2015年05月09日

toujyouka016.jpg 自民党・改憲の解説漫画(2)

5月6日エントリでご紹介の、自民党の憲法改正についての
とんでもない解説漫画冊子を、もう少し見ていくことにします。

「ほのぼの一家の 憲法改正ってなあに?」

「安倍首相の指示で作られた「改憲推進マンガ」がデタラメだらけであることが判明」
(はてなブックマーク)
「自民が憲法改正漫画 若者ターゲット」
(はてなブックマーク)
「憲法改正を解説するという自民党の漫画が解説漫画としてありえない」
(はてなブックマーク)

 
ここでは4節の「みんなで考えよう」にある、つぎのコマを見たいと思います。

ほのぼの一家の憲法改正ってなあに? p.61

現行憲法では男女平等が大きく謳われて
事実この70年で女性の地位は向上した
でも個人の自由が強調されすぎて
なんだか家族の絆とか地域の連帯が希薄になった70年かもしれませんねぇ

こんなふうに並べたら、女性の権利が大きく認められたせいで、
「家族の絆」とか「地域の連帯」なるものが希薄になったとでも
言いたいのかと思いたくなってきます。



自民党憲法改正推進本部のことですから、
「女性の権利を認め過ぎたのが悪い、家族の絆や地域の連帯のために、
女性の権利を制限するべきだ」と言いたいのだろうと想像します。

自民党の憲法草案でも、24条には「家族の助け合い」という
文言を入れることで、「家族の絆」のために女性の権利が制限できることを
合憲にしようとする狙いがあるくらいです。

「参院選の争点は家族?」

それでもはっきり書かないあたり、男女平等に真っ向から反対することは、
さすがの自民党もできなかったのかもしれないです。
それで遠回しにほのめかすだけにとどめたのかもしれないです。


この漫画は安倍晋三首相が作らせるのに熱心で、
安倍首相の意向を強く反映した内容となっています。
このコマについては、どのくらい安倍首相の意向が入ったのかと思います。
安倍首相も例によって、因習・反動的な家族思想の持ち主であり、
純潔思想も信奉していますから、コマの内容については
ほぼ同意見であり異論はないであろうことは、容易に想像できます。

このように女性の権利を制限する必要があると
言いたいような漫画の冊子を発行するのですから、
ふだん「女性活用」とか「女性が輝く」と言ったところで、
しょせんは経済のためであり、本心ではないだろうと
不信感を持たれてもごもっともというものです。
むしろこういう漫画冊子で本性を出しているのでしょうから。

「安倍政権・女性活用の不信」
「安倍政権・女性活用の不信(2)」


つぎのエントリでは、さらにこんな指摘もあります。
さすがの自民党憲法改正推進本部も、このくだりに関しては、
自分たちの思想に沿った主張を、女性に言わせたら不自然なので、
登場させるわけにはいかないと、考えたのかもしれないです。

「憲法改正を解説するという自民党の漫画が解説漫画としてありえない」
そして後回しにされた女性権の説明は、男性だけで語りあう*12。
同じ場所に母がいるのに、このコマ内には姿すら見えない。

漫画に出てくる唯一の女性は、このエントリでも指摘があるように、
無知で感情的という、それ自体女性に対する蔑視感を
反映させたキャラクタ設定がなされています。
そんな女性でさえも、まわりの男たちが反論できない正論を言わせる以外に、
自然なセリフが書けなかったのでしょうか?


男性だけで女性の権利について語るというのは、
2012年にサウジアラビアで行なわれた、出席者が男性だけの
「女性会議」
ではあるまいしと、わたしは思いましたよ。

彼らの標榜する「家族の絆」とか「地域の連帯」なるものが、
男性本位の正当化であり、男性の利益のために女性を犠牲にする
必要があるものであるという本質を現したかのようです。
ある意味「正直に言ってくれた」と思います。

posted by たんぽぽ at 20:23 | Comment(14) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさん。
その漫画はネットでも目にしたことがないし新聞記事でも見たことないので心配しなくても影響力など持たないと思います。

女性についてはセーブ・ザ・チルドレンというNGOが「お母さんに優しい国」という気持ちの悪いランキングをつくり日本は32位、米国は33位で両国は先進国で最低。
1位はノルウェーだそうですね。
日本は乳児死亡率、妊婦死亡率の少なさ等はトップレベルでも、また例のごとく女性議員の少なさで順位を落としたそうで。
女性議員が多ければお母さんや子供に優しい政策ができるからだそうです。

この発想はオバマが大統領になれば黒人差別が減ると思って投票した黒人の期待を裏切ったのと同じでしょうね。
1位のノルウェーも男女平等で女性にも徴兵制だとか、それでお母さんに優しい国とは笑わせてくれるではありませんか。

自民党が女性の活躍と主張するのは経済のためではありませんよ。
たんぽぽさんがおしゃっていたように女性の社会参加で経済規模が大きくなるという期待は持っていないと思います。
じゃあ何かと言えば国際社会とのお付き合いですね。女性議員だの女性役員だの国際社会がうるさいから付き合ってやろうか、が本音でしょう。
でも女性国会議員や企業役員が増えても経済が伸びるとか、9条など憲法を守ろうとする議員の割合が増えるとも思えません。
そこで総理の思惑として議員でも企業役員でも女性を増やそう。そうしたところで変わらないのだから、変わらないではないかと思い知らせてやろうということじゃないですか。

そのとき、どうなりますかね。
女性議員、女性役員という名の名誉男性が増えても仕方ないとするのでしょうか。
オバマが名誉白人と言われているかは不明ですが。
Posted by ヒラリー at 2015年05月10日 00:04
女性地位向上と家族の絆が一つの文脈で語られることはすなわち地位向上否定ですよね。
マンガのシチュエーションのようなオッサン達にこう思う人は現実に多いかもしれません。しかしよりにもよって政治家がこのような思考回路でおり、そして憶面もなく語ってしまう現実、だから安倍は戦後一番知能の低い首相と言われてしまうんだな、と。
この部分に限らず,すべてが稚拙ですよね。
ただ何というか、制作会社に丸投げして急いで作って、党内で十分な校正をしてないのではないかと思ってしまいます。党議員の中では「あちゃ〜、こんなの出ちゃった」と思ってる人もいるんじゃないかと思います。
Posted by うがんざき at 2015年05月10日 09:25
この漫画が影響力を持つか持たないかの問題なんでしょうか?
私は自民党がこの漫画を発信したことが問題だと思っていたんですが。

漫画を作るのだってタダじゃないんです。
自民党が活動費からわざわざ予算を割いて作ったんです。
ということは、コレは自民党が金を払ってでも発信したい情報ってことでしょう?
その内容が問題だらけだから問題になってるわけです。

自分は女性議員の少なさは問題だと思っています。
人間の半分は女性です。
その女性が政治に参加出来ていないというのは、健全な政治じゃないと思いますよ。
Posted by 干しぶどう at 2015年05月10日 09:38
ヒラリーさま

>その漫画はネットでも目にしたことがないし新聞記事でも
>見たことないので心配しなくても影響力など持たないと思います

ほかのかたのコメントでも指摘されていますが、
影響力があるかどうかではなく、自民党がそういう漫画冊子を
発行したことが問題ということです。

>自民党が女性の活躍と主張するのは経済のためではありませんよ

経済のためですよ。
関連するけれど、労働力確保とか、少子化対策なんてのもあります。

それで純潔思想とか、因習・反動的な家族思想を信奉しているのに、
「女性活用」とか「女性が輝く」とか、心にもないことを
カッコつけて言っているのだと思います。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月10日 22:08
うがんざきさま、
このエントリにコメントありがとうございます。

>女性地位向上と家族の絆が一つの文脈で語られることはすなわち地位向上否定ですよね

そう言いたいと思わざるをえないですよね。
はっきり言わないところは、女性の地位向上の否定は
彼らにとってもむずかしいということなのでしょうけれど。

>マンガのシチュエーションのようなオッサン達にこう思う人は現実に多いかもしれません

中高年男性の偏見じみた女性観そのものですよね。
かなり無防備に露呈していると思います。
自民党の女性観も「その程度」ということを、よくしめしてくれたとは思います。
こちらに書いたけれど。
http://bit.ly/1dVhsRJ


>制作会社に丸投げして急いで作って、党内で十分な校正をしてないのではないか
>と思ってしまいます

記事を見たかぎり、安倍晋三は力を入れていて、
自分の意向をかなり反映させたとあります。
安倍は監修に熱心だったのではないかと、わたしは思っています。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月10日 22:10
干しぶどうさま、
このエントリにコメントありがとうございます。

>この漫画が影響力を持つか持たないかの問題なんでしょうか?

論点のすり替えだと思いますよ。

>私は自民党がこの漫画を発信したことが問題だと思っていたんですが。

問題はまさにそれですよね。
そして安倍晋三首相が冊子政策に熱心なことが、問題なのだと思います。

ちょっと事情にくわしいかたであれば、自民党はむかしから
同じような内容の憲法改正を主張していたことを、知っていると思います。
批判するところだらけの憲法草案を、いまだにほとんどそのままの内容で
しつこく持ち出してくることも、問題にすることだと思います。


>自分は女性議員の少なさは問題だと思っています

人口比を考えれば、女性議員は議席の半分でいいくらいです。

女性議員が少ないことを批判されると、
(じつはここではだれも批判していないんだけど)、
「女性議員が増えてもいいことない」ことを力説するのは、
「反フェミ」「反反差別」の人にありがちだと思います。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月10日 22:12
たんぽぽさん。
その漫画の影響力の問題でなく、その漫画を自民党がつくったことが問題なんですか。
そのわりに野党からの確認や追及が出ているわでもないようですけど。

家族の価値や絆の決めつけや女性の地位向上が否定的になっているとのことですね。
そういうことについて政権がどうしたとかどんな家庭で育ったかは無関係だと思います。
父親絶対とか男のほうが偉いというご両親のもとで育った娘さんは、むしろ反発心でフェミニストになったりとか。
逆に息子の場合、男中心主義とか暴君になるとも思えず、親の思考やその環境が子供に直結するとお考えになるほうが家族の思想を過大評価されているんじゃないかと。
政治体制も北朝鮮のような国ならともかく日本では政治で国民の家族思想、個人思想まで操れませんよ。
Posted by ヒラリー at 2015年05月11日 08:31
今日、Japan Timesに載りましたね。

http://www.japantimes.co.jp/news/2015/05/11/national/politics-diplomacy/ldp-produces-manga-make-case-constitutional-revision/#.VVBpa3mJj4h

改憲派からも批判記事あり
http://www.news-postseven.com/archives/20150506_321091.html

5万部というと、まあちょっと知名度がある情報月刊誌の発行部数位でしょうかね?
ウェブでも配信されていることを考えると、決して影響がない、とは言えないと思うんですけどね。
Posted by うがんざき at 2015年05月11日 19:06
ヒラリーさま

>その漫画を自民党がつくったことが問題なんですか

野党ももっと追求したらいいのにと思います。

あとはなにを言いたいのかわからないです。
自民党の家族思想のことは、わたしはこのブログで何度もお話しています。
彼らがかかる家族思想にいかに拘泥しているかとか、
彼らの思想がどういう影響を与えてきたのかも繰り返しお話しています。
それをもう一度確認されたいですね。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月17日 09:30
うがんざきさま、コメントありがとうございます。

>http://www.japantimes.co.jp/news/2015/05/11/national/politics-diplomacy/ldp-produces-manga-make-case-constitutional-revision/#.VVBpa3mJj4h
>http://www.news-postseven.com/archives/20150506_321091.html

ご紹介ありがとうございます。
でも英字新聞と週刊誌なのですね。
大手メディアはたぶん一切取り上げなさそうですね。

>決して影響がない、とは言えないと思うんですけどね。

ヒラリー氏がなぜに、くだんの漫画冊子の影響を
かくも矮小化したがるのかと、わたしは思います。
問題視されると具合の悪いことでもあるのかと思います。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月17日 09:31
たんぽぽさん。
ところで体調は回復されたんですか?
まだ数日は苦しいだろうとのことでしたが、どうやら予測より回復が早まっている感じで良かったですね。

漫画の件は5万部だそうで、確かに雑誌でも書籍でも今は5万部売れていると結構な数字ではあります。
ただ、そうでなく党がつくって無料配布のような形ですよね。
おそらくその5万部のうちの多くは自民党議員が今回、このような漫画を党でつくりました、と会合などで配ったり後援会の人におくったりしてるんじゃないですか?
売上部数としては多くても、党の無料配布と考えると、ひとつの小さな市の人口にも満たない数で、だから野党も特に騒がないのではと。
もうひとつは紹介されている1コマのセリフは、個人の尊重と地域の連帯などで、高齢単身の人が増えている状況で地域以前にアパート、マンションの隣にどんな人が住んでるかも分からないし関心もないようなことも増えてますね。
個人の尊重に都合がいい反面で、孤独死とか家族間の暴力や虐待などに対して隣近所や行政が立ち入りにくい空気になっていることがどうなのかという角度では間違えてもいないと思いますけどね。
Posted by ヒラリー at 2015年05月17日 14:08
ヒラリーさま、

あなたはなぜに自民党の漫画冊子の影響を、
かくも一生懸命矮小化したがるのかと、わたしは思います。
問題視されると具合の悪いことでもあるのかと思います。


>個人の尊重と地域の連帯などで、高齢単身の人が増えている状況で
>地域以前にアパート、マンションの隣にどんな人が住んでるかも
>分からないし関心もないようなことも増えてますね

それと女性の地位向上とどう関係があるのかと思うところです。

>個人の尊重に都合がいい反面で、孤独死とか家族間の暴力や虐待などに対して
>隣近所や行政が立ち入りにくい空気になっていることが

個人が尊重される社会においては、孤独死や家族間の暴力や虐待などに対して、
行政のサポートやケアや補助ができているでしょう。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月18日 22:38
たんぽぽさん。
矮小化というより、そもそもが大きな話になっていませんからね。
たんぽぽさんは、もっと野党が追及したらいいのにということを前のところで言われていますが、
矮小化されてしまっているから野党でもマスコミでももっと騒げと苛立っておられるのではないですか。
Posted by ヒラリー at 2015年05月19日 00:04
ヒラリーさま

>矮小化というより、そもそもが大きな話になっていませんからね

問題は「自民党がこういう内容の漫画を作った」ことがであって、
「この漫画にどれだけ影響があるか」ではないと思います。

それにもかかわらず、あなたが「漫画の影響力」のお話ばかりするので、
影響力をことさらに矮小化したいか、矮小だと思いたいという
意識があるのではないかと、想像するしだいです。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月21日 22:38
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