2015年03月29日

toujyouka016.jpg 渋谷で反同性愛のビラ

3月22日エントリでご紹介した、「頑張れ日本!」という
右翼団体が行なった、渋谷の反同性愛デモについての続き。

このデモに先立って、反同性愛のビラが渋谷や原宿で配られていました。
ビラをまいたのは、統一教会系の団体と思われます。

「「LGBTは社会を乱す」渋谷で反同性愛デモ発生、
自民党・谷垣幹事長も同性婚に懸念を表明し、二丁目のゲイバーは摘発強化へ」

(はてなブックマーク)

「統一教会が渋谷区の「同性パートナー条例」に反対する署名を開始、
同条例案に賛同する署名は1万筆を突破」


 
以下が配られたビラです。
10年前のジェンダーフリーバッシングや、頑迷きわまりない
選択的夫婦別姓の反対派を思わせる、被害妄想的内容だと思います。

伝統的な家庭制度に混乱をもたらす渋谷区条例案 同性カップルに、「結婚相当」証明書 (渋谷で配られた反同性愛のビラ(1/2))

「普通の人々」を脅かす同性婚社会 "先進国" アメリカの苦悩 (渋谷で配られた反同性愛のビラ(2/2))

「伝統的な家族制度に混乱をもたらす」と書いているので、
例の「家族思想」が信仰になっている人たち、ということがわかります。
本当に混乱をもたらすのは、「異教徒」の存在を受け入れられない
彼らのあたまのなかにある家族信仰なのですが、
当人たちはそれがわからないという、いつものパターンです。


ビラには
わが子に「男らしく強くなりなさい」「女の子らしい
振る舞いをしなさい」と躾けることが、条例違反となってしまいます。
などと書いてあります。

渋谷区の条例は、同性カップルに証明書を発行するだけです。
子どものしつけについては、なにも言ってないので、
上述のようなしつけは、なんら禁止されるものではないです。
もちろん条例と無関係に、ジェンダーバイアスのかかった
しつけをすることが好ましくないとは言えます。


さらにビラではこんなことを言っています。
このようなビラも作成できなくなってしまうのでしょうか!
まさに、言論の自由を侵害する違法な条例と言えましょう。

「多様性を尊重する社会を推進する」と言いながら、
多様な意見を認めないこの条例の独善性を示すものと言えるでしょう。

条例は証明書の発行だけですから、反同性愛の言論に対して
なんら規制を加えるものではないです。
条例施行後も差別的主張をするビラは、いくらでも作れるでしょう。
こうしたこととは無関係に、差別的主張に対して
「言論の自由」を認めるべきでないとは、いつでも言えるでしょう。

多様性を認めるから、多様性に反する反同性愛に反対するのですよ。
「多様なカチカンを認めないカチカン」を認めたら、
多様性の尊重に反することになるので、
「多様なカチカンを認めないカチカン」に反対するわけです。

差別主義者や反反差別の人たちは、自己正当化のために
よく「言論の自由」と「多様性の尊重」を振り回すことがあります。
これらふたつは差別主義者や反反差別の人たちの、
「最後のよりどころ」なのかもしれないです。


学校で教師が「異性だけではなく同性を好きになっても
良いことですよ」と教えろというのでしょうか。
そのような学校教育に不安を抱く保護者が多く存在することは間違いありません。
「不安を抱く保護者」がいるというのなら、
そういう不安をなくしていくのが教育の役目ですよ。

「不安を抱く保護者」はどのくらいいるのかと思います。
2月17日の朝日新聞に出ている、渋谷の同性結婚証明書に関する世論調査では、
20-40代で「評価する」と答えたかたは6-7割台です。
「同性愛に不安を感じない」であれば、もっと割合は高いことが考えられます。

「同性結婚の世論調査」

学校は小中学校だとすると、保護者の世代は30-40代でしょうか?
ビラは「多く存在することは間違いありません」などと断定していますが、
「学校教育に不安を抱く保護者」のほうがすくなそうです。


法律上、同性婚は認められていない以上、同性カップルが
「結婚に相当する関係」であると第三者に認めさせることは
憲法違反の疑いがあると言わざるを得ないです。

憲法24条は同性結婚についてはなにも語っておらず、
同性結婚を禁止していないと考えられます。
条例は民法で定められた婚姻ではないですから、
民法にも違反しないと考えられます。

「憲法24条と同性結婚」

若者が多く集まる渋谷区の路上や職場で、男性同士、女性同士が
公然と抱き合ったり、キスをしたりする姿が日常の光景となり、
やがてエイズが蔓延してしまうことを、誰も歓迎しておりません。

これは同性愛者に対する偏見としか言いようがないです。
証明書どころか民法で婚姻が認められている異性愛者どうしが、
公然と抱き合ったりキスをしたりすることはないのに、
なぜに同性愛者は証明書だけで公然と抱き合ったりキスしたりすると
思われなければならないのかと思います。
性感染症についても同様です。


ビラの2枚目では、「"先進国"アメリカの苦悩」と見出しを付けて、
同性結婚を認めても「だれかに迷惑をかけなければ、
だれも傷つけない」わけではないなどということを書いています。

どういうことかというと、同性結婚の挙式を拒む教会は、
州憲法違反だという例を持ってきて、宗教的信仰にもとづいて
同性愛を否定している人が「迷惑」で「傷つく」と言いたいようです。
「差別が禁止されると、差別をしたい人が迷惑で傷つく」ですよ。

宗教的信仰その他の理由で同性愛を否定する人たちこそ、
同性愛者に「迷惑」で「傷つけている」ことを理解する必要があります。
それからアメリカ合衆国で違憲判決が出た結婚防衛法は、
教会が同性愛者の挙式を拒否することは、認められています。
(ビラ中のワシントン州の扱いは、違うのかもしれないですが。)

アメリカ合衆国は同性愛の「先進国」なのかと思います。
結婚防衛法の違憲判決が2013年6月でつい先日です。
同性結婚の法律婚が認められる州は、2015年3月現在で18です。
それほど多くの州で認められているのではないですし、
ヨーロッパなどでの導入とくらべても、
さほどの「同性愛先進国」ではないと思います。

posted by たんぽぽ at 10:46 | Comment(4) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
 なんというか。
このビラの内容については、ネットのあちこちで取り上げられていますが、もうどっから突っ込んでよいのか解らないほど突っ込みどころしかなくて
「あんた、ばかぁ」
と、いってやりたいですね。
(多分、その時、渋谷にいたら思わず口に出たと思う)
さっすが、カルトとウヨが組むと、バカの桁が違うねwww


 そのアメリカの例にしてもね、日本じゃ宗教的に同性愛を禁ずるタブーはないし、そもそもクリスチャンでもなんでもない人たちが「ロマンチックだから〜」というだけの理由で教会で結婚式あげてるし、キリスト教国とはかなり土壌が違うぞ。
 同性カップルの式を挙げているお寺や神社だってあるし。
 そもそも、アメリカやヨーロッパで同性愛者の権利獲得が叫ばれたのは、日本では考えられないほどの、それこそ命も奪われかねない差別があったことの裏返しなんですよ。

>やがてエイズが蔓延
てのも、バカ丸出しだね。
イマドキ、エイズがホモの病気だと思ってるんでしょうかね?無知にもほどがある。

 余計なお世話だけど、これってむしろ逆効果じゃないの?って思えるけど、こんなビラ、賛同する人ってどれだけバカなの?
Posted by イカフライ at 2015年03月29日 23:48
イカフライさま、
このエントリにもコメント、ありがとうございます。

>このビラの内容については、ネットのあちこちで取り上げられていますが、

あらあら、話題のビラだったのですね。
あきれるほどエキセントリックですからね。

眼の前でビラを熟読したのち「同意できない」と言って破いた、
なんてかたも記事には出てくるので、ぜんぜん支持も共感もしないかたは、
結構いるとは思いますが。

>アメリカの例にしてもね、日本じゃ宗教的に同性愛を禁ずるタブーはないし

日本には宗教的タブーがないですから、例として適切ではないですね。
日本で同性愛に反対するイデオロギーとはなんなのかと思います。
(例の家族思想が宗教の代わりという人は、いくらでもいますが。)


>これってむしろ逆効果じゃないの?って思えるけど、
>こんなビラ、賛同する人ってどれだけバカなの?

こういうおかしな認識の人たちは、たぶん少数なんでしょうけれど、
一定以上の力を持っている人がいるのもたしかなのですよね。
権力を持った一握りの中にいれば、
長いあいだ同性愛に反対を続けることはできるのですよね。
選択的夫婦別姓なんて、まさにこの事情で
いままでずっと実現しないで来ていますし。
Posted by たんぽぽ at 2015年03月30日 22:42
抗議した団体って右翼なんですか。
面白いですね。こういう性的なことは思想と関係ないと思いますがね。
だって右翼でも自衛隊でも同性愛の人はいるでしょうし。
意外と「男!」というタイプに同性愛の人が多いという話も噂だけではなさそうだし。

まあ、それはそれとして土屋ゆきさんというレズビアン活動家の人が渋谷の騒動について条例を推進する区議がLGBTを利用したいだけだと言及しています。
土屋さんはレインボーアクションという会も主催されているようですが、男女の婚姻でさえ差別的であるのに、なぜこういった条例に気軽に乗ってしまうのか?と苦言しています。

この条例に反対デモや反対ビラ配りするのも変わり者だと思いますが、当事者も条例に気軽に乗るなとか推進区議は自分達を利用したいだけだとか言い出すのも変わり者。
それだと推進する区議も応援者も、やってられないわとなってきませんかね。
もしかすると色眼鏡で見られている(と思っている)立場で活動を続けていきたいんじゃないですか?という気にもなってきます。
その条例が渋谷区で可決されたことは前進と言えなくもないが私はちょっと考えが違いますけれど、くらいに抑えておかないと相手にされなくなってしまう可能性があると思いますけどね。


Posted by ヒラリー at 2015年03月31日 08:17
>こういう性的なことは思想と関係ないと思いますがね

保守や右翼の人たちは、性に関係する規範は、
やたら目くじらを立てると思いますよ。

わたしが何度も言及している「家族思想」信仰や、
「正しい家族」幻想も、保守や右翼にありがちです。
同性結婚に反対するのも、八木秀次とかミギの人たちが多いです。
http://taraxacum.seesaa.net/article/371226886.html

統一教会も右翼になるでしょうが、
「純潔思想」という性規範に関するイデオロギーを標榜しています。


>レズビアン活動家の人が渋谷の騒動について条例を推進する区議が
>LGBTを利用したいだけだと言及しています

ご指摘の件はこれですね。
寡聞にして初めて聞きました。
http://rainbowaction.blog.fc2.com/blog-entry-233.html

こういう極端なことを言う人は、残念ながら一定数いると思います。
「自分の理想とすべて一致しなければ全部反対」という姿勢は、
現状の改善には役立たないことが多いですね。


>反対デモや反対ビラ配りするのも変わり者だと思いますが、
>当事者も条例に気軽に乗るなとか推進区議は
>自分達を利用したいだけだとか言い出すのも変わり者

わたしは「どっちもどっち」とまでは思わないですよ。
問題含みの程度を言えば、「反対派>極端な当事者」ですね。
Posted by たんぽぽ at 2015年04月04日 10:20
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