前のエントリの続き。
日本に世襲議員や世襲閣僚が多い理由です。
「世襲・閨閥・年功序列」
「「世襲」総理を育んだ自民党長期政権」
>閨閥の衰退
従来の日本では、旧帝大を出て国家公務員試験に受かって、
エリート官僚となってから、政界に入るパターンが一般的でした。
こうしたエリート官僚は、「名門」政治家の家系の令嬢と結婚して
「閨閥」に入るをすることで、権力を得たのでした。
太平洋戦争後もこうした状況は続いていて、
吉田茂から海部俊樹までの戦後首相になった人は、
庶民の家庭の子が勉強して一流大学に入り、
エリート官僚やジャーナリストを経験したのち、
閨閥政治家と姻族になることで、総理大臣に上り詰めています。
政界に入るためのルートが「閨閥」なんて、
中途半端に血筋が必要になってくるには、現在の民主主義的な
観点からしたら、とても「開かれている」とは言えないです。
それでも出自に関係なく、実力で政界でのし上がれる余地はあったわけです。
それでも明治時代に「東大を出てお役人になって、
いいとこのお嬢さんと結婚すれば、だれでも偉くなれる」という
システムを作って、かつそれを庶民のだれもが知っているよう、
周知させたことは、まがりなりにも出自に関係なく
出世できるシステムを保証した点で、当時としては画期的でした。
上久保誠人氏の分析では、日本で世襲議員が多い原因として
この「閨閥」が衰退してきたことを挙げています。
「優秀な娘婿」が権力基盤を引き継いでくれなくなったので、
自分の息子や娘に引き継がせるようになった、ということです。
なぜ「閨閥」が衰退してきたかですが、
ひとつは女性の地位や権利の向上が大きいと思います。
ようは「政略結婚のために娘を差し出す」ということを、
当の女性が受け入れなくなったということです。
また自由恋愛が進んで、出世のためにいいとこの令嬢と
お見合い結婚をすることに、魅力が薄れてきたこともありそうです。
キャリア官僚であれば、閨閥政治家の娘と結婚しなくても、
自由に好きな人と結婚して、安定した生活ができるというものです。
さらにはライフスタイルが多様化したことがありそうです。
東大を出てエリート官僚になることだけが、
唯一の「偉くなる」道ではなくなったということです。
これら「閨閥」衰退の原因は、いずれも民主主義が浸透して、
権利意識やライフスタイルの自由が高まったことによるものです。
閨閥なんて本来民主主義社会とは相容れないですし、
民主主義の浸透によって衰えるのは、ある意味当然と言えます。
立身出世のための手段が「東大を出てお役人になって、
いいとこのお嬢さんと結婚」なんて、女性ならなおさらですが、
男性でも前時代的な古ぼけたものを感じて、
あまり魅力を感じないのではないかと想像します。
民主主義の浸透によって「閨閥」は衰退したけれど、
政治の世界では「世襲」に向かってしまい、
さらに後退をしめしたことは、皮肉といえば皮肉かもしれないです。
それだけ政界が優秀な人たちにとって、
魅力がないということだろうと思います。
>他党の場合
これまでのお話は自民党の場合なので、鳩山由紀夫氏のような
民主党の議員に関しては、そのままは当てはまらないでしょう。
民主党など他党で世襲議員が残りやすいというか、
世襲でない議員が残りにくいのはなんなのかですが、
わたしが考えるに活動資金と生活費の問題が大きいと思います。
上述のように、自民党でさえ党からの資金面のサポートが弱く、
各議員は「政治家城下町」を発達させることになったのでした。
民主党など他党ならなおさら資金面の補助が弱くなりやすいことは、
推して知るべしだろうと思います。
活動資金には、歳費や政党助成金があります。
政党助成金を削減すると、危機的になるのは
多額の献金が集まらないいわゆる「市民派議員」です。
大企業などから多額の献金を受け入れられる議員は、
歳費や政党助成金が減っても、資金的にはさほど困らないのでした。
「世界一高い政党助成金」
国会議員の給料は、1期落選したくらいなら、ふつうに暮らしていれば
生活費に困らないくらいの高給でいいと思います。
そうでないと、落選すると生活できなくなって、
どこかに消えていくことになるからです。
(現在の国会議員の年収は、推定2900万円ほど)
活動資金の補助が弱く、生活費にも困るとなると、
お金に困らないかぎられた人たちだけが、政治の世界に残れることになります。
そういう人のひとつのタイプは、小泉純一郎氏のように、
熱心な支持者が大企業経営者にいて、落選中は名目的な社員にして
給料を出してくれた、というケースだと思います。
そうでなければ家に資産があって、活動資金も生活費も困らない人ですよ。
それは代々名門の家系だった世襲議員であることが多く、
世襲議員は残りやすいことになります。