2015年06月06日

mar0006.gif非婚・未婚と経済問題

山田昌弘氏の『結婚の社会学』という本があります。
いまの若い人たちに未婚・非婚が増えている理由を考察をしています。
この本を読んで自分なりに内容について解説した
記事があるので、ご紹介したいと思います。

「若者が結婚できない理由」
(はてなブックマーク)

「結婚の社会学 -未婚化・晩婚化はつづくのか-」

 
この本の中心的主張は、経済成長との関係だと思います。
「経済成長が止まったから結婚できなくなった」ということです。
経済成長が鈍くなると、被雇用者の年収も下がります。
さらに現在は非正規雇用も増えて、雇用も不安定です。
収入と雇用が不安定なので、結婚しようと思わなくなるということです。

内閣府が2014年に発表した世論調査でも、
「未婚・晩婚の理由」では「経済的に余裕がないから」、
「結婚を決心する状況」では「経済的に余裕ができること」が
きわめて多くなっています。

「未婚・晩婚化の意識調査」

図表6 若い世代で未婚・晩婚が増えている理由<MA>(全体・性別)

図表7 結婚を決心する状況<MA> (結婚意向者、全体・性別)


なぜ経済の低成長が結婚に影響するのかですが、
ここでは、高度経済成長期に定着した「夫の経済力が上で
妻の経済力が下」という状況のもとで、女性にとっての結婚が、
自分の暮らしを向上させる男性に自分を託すことだ
(「女性の上昇婚」)という結婚観があるからだとしています。

経済が低成長となることで、年収と雇用が不安定化して、
男性が自分より経済力のない女性を養うことが
むずかしくなってきたので、結婚する人が減ってきたということです。

こうした結婚観のもとでは、結婚は男性にとっては「イベント」ですが、
女性にとっては「生まれ変わり」になります。
そして女性にとって魅力的な結婚相手というのは、
「自分をよりよく生まれ変わらせてくれる男性」になります。

内閣府の意識調査を見ると、上述のふたつの調査とも
男性は経済的事情がいちばん多いですが、
女性は「独身の自由さや気楽さを失いたくない」、
「希望の条件を満たす相手にめぐり会う」となっています。
かかるジェンダー差は、前時代の「女性の上昇婚」が
当然だった時代の名残りがあるからでしょう。


わたしの想像ですが、「経済的問題」というのは
「女性の上昇婚」が保証できなくなっただけではないだろうと思います。
「経済力がある男性が経済力のない女性を養う」
という結婚観は、まだ名残りがあるとはいえ、
こだわる人はだいぶ減っていそうに思うからです。

単に経済が停滞して収入や雇用が不安定になると、
それだけで恋愛や結婚をする気にならなくなると、わたしは思います。
ようは目先の生活をどうするかが大事になってきて、
恋愛や結婚をする心理的余裕がなくなってきて、
関心が回らなくなってくるということです。

前にも言ったけれど「衣食足りて恋愛を知る」です。
収入や雇用の不安定は、交際のための娯楽費用といった、
経済的余裕もなくなってくることは、もちろんでしょう。

大学生に限ったお話ですが、いまの若い人たちは
貧乏になってきたという記事があります。
生活費や学費を捻出するために、アルバイト漬けになっている
大学生もいまは珍しくないと思います。
恋愛や結婚をする心理的余裕や経済的余裕はもちろん、
時間的余裕もないのではないかと思います。

「若者が草食化した本当の理由」
(はてなブックマーク)


経済的理由により「女性の上昇婚」が保証できないなら、
「経済力がある男性が経済力のない女性を養う」という
結婚観にこだわるのをやめて、夫婦共稼ぎをする方法があります。

高度経済成長期と比べたら、いまはずっと夫婦共稼ぎで
家庭の経済問題を解決する余地はあるだろうと思います。
それでも婚姻率が高くならない理由のひとつは、
男性の家事労働に対する負担が少ないことがあります。

日本の男性はOECD加盟国の中で、きわめて家事時間が短いです。
小さな子どもを持つ夫婦共稼ぎの世帯にかぎっても、
日本の男性は欧米の民主主義国の男性と比べて、
家事時間がきわめて短いくらいです。

「家事をしない日本の男」
「家事をしない日本の男」

男性は経済的事情から夫婦共稼ぎを希望しながら、
家事は妻にほとんどやらせようとしているということです。
このあたりにの「あきらめ」から、若い女性の中には、
専業主婦願望を持つかたも出てきているのでした。

「また専業主婦願望問題」


こういう経済と結婚や恋愛との関係は、家族問題に多少くわしいかたでしたら、
いまであれば常識的に知っていると思います。
山田昌弘の『結婚の社会学』は1996年の本なのですよね。
いまから20年近く前にこのような指摘をしたのは、
先見の明が多分にあったのではないかと思います。

本書がすごいのは、当時まったく無関係だと思われていた
「結婚」と「経済成長」が、実は深く関係していることを示したからだ。
と最初のエントリでも書いているくらいです。
意外性があって画期的な指摘だったのだろうと思います。

posted by たんぽぽ at 22:49 | Comment(3) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

はてなブックマーク - 非婚・未婚と経済問題 web拍手
この記事へのコメント
たんぽぽさん。
パラサイトシングル見解のダメさ加減で懲りたと思いましたが、それでも山田氏の論を支持するんですね。
正規、非正規の話も84年正規3333万人(非正規604万人)、89年3452万人(817万人)、93年3758万人(986万人)、98年3794万人(1173万人)、03年3444万人(1504万人)、09年3395万人(1727万人)
13年3294万人(1906万人)

80年代と比べて正規が大きく減っているとは言えないです。非正規が大きく増えています。
前に書いたかもしれませんが正規が減って非正規が増えたのでなく非正規で働く人が増えたと言うほうが正しく、労働人口の減少という先入観があると実感できないかもしれませんね。
また以前、私は働く人の平均給与や様々な分野の売上高などは80年代後半でなく96-97年あたりがピークと書いた際に、たんぽぽさんの見解は90年代から不況に入ったが多くの企業が正規をリストラするなどした効果で数字上はプラスになっているということでしたね。
でも93、98年を見ればむしろ正規雇用が増えていることが分かります。
13年の非正規の内訳はパート49%、アルバイト21%、派遣社員6%、契約社員14%、嘱託6%、その他4%
派遣社員というのは実は非正規の中でも少数です。パート、アルバイトはさらなる内訳は不明です。学生さんや主婦の小遣い稼ぎや定年退職した人が年金の足し、まだ働きたいからとの理由もあるでしょうね。
正規でもブラック企業などの問題があります。元々が正規でも労働組合があるのは少数なので民間で対応するとか、フリーター労組をつくったり相談を行っている団体もありますね。
山田氏のような分かってもいない、そのような民間団体に関与するわけでもない。取材も行っていない。それにこの人は女性の立場向上をうたっている人でもないのに、たんぽぽさんが支持することが不思議です。
ちなみに上記、正規、非正規などの数字は4月の週刊朝日によるものです。
Posted by ヒラリー at 2015年06月07日 03:24
昔から企業が事務的な仕事を派遣で賄うというのはありましたが、リーマンショック以降は、部門そのものをアウトソーシングし、そのアウトソーシングを非正規雇用で賄っている状況を多々見ると、やはり経済状況は厳しいと言わざるを得ません。

>学生さんや主婦の小遣い稼ぎや定年退職した人が
>年金の足し、まだ働きたいからとの理由もあるでしょうね。

なにを平和ボケしてるのか、と言いたくなりますよ。
昔は全部正規雇用でいける体力が企業にありましたが。
んで、ヒラリーさんが何をもって山田氏を批判したいのか全くよくわかりませんし、正直、どうでもいいのではありますが・・。

さてさて脱線した話からもとに戻すと、
私は、たんぽぽさんの「先見の明があった」というのは同意します。

一昔前は、合コンに命をかけていて女性はたくさんいました。皆、上昇婚狙いでした。要は個人でセットする合コンではなく、法人が運営している合コンで「医者」との合コンとか、参加者の属性を分けてるのも色々ありましたね。まだ上昇への希望が色濃くあったころですね。

今は、年収の低い男性と結婚して苦労したくない、共働きをしても家事育児の負担が多すぎて女性には割に合わない、と、この経済状況の中、無理に結婚する必要はない、と思う女性の傾向が強くなってきてるということですね。なので、結婚にあぶれる男性も増えてくる、そして、彼らの収入は高くない、というデータがその証となる。

まあ、今、親がリッチだから、パラサイトする状況もあるわけで、依存できないとまた変わっていくかもしれません。

いずれにしても、男女ともに、結婚したい症候群にさいなまれている人はいまだ多いと思われます。これって洗脳の一つかなと思います。

誰もが等しく平等に結婚にありつけるシステムは、高度成長期には機能したでしょうけど、それが異常だと思ったほうがいいですよね。
いつの時代も、いい男には女がいっぱい群がっていたし、逆もしかり。

人生の選択の幅を広げる意味では、自立して自活する覚悟を持たないと、のちのち苦労することになると思います。
結婚制度に依存しない生き方ができ、究極には結婚制度を無用とする社会になれば理想ですが。
Posted by うがんざき at 2015年06月08日 12:17
うがんざきさま、このエントリにコメントありがとうございます。

>さてさて脱線した話から

あれを読んだのですね。お疲れさまでした。


>私は、たんぽぽさんの「先見の明があった」というのは同意します。

『結婚の社会学』は学部生の教科書になっている大学もあるそうです。
https://twitter.com/tmaita77/status/605576985960587266

経済と結婚に関係があるという考察が、
奇をてらっていたのではないかと思います。
固定観念的には無関係というイメージがありますからね。

「戦前はイエ制度があって、イエのための結婚だったが、
戦後家制度がなくなって、自由な恋愛感情にもとづいて
結婚できるようになった」あたりが、一般の認識ではないかと思います。

じつは経済力のジェンダー格差ゆえに、いやおうなしに結婚を
選ばざるを得なかったのであって、その意味では
「自由な恋愛感情にもとづく」とは言えなかったのですね。


>一昔前は、合コンに命をかけていて女性はたくさんいました

そんな時代があったのですね。
(お恥ずかしながら、わたしはよく知らなかったりする。)

>この経済状況の中、無理に結婚する必要はない、
>と思う女性の傾向が強くなってきてるということですね

ようやく「望まない結婚はしない」まで含めて、
結婚が「自由な意志にもとづくようになった」と言えそうですね。

>なので、結婚にあぶれる男性も増えてくる、そして、彼らの収入は高くない、
>まだ上昇への希望が色濃くあったころですね

こういう被害者意識を持った男も出てくるわけですよ。
http://togetter.com/li/824984


>男女ともに、結婚したい症候群にさいなまれている人はいまだ多いと思われます

前時代の「結婚すれば幸せになる」幻想の名残りはありそうです。
経済的なインセンティブは、リソースをかなりつぎ込むので、
経済状況が変わればすぐに破綻するけれど、
精神面は人びとのこころに染み付いているから、
時代が変わっても、なかなか変わらないのだと思います。

>誰もが等しく平等に結婚にありつけるシステムは、
>高度成長期には機能したでしょうけど、

未婚率が異様に低い時代のほうが「特例」なのでしょう。
Posted by たんぽぽ at 2015年06月08日 22:24
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/420247199

この記事へのトラックバック