2015年05月23日

toujyouka016.jpg 人口減少社会に向けて

日本の人口が今後減っていくことは悪いことではない
ということを、解説した記事があるのでご紹介します。
日本の歴史人口学の草分けのようなかたの記事です。

「「人口減少=悪」ではない 次世代に向けて発想を転換せよ」
(はてなブックマーク)

人口減少がかならずしも悪いことではないのはたしかです。
将来人口が減って行くことを前提として、それに対応できる
社会のシステムを作っていけばよいというわけです。

どのように社会のシステムを改変する必要があるかですが、
今後対策が必要となる課題として、記事ではふたつ挙げています。

 
>大都市圏への人口集中

ひとつは大都市圏への人口集中と、それにともなう地方の過疎化です。
これは容易に予想ができることだと思います。
このままにしておくと不便な地方から、どんどん人が都市部に流れて、
地方には人のいない集落も出てくるでしょう。

まず、人口の偏在です。東京や大阪といった大都市への一極集中が進み、
まるで打ち捨てられたような地方が増えています。
おそらく東京にいると、人口減少といわれてもピンとこないでしょう。
大都市では今も高層マンションが建ち、交通網が整備され、
近代技術を用いた都市づくりが進められています。

一方で、多くの地方がそうした恩恵に与れず、
人口減少によって学校や公共機関といった最低限のインフラさえ、
自分たちで賄えなくなくなりつつあります。
各地域の中核都市、さらにその下の市町村に人口を呼び戻す政策が急務です。

昨年の12月に政府が定めた、人口減少対策の「総合戦略」の
長期ビジョンでは、「東京一極集中の是正」があり、
2020年までのおもな施策の目標のひとつとして、
東京(都市部)への転入減と、地方への転出増があります。
地方からの人口流出は政府も問題視しているのであり、
いかにして地方に人を引き止めるか、地域活性の問題になるわけです。

「出生率に数値目標設定」

昨年の5月に、地方から人口流出が進んで若い女性がいなくなるという、
「日本創成会議」による試算がなされています。
2040年には数えるほどの人口しか若年女性がいなくなり、
自治体の維持も困難になるところが続出するという、衝撃的なものでした。

とくに若い女性を地方に引き止めるためには、
子育て環境の充実のほか、女性にも就職を保証することと、
因習・反動的な家族・ジェンダー観の改善が必要になるでしょう。

「地方から女性が消える」


>高齢化社会

もうひとつは、これも言わずもがなですが、高齢化社会対策です。
今後は老年人口の割合が高い状態が続きますから、
労働力や社会福祉、経済力の維持が問題になってくるわけです。

記事ではつぎのように書いているのですが、この文章から感じ取れる
ニュアンスを見るかぎりでは、将来の高齢化社会の負担を
かなり楽観視しているように、わたしは思うのですよね。
「リスクを十分に意識する」程度ではすまないだろうと思います。

また、日本はTFRが2を切ってからの低下のスピードが速過ぎます。
このカーブが緩やかであれば、政府や自治体は高齢化対策を立てやすいですが、
ここまで急だとそれもままならない。
この点についても、リスクを十分に意識する必要があります。

記事では日本の理想的な人口は7000万人-8000万人としています。
(いまのドイツと同じくらいということでしょうか?)
「終戦直後くらいの人口」としていますが、終戦直後と将来とでは
同じ人口8000万人でも、人口構成がぜんぜん違うのですよね。

私が考える日本の理想的な人口規模は、7000万〜8000万人。
終戦直後くらいの人口です。徐々に減っていって、
それくらいの規模で安定させるのがいいと思います。


補助ブログの5月18日エントリでしめしましたが、
1990年あたりから老齢人口の割合が急激に高くなり、
人口ボーナス期から人口オーナス期への転換が起きます。
人口ボーナス期の終戦直後は老齢人口は5%もないですが、
将来人口が8000万人になるころには人口オーナス期で、
老齢人口は25%程度になっています。

「日本の人口の長期変化」


老齢人口が5%と25%では、必要になる高齢者福祉予算や、
確保できる労働力や、維持できる経済力は格段に違っています。
人口規模は同じでも、終戦直後と同じ労働生産では
未来はとてもやっていけず、福祉予算を確保するためには、
相当に生産効率をよくする必要があるということです。

たいていの試算では、このまま人口が減るに任せたら、
福祉や労働力や経済力が確保できなくなるようになります。
それで「人口が減ってもいいじゃないか」なんて悠長なことは言えず、
少子化対策を導入して、人口の維持と回復に必死になるわけです。

posted by たんぽぽ at 20:30 | Comment(8) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさん。
一組の夫婦が2人子供を持つことが理想との前提で語る人がいて、結局2人ならそのまま出生率2前後になるみたいな。
以前、誰でどの記事か忘れましたが、そうでなく結婚しない人もいれば経済無関係で結婚しても子供はつくらない、また1人だけでいいという認識の人もいる。
一方で2人と言わず3人でも4人でも欲しい。でも経済的にちょっと、という夫婦に対して援助を厚くすべきで、その前段階の結婚する気がないとか子供は経済がどうであれ1人だけでいいという人たちに押し付けても互いに嫌な気分になるだけ。
現在2人子供がいて3人目、4人目も欲しいという夫婦に徹底援助するのが良いとの指摘を読んで、まあそういう考えもあるかと。
確かに勉強、学問に興味ない人に日本全体の大卒を増やそうと余計な大学つくって強引に入学させたところで誰のためにもなりませんからね。
だったら家庭の経済事情が弱くても本気で学びたい人に返済不要の奨学金援助すれば、その人も卒業して国に感謝するし、その学びを国に還元しようとしますね。
結婚、出産、大学進学。その気のない人に押しつける迷惑をやめて、具体的にその気のある人にアプローチ、ケアしていくのがお互いにとってベストだと思います。
Posted by ヒラリー at 2015年05月23日 21:55
少子高齢化は日本の抱える一番の問題だから早く大規模な対策を打って欲しいですが、今の様子じゃ手遅れになるまで国は大きく動きそうにないですよね。
ぶっちゃけ対策を打ったところで日本が少子高齢化を止められる気がしませんし。
悪化していく人口比率に今の社会構造ではどうあがいても耐えられないのだから、どうやってうまく国を畳んでいくかを考えなきゃいけない時期に来ているのかもしれませんね。

終末期医療やら安楽死やら、そう言った話題を自殺幇助だなんだと日本社会は避けていましたが、そんな甘ったれたことを言ってられなくなっていくんじゃないかなと自分は思います。
Posted by 干しぶどう at 2015年05月25日 19:51
ヒラリーさま

>現在2人子供がいて3人目、4人目も欲しいという夫婦に
>徹底援助するのが良いとの指摘を読んで

これかしら?
http://taraxacum.seesaa.net/article/416730883.html

「具体的にその気のある人」でしたら、3人目がほしいけど困難な人より、
ひとり目がほしいけど困難な人のほうが、ずっと多いと思いますよ。
子どもに関する経済的支援は、公平性を重視して
人数に関係なく同じ額の支援をするのがいいと、わたしは考えております。

>確かに勉強、学問に興味ない人に日本全体の大卒を増やそうと

大学進学はまだまだ需要がありますよ。
「学問に興味ない人」の心配より、大学に入りたくても入れない人の
心配をすることだと思います。
奨学金が貧しいことや、授業料が高いことなど、
学生の経済的負担が大きすぎることを、緩和したいですね。


ところでこれらのお話は、エントリの主旨とずれると思いますよ。
お付き合いはしてあげたけれど。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月25日 21:28
干しぶどうさま、このエントリにコメントありがとうございます。

>今の様子じゃ手遅れになるまで国は大きく動きそうにないですよね

日本社会はもう片足を棺桶に突っ込んだと、わたしは思ってますよ。
団塊ジュニア世代が最後の出産適齢期だった時代も
もう終わってしまいましたしね。
日本は2050年に世界一悲惨な国になるという、
エコノミスト誌の予想は、当たるとわたしは思っています。
http://bit.ly/1GyePjT

本気で眼に見える対策をするようになるには、
手遅れを通り越して、断末魔のおたけびをあげる
くらいにならないと、無理なのかもしれないです。


日本で少子化対策が進まないのは、ジェンダー問題や
移民問題と深く関わっていて、長年日本社会が差別を続けてきたことなので、
なかなか向き合えないということだと思います。

過去20数年間の少子化対策は、いまもある差別主義者たちの
妨害の連続であり、無策と愚策の連続でしたね。
きょうびは危機感だけはあらわにしているけれど、
過去の無策と愚策を顧みる動きは、まだないようです。
http://taraxacum.seesaa.net/article/406182892.html
Posted by たんぽぽ at 2015年05月25日 21:31
人口減少がいいことなんですか?
構成比の伸びは老齢ばかりが盛んで、
社会システムは生めよ増やせよの時代からまったく変化せず、
おかげで国家予算を借金(しかも返す宛てがない)で組む始末。
人口が増え続けることを前提とした年金制度は、
いまでは手に負えない状態(破綻すらかわいい表現)なのに、
老人票を失うわけにいかないから抜本的な改正ができない。
「若者」と書いて「じゃくしゃ=弱者」と読む
(始末におけないのは当の本人たちにその自覚がない)、
そんなこの国の現状が、いいこと、なんですか?
いかにも満ち足りたジィさんが語りそうな、
あまりにも楽観しすぎている記事だと思います。
Posted by aka21 at 2015年05月26日 19:45
aka21さま、このエントリにコメントありがとうございます。

>人口減少がいいことなんですか?

とくに高齢のかたに人口問題で楽観的なことを言われると、
これからがある若い世代のかたは、無責任なことを言われているようで、
感情を害することもあると思います。


人口減少が「悪でない」のは、人口が減っても社会が維持できるよう、
社会のしくみを移行できれば、というお話なのですよね。
リンクした記事では、記事の都合で深入りしなかっただけで、
もっとくわしいビジョンがあるのかもしれないけれど、
わたしが記事の文章を見た限り、楽観視している感じです。

このまま人口が減ってもよいとおっしゃるかたは、
今後人口が減った場合の、社会保障や労働力をどう確保するのか、
具体的なシステムをしめす必要があると思います。


記事では適性人口は7000万人-8000万人と言っているけれど、
この数字に根拠はあるのかな?と思います。
現在1億2000万人の人口があるけれど、多すぎということはなく、
まだまだ人口が増えても、暮らせるだけの余裕はあると思います。
国民の一部を国外へ移住させないととても社会が
維持できないほど、人口過多ではないですよね。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月27日 20:24
「反動的な家族・ジェンダー観」は地方特有のものではなく地方には高齢者比率が高いいから、「反動的な家族・ジェンダー観」を持つ人の割合が多いのだと思います。
最近感じたのですが、僕の上の世代の人は「昭和」と言われるよりも「田舎」と言われる方が傷つくそうです。
本当は地元に住み続けたいですが地元に仕事がなくやむを得ず東京に出る人の方が、東京に憧れて東京に行く人よりも多いと思います。
上の世代は東京さえよければ日本はなんとかなると思っていそうです。
Posted by あいうえお at 2023年11月17日 15:07
一般に地方は情報が入ってこないから
因襲・反動的になりやすいと言われます。
最近はインターネットの普及でも、
地方と都市部とで、情報の格差は
それほど大きくないかもしれないですね。

差が出るとしたらインターネットに
触れる機会の少ない人たちで、
これも高齢層に多いと思われます。


>本当は地元に住み続けたいですが地元に仕事がなくやむを得ず東京に

「東京にあこがれて東京に出てくる
地方の人」というのを、わたしも
あまりイメージできないです。
たいていの人は、自分が産まれ育った土地から
あまり動きたくないものだと思います。

東京にみょうなコンプレックスを
持っている地方の人は、
それなりにいそうに思います。


>上の世代は東京さえよければ

「東京さえよければ」というより
「東京だけなんとかするのが精一杯」に
なるかもしれないです。

日本はこれから着実に衰退して、
国全体の持てるリソースが少なくなるからですが。
Posted by たんぽぽ at 2023年11月27日 23:02
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