けられなくなる可能性が高いからなのでした。
経営者が女性であっても、この理由で男子を優先的に採りたいかたはいるので、
かかる経営者の思考は根が深いと思います。
女性の場合、結婚して妊娠すると、産前産後休暇、育児休暇、
育児期間の短時間勤務と、長期間にわたり
戦力から外れてしまう可能性があることです
こういう風潮を指して「女性は出産・育児で辞める可能性が
高いから、仕方ない」と言う人がいます。
男性の育児休暇の取得率は、厚生労働省の統計によると、
いちばん多い2011年でも3%に満たないです(2013年のデータはこちら)。
最初の記事では「まだまだ一般的ではありません」と書いていますが、
それどころか希少価値のレベルだと言えますよ。
もちろん最近では、男性も育児休暇を取る風潮が一部では見られますが、
まだまだ一般的ではありません。
依然として、日本では家事・育児のほとんどが女性に任されているという、
大昔のままの状況から変わっていないのです。
逆に言うと、家事・育児の多くを女性が負担する現況を変えないかぎり、
就職活動で女子が不利になる状況は変わりません。
「男性の育児休暇の取得率」
男性の育児休暇の取得率はなぜにかくも異様に低いのかですが、
日本の男性は他国の男性とくらべて、家事や育児をする時間が
きわだって短いことが、さらなる根源的原因となっています。
日本人男性がどれくらい家事をしていないかは、
OECDの統計がしめしていることは、何度もお話しています。
日本と韓国の2国が、ほかのOECD加盟国とくらべてきわだって短いのですね。
「家事をしない日本の男」
#Frauen, #Männer und unbezahlte #Arbeit - Grafik zur aktuellen OECD-Statistik #Gender pic.twitter.com/evjM53FBiG
— OECD Statistik (@OECDStatistik) 2013, 7月 3
小さな子どものいる共稼ぎの世帯にかぎっても、
日本人男性はほかの国の男性とくらべて家事・育児時間が極端に短いです。
日本の男たちは、家事や育児を「女の仕事」として
妻にやらせている状況がうかがえるというものです。
「家事をしない日本の男」
6歳以下の子がいる有業男女の平均家事時間。さっきのブログでは国内の地域比較だったが,世界的にみれば「井の中の蛙」。夫の家事分担率は,欧米では4割ほどが普通。 pic.twitter.com/pLZtRiGS0M
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2014, 9月 28
日本人男性がなぜに家事や育児をやらないのかですが、
ひとつは「長時間労働」など、日本の労働習慣の多くも、
家事や育児を「女の仕事」として、男性は会社での仕事に
専念できることを前提としたことが大きいと思います。
「女性管理職が少ない理由」
日本男性と同棲すると家事を女性に丸投げするというので、
日本人男性と結婚や同棲をすることを忌避するかたが
とくに外国人女性によく見られます。
したがって日本人男性の意識の問題もあるのだろうと思います。
「本当は怖い?日本の男性」
男女雇用均等法が施行されて30年近いのですが、
いまだにこういう状況であり続けたのは、
考えようによっては驚異的と言えるかもしれないです。
「失われた20年」と言われて、働きかたのありかたを
変える必要があると言われ始めて、だいぶ時間が経っています。
それにもかかわらず、非効率であることがあきらかの
男性中心の労働文化はかなり維持したままでも、
きょうまでなんとかやってこれたとも言えるからです。
最初の記事を見ると、きょうびは安倍政権が「女性活用」と
言い出していることもあって、企業のあいだでも、
女性の登用を促進しようとか、男性中心の労働文化を改めよう
という動きになりかかってはいます。
それでも2015年になってやっとこのレベルというのは、
本当に追いつめられて、にっちもさっちもいかなくならないと、
効果が眼に見えるくらいの変革は起きないのかもしれないです。
統計的差別
http://jinjibu.jp/keyword/detl/655/
企業が利益を最大化するためには、世界でも日韓特有現象である女性の寿退社リスクが確実に予見できない以上、統計的差別を行わざるを得ない(差別した方が企業は利益を最大化できる)という状況が発生するわけです。
経営者のジェンダー思想の影響は小さいでしょう。
統計的差別について、山口一男シカゴ大教授が詳しく分析されていますね。
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/07j038.pdf
↑のまとめ
http://www.rieti.go.jp/jp/events/07082801/pdf/4-1_Yamaguchi_PPT.pdf
山口一男氏は企業行動に焦点を当てていますが、政治政策として早急に対応すべき問題です。
対策は概ね既出かと思いますが、超過労働賃金割増率大幅UP、正規雇用への規制緩和、各種出産・育児支援により育児と仕事の両立を容易にし、寿退社リスクを減らせば、女性に対する採用、教育、昇進における差別は大きく解消していくでしょう。
経営者は利潤追求については非常に敏感ですから、これらの政策が実現されれば、すぐに手のひらを返すがごとく行動を豹変させると思います。
統計的女性差別を解消するための政策についての理論的考察
http://www.akira-kawaguchi.jp/publications/pdf/paper/040000010002.pdf
問題はいつになったら政治的に女性差別社会構造の解消が実現できるかですね。この国が本当に追い詰められていると認識し、大横綱級の重い腰を上げるのはかなり先になりそうですね…。
こちらにもコメントありがとうございます。
つぎの土日までには全部お返事できるかと思ったけれど、
ぜんぜん間に合わなかったです。
ようやく先週のぶんは、全部お返事することになりますが、
このコメントもすでに日曜日の晩ですね。
>統計的差別
>http://jinjibu.jp/keyword/detl/655/
統計的差別は当然だとか、クールなことだと思っている人たちが
すくなくないので嫌になってしまいます。
>統計的差別について、山口一男シカゴ大教授が詳しく分析されていますね。
>http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/07j038.pdf
この資料は、エントリでリンクした記事から、リンクされていますね。
http://d.hatena.ne.jp/rengejibu/20110830
>↑のまとめ
>http://www.rieti.go.jp/jp/events/07082801/pdf/4-1_Yamaguchi_PPT.pdf
こんな資料もあったのですね。
こちらのほうが早く読めますね。
これらによると出産や育児にともなう離職リスクは、
意外と少ないことになりますね。
前時代の感覚を引きずっているのと、離職リスクが定量的に
評価できないのとで、過大評価されているのが実際のようですね。
企業の人たちは、能力の低い男子を取ることの
リスクやコストを、どう考えているのかと思います。
利にさといはずの彼らは、ぜんぜん問題にしないようで、
過小評価しすぎているように思います。
>統計的女性差別を解消するための政策についての理論的考察
>http://www.akira-kawaguchi.jp/publications/pdf/paper/040000010002.pdf
これはなかなか興味深いですね。
戦略ゲーム理論を使って分析していますね。
ここでもワークライフバランスの普及が効果的という結論ですね。
>政治政策として早急に対応すべき問題です。
政治課題として対処する必要があると、わたしも思います。
企業行動の問題というだけでは、対処はふじゅうぶんだろうと思います。
>この国が本当に追い詰められていると認識し、
>大横綱級の重い腰を上げるのはかなり先になりそうですね…。
わたしもそれを思うのですよね。
本当に手遅れを通り越して、断末魔のお叫びをあげるくらいにならないと、
手をつけないかもしれないとも思っています。
割と短期間のうちに数多く投稿したために、負担を与えてしまって申し訳ないです。
女性の雇用や昇進に対する「統計的差別」への私の対策案は、育児と仕事の両立が困難であることによる寿退社リスクを託児施設や育休制度の拡充によって逓減するとともに、超過労働賃金割増率大幅UP、正規雇用への規制緩和によって日本(と韓国)特有の年功序列賃金、終身雇用という、母となる女性にとって不利な人事システムを各企業に捨てるように導くことですが、これがどの程度の効果を発揮するかを予想する際、多国籍企業の現地における人事システムがどのくらい現地化されているかがある程度は参考になると思います。
第4回日系グローバル企業の人材マネジメント調査
http://www.jil.go.jp/institute/research/documents/024/research024_josho.pdf
↑の19ページに現地日系企業のホワイトカラー人事制度の準拠集団なる項目がありますが、つまりは採用、配置、賃金、評価といったものですね。
欧米では日本本社の人事システム(いわゆる、新卒一括採用、年功序列賃金、終身雇用といった日本と韓国に特有の人事システムを採用している企業が多い)を全く取り入れていない企業の比率が高く、北米ではローカル企業(つまり現地の企業)人事制度を全面的に取り入れているところが多いのに、アジアでは日本本社の人事システムをやや取り入れている比率が多いとありますね。
このため、アジアの現地日系企業では現地国籍の者と日本国籍の者とで昇進機会が大きく異なるという国籍差別が発生していて、国籍差別が(少)なく職務給・成果主義といった人事システム(日韓以外の企業は縁故主義でなければほぼこちらのタイプです)で親和性が高い欧米企業への人気が高く、優秀な人材がそちらに流れるという事態が発生しています。
このあたりは日本流オリエンタリズムなる差別意識の顕れと言えますが、アジアでは欧米と違って環境が変わったとしても元来のシステムをある程度温存しようとする傾向が見られるわけですが、日本国内における女性差別に関する社会構造が変わったとしても、新しい環境に積極的に溶け込もうとする欧米の現地日系企業のようにではなく、アジアの現地日系企業のようにあるていど因習的に振る舞う企業が多くなるでしょう。
この段階で、山口一男シカゴ大教授が書かれているような企業啓蒙を行えば女性差別解消効果が高くなると思いますし、期間限定のクォータ制導入が対策として考えられます。
>割と短期間のうちに数多く投稿したために、負担を与えてしまって申し訳ないです
ああ、いえいえ、ぜんぜんかまわないですよ。
ご覧の通り、わたしのブログはコメントが少ないので、
プールさせても、だいじょうぶです。
わたしのお返事が遅くなりがちなので、
それは容赦していただけたらと思います。
>第4回日系グローバル企業の人材マネジメント調査
>http://www.jil.go.jp/institute/research/documents/024/research024_josho.pdf
またまたご紹介ありがとうございます。
>欧米では日本本社の人事システム(いわゆる、新卒一括採用、
>年功序列賃金、終身雇用といった日本と韓国に特有の人事システムを
>採用している企業が多い)を全く取り入れていない企業の比率が高く、
>北米ではローカル企業(つまり現地の企業)人事制度を
>全面的に取り入れているところが多いのに、アジアでは日本本社の
>人事システムをやや取り入れている比率が多いとありますね。
欧米の民主主義国では、日本国内のやりかたは通用しないので、
現地のやりかたでいく、アジア諸国では日本との国力の差で、
日本国内のやりかたをまかり通すことができる、ということでしょうね。
>このあたりは日本流オリエンタリズムなる差別意識の顕れと言えますが、
たぶんそうだろうと思います。
「日本人が意識する力関係の差」がもろに意識されていると思います。
ちょっと嫌な気分になりますね。
「差別」という非理性的、非論理的な
精神・思考構造にとりつかれると、
自分があほなことをしていることに
気づかなくなります。
それゆえ差別が蔓延する社会は、
競争力を失なって、中長期的には
凋落していくことがあります。