2015年04月29日

toujyouka016.jpg 日本に世襲議員が多い理由

日本には世襲議員や世襲閣僚が多いことは、
ゆゆしき事態として、ときどき話題になることがあります。

「連載・世襲政治に未来はあるのか(3)
首相の半分、国会議員も4分の1 「永田町」の世襲率は異常に高い」

「我が第2次安倍内閣世襲議員率50%は何を意味するのか考察する」

 
3等親以内の親族、配偶者と2等親以内の姻族に
国会議員がいる議員が世襲議員だとすると、
日本では国会議員全体の約4分の1が世襲議員です。
自民党は全体の約3分の1、民主党は約15%程度が世襲議員です。
アメリカ合衆国の世襲議員は議員全体の約5%、
イギリスは貴族院には世襲がいますが、庶民院は世襲はゼロです。

日本では世界的に見ても世襲政治家が多い国ということです。
その理由については、何度かお話したことがありますが、
政治学者の上久保誠人氏によるくわしい分析があるので、
あらためてご紹介したいと思います。

「世襲・閨閥・年功序列」
「「世襲」総理を育んだ自民党長期政権」


>当選回数主義

上久保誠人氏の記事は、自民党の場合について分析しています。
世襲議員が多いいちばん大きな理由は、「当選回数主義」という、
一種の年功序列を採用していることだろうと思います。

「当選回数主義」

自民党では国会議員の当選回数に応じて、閣僚、副大臣、
国会の委員会、党の役員といったさまざまなポストを
割り振る人事システムを採用してきました。
当選5-6回で初入閣するあたりまでは、「横並び」で出世します。
これ以降は能力や実績がある程度顧慮されるようになっていきます。

なぜこんな年功序列を導入したのかというと、
自民党には300人以上議員がいるので、
全員が納得できるようにポストを割り振るために、
わかりやすい基準を採用する必要があったからです。


当選回数主義のもとでは、はじめて議員になる前のキャリアは
ほとんど顧みられることはないです。
以前になにをやっていても、どれだけすぐれた実績を残していても
(地方議員や地方自治体の首長を経験していても)、
自民党議員になったら「当選1回議員」扱いということです。

党内で権力を持ち、上のポストに就くためには、
当選回数が多いことがものを言うとなると、30歳前後の若いうちに初当選して、
その後もずっと政治家を続ける議員が有利になってきます。
野中広務や梶山静六はその例ですが、40代や50代で政界入りしても、
首相にはなかなかなれないわけです。

政治の世界で出世するためには、30歳前後で当選できるだけの
三バン(地盤、看板、カバン)を持ち合わせている
必要が出てくることになります。
そうなると親から支持基盤を引き継げる世襲の候補者が有利であり、
これが必然的に世襲議員を増やす原因になることは、
容易に理解できることだと思います。


>政治家城下町

自民党の議員は、「政治家城下町」とでも呼べそうな、
独特の支持基盤、後援会組織の集合体を持っています。
これも世襲議員が増える原因のひとつになっていると言えます。

「政治家城下町」

これはいわば地元に公共事業を引っ張ってくるための
利権集団の地域コミュニティのようなものです。
ここには選挙区選出の代議士が中心にいて、
その支持基盤となっている企業や個人後援会などが集まっています。


自民党議員が当選回数を増やして、党内で影響力を持つようになると、
地元に公共事業を持ってくるための、予算や補助金が取れるようになります。
地元の産業界はそうしたお金を求めて、その代議士のところに集まり、
繰り返し当選して継続的にお金が来るようにするため、
献金や選挙活動によって、その議員を支えるようになるわけです。

こうした地域の利権集団コミュニティは、
一度作られると解散することが、ほとんどできなくなります。
それゆえ地元選出の議員が引退すると、
だれかに引き継がせる必要が出てくることになります。
「政治家城下町」のメンバー全員が納得しやすい後継者はだれかというと、
引退した議員の息子や娘が多いということです。

自民党は、党から議員への資金面での補助は弱く、
それゆえ自前で活動資金を確保できないと議員になれないのでした。
それゆえ資金確保のために、このような「政治家城下町」と
呼べそうな支持基盤が発達することになったのでした。

posted by たんぽぽ at 23:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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