5月17日に大阪市を廃止して、東京23区と同様の特別区5区を置く
「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が行なわれました。
わずか10741票という僅差で、反対多数となりました。
「大阪都構想の住民投票、反対多数確実 大阪市は存続」
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開票終了。 pic.twitter.com/JVnbOknFju
— にっくん (@nikunikunikkun) 2015, 5月 17
わたしが注目したいのはつぎのことです。
反対派はかなり不利な状況で大健闘したようです。
物量では賛成派が圧倒的に有利だったのでした。
「大阪の住民投票結果から見えるもの」
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1. 資金
維新の党は4億円以上の広告宣伝費用を投入。
反対派の自民党大阪府連の広告宣伝費は5000万円程度。
(自民党大阪府連だけが反対派ではないですが、
全部の勢力の住民投票に使った費用を合わせても
賛成派より多くはならないだろうと思います。)
2. 政治勢力
大阪市議会、大阪府議会ともに維新が過半数ではないが
もっとも議員の数が多く単独で与党となっている。
とくに4月の統一地方選で議席を伸ばしたことが大きい。
さらに首相官邸が維新をなかば支持。
統一地方選・大阪
大阪市議会議員選挙 議席確定 NHK pic.twitter.com/ZWbXoEdiiK
— ゆうきん (@yukin_done) 2015, 4月 12
反対派の自民党大阪府連は、首相官邸の支持を受けられず。
民主党、社民党は府議会、市議会のともに壊滅同然。
共産党はふつうに活動していたが、
共産党だけで賛成派に対峙できるほどの勢力はない。
大阪の公明党は支持団体の中央から、
「動くな」というかなり厳しい締め付けがあったと言われている。
地元の創価学会の人たちが、反対の声を正面から
上げ始めたのは投票日の2-3日前かららしい。
3. 利権
大阪市の廃止によって建設業に特需が来ることが予想される。
4. マスコミ
関西圏のテレビ局は、基本的に橋下に対して批判的な態度は取らない。
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お金、権力、情報網のあらゆる面で反対派は劣勢だったのでした。
このような状況下にもかかわらず、反対派は地道に理解を
広める努力を続けたので、その結果わずかの差ながら、
都構想を否決させるにいたったということです。
「言論の自由」とか「表現の自由」というのは、
だれでも公平に持っているものではないのですよね。
多額のお金を投入できたり、大勢の人員を動員できるほうが有利です。
たくさんのお金や人を使って、情報をどんどん拡散できるからです。
「「情報の封鎖」と「情報の氾濫」」
これによって、いくら反対意見が自由に言えたところで、
圧倒的にたくさん氾濫する賛成意見の中に埋没して、
ほとんど眼につかなくなるようになります。
物量の前には内容の正当性や妥当性は、さほど影響しないことです。
ここに「正しい主張をしていれば、かならず聞いてもらえる」という
素朴な「言論の自由」信仰は崩れることになります。
大阪都構想の住民投票の場合、関西圏のマスコミが
あえて橋下や維新や都構想に批判的な意見を言わないのですから、
情報の氾濫に加えて情報の統制も併用されていることになります。
大阪都構想の住民投票は、為政者たちが権力と物量にまかせて
情報の氾濫によって市民たちを喧伝できるか、
ということだったとも言えると思います。
それは「金と権力で市民の意志を買い取れるか」であると、
もっと露骨な言いかたをすることもできるでしょう。
権力を持ち、政治に責任を負っている側が積極的に
虚実ない交ぜの「バラ色の未来」を描く政策宣伝、多額の広告資源の投入、
金(広告料)と恫喝による報道機関の押さえ込みなどで、
国民の意思を「買う」ことができるかどうかの実験だったのです。
それは反対派の地道な活動により、寸前でくじかれたということです。
総力戦の末に、0.8%の差を付けて、野党の立場にある
反対派が勝利したことは、この国の「買収されない」「騙されない」
民主主義の在処を示したように思えます。
付記:
この話題、橋下徹が政治家をやめると言い出したとか、
辛坊治郎が世代間対立をあおったり、不正投票と言い出したりとか、
派生する話題はたくさんあるのですが、深入りはしないでおきます。
大阪都構想というより単純に市の権限を小さくしようという話ですよね。
それに対してどの党が反対しないと損だとか、お年寄りは反対しないと損だということではないのに、普段対立している党が反対で手を組んだとか、シルバー層の反対が大きかったとか言ってる人がいるのは面白いなと。
若い世代が9対1とか8対2で賛成したのにというなら分かりますが、その場合は70代以上の反対多数で動くわけないんで、どっちにしろおかしいんですが、言ってる本人はなかなか言えないことを言ってやったとかシルバー世代支配の選挙に物申したとか思い込んでる馬鹿さ加減があって面白いです。
小泉進次郎なんかもヘタ打ったみたいで笑わせてくれますね。
住民投票の結果を、世代間対立や南北格差で説明しようとする
「分析」はたくさん見かけますね。
こういう見かたもそれなりに妥当性はあるのでしょうけれど、
もともと差がわずかなので、深入りしたところで、
あまり意味がないとわたしも思います。
それどころか必要以上に差を強調することになって、
かえって本質が見えなくなることになりかねないと思います。
深入りするつもりもないですが、私は維新がこの投票のために莫大な広告費を投入していたことは知りませんでした。
確かに反対派は資金面では維新にまったくかなわないが反対する必要性が伝わるように活動していきたい、という反対陣営のコメントは読みました。
私は資金が関係あるのかな?と思いましたが、なるほど広告費等を大きく投じたわけですね。
すると今回の結果によって投票の勝敗は資金面で大きく不利でも勝てる、逆に広告などで大金投じても負けるという本質面が浮き彫りになったのは良かったと思います。
資金面では橋下・維新はかなり有利だったのはたしかみたいです。
お金を使うところは、広告費や宣伝の活動のためですね。
http://bit.ly/1SzY38N
>すると今回の結果によって投票の勝敗は資金面で大きく不利でも勝てる、
>逆に広告などで大金投じても負けるという
物量で圧倒的に不利な側が、地道な活動で情報戦を勝ち切ったのは、
大きかったとわたしは思います。
維新の側は危機感をあらわにしていたというので、
反対派はかなり橋下・維新を圧迫していたのでしょう。
それでも反対派はかなり粘り強い活動をして、
ようやく0.8%という僅差ですから、楽観はできないと思いますが。
物量で有利なほうが情報戦に負けるのは、
よほどのことなのだろうと思います。