ふたり目の子どもが産まれて育児休暇を取った場合、
ひとり目の子が0-2歳のときは保育所を退園させるというものです。
批判が殺到しても無理もないというものです。
「2人目産んで育休取ったら「上の子は保育園を出ていって」
所沢市の政策に働くママが大激怒」
「「2歳まではお母さんと一緒にいたい…」市長発言、根拠なし! 所沢保育園問題」
「「育休退園の撤回を」 所沢で集会、母親ら300人参加」
「埼玉・所沢「育休退園」母親ら提訴!市長「子どもは保育園より母親といたいはず」」
「【時代錯誤】所沢市長「保育園に入りたいと子どもは思っていない」の欺瞞」
保育所が不足しているための待機児童対策で
あろうことはすぐにわかることと思います。
「親が育児休暇を取っているなら家にいるのだから、
子どもを保育所に預けなくていいだろうから、
待機児童のために空けてくれ」ということです。
このとんでもない新制度に関して、なんと所沢の藤本正人市長が
「3歳児神話」「母性神話」を根拠に持ち出しているのですよ。
それでさらにとんでもなさに拍車がかかることになります。
http://www.j-cast.com/tv/2015/06/26238754.html
所沢市長は「子どもが保育園にいたいと思っているかど
うかというと、そうではない。子どもに聞けば、
お母さんと過ごしたいと言うだろう」と話す。
「3歳児神話」「母性神話」というのは、「子どもは小さいうちは
母親のもとで育てないと、子どものあとの成長に悪影響が出る」
という、あの根拠のない言説です。
「子どもに聞けば、お母さんと過ごしたいと言うだろう」ですから、
「3歳児神話」影響を受けていることが考えられます。
「3歳児神話」の発端は、ジョン・ケネルと
マーシャル・クラウスによる「母と子のきずな」という研究です。
この研究は、産まれたばかりの子が母親のあとを付いて行くので、
出産直後の母子を引き離したら悪影響なことが当たり前の
山羊のケースを人間に当てはめたりしていて、
当時から根拠が薄弱とされていました。
「母性神話」
「行間を読む 9 <根強い「きずな」幻想>」
その後の研究により、3歳までの子どもの母親が外で働いていても、
その後の子どもに悪影響があるわけではなく、
「3歳児神話」は根拠がないことが、わかってくることになります。
「3歳児神話を検証するII〜育児の現場から〜」
3歳未満での母親の就労は、日本のサンプルについて見ても
児童期、思春期の問題行動や親子関係の良好さとは
関連しないことが一つ明らかになりました。
日本の厚生白書でも「三歳児神話には,少なくとも合理的な
根拠は認められない」という節があって、はっきり否定しています。
1998年ですから、いまから20年近く前のお話です。
「厚生白書(平成10年版)」
1-5三歳児神話には,少なくとも合理的な根拠は認められない。
これまで述べてきたように,母親が育児に専念することは
歴史的に見て普遍的なものでもないし,たいていの育児は
父親(男性)によっても遂行可能である。
また,母親と子どもの過度の密着はむしろ弊害を生んでいる,との指摘も強い。
欧米の研究でも,母子関係のみの強調は見直され,
父親やその他の育児者などの役割にも目が向けられている。
三歳児神話には,少なくとも合理的な根拠は認められない。
「3歳児神話」に根拠がないことは、このようにかなりむかしから
繰り返し指摘されているし、わたしのブログでもときどき話題にします。
それでもいまだに信じている人は後を絶たないようです。
2013年のNPOの意識調査でも、「子どもが3歳になるまでは
母親が家庭で育てるべき」と答えたかたが、
働く女性の3分の1以上、男性にいたっては4分の3もいたのでした。
ここには「3歳児神話」の影響もあることが考えられます。
「3歳まで家で育児を?」
政治家や識者や有名人など、社会的に影響力のある人が
「3歳児神話」や「母性神話」を信じていて、
それにもとづいた考えをおおやけにしゃべったりすると、
このように物議をかもすことになったりします。
そもそも埼玉県は保育に対しての定義がおかしいのです。保育に欠ける児童に対する通常保育時間は8:30-16:30で、それ以降は延長保育、という概念を踏襲している市が多い。16時半に迎えにいける、という労働者はフルタイムではそう多くはないと思います。もちろん、実際は公立でも遅い時間まで保育はしてくれるのですが、その定時の基本概念が時代にマッチしていないということに行政は誰も気が付かないのだろうか。
そういや、保育サービスが充実している自治体では出生率が上がる、というデータえっせいもありましたけど・・
このエントリにコメントありがとうございます。
>もう〜!!所沢市民は誰を選んでるねん!
こういう事情があるみたいです。
「民主はやはり期待できない」と言って、自民党を選んだら
もっとひどいことになった、というよくあるパターンです。
https://twitter.com/IsSheW/status/612074447063773184
>保育に欠ける児童に対する通常保育時間は8:30-16:30で、
>それ以降は延長保育、という概念
16時30分というのはいくらなんでも早過ぎですね。
延長はするのでしたら、現状はわかっているということでしょうが、
現在の状況に合うように概念を改めるところでしょうね。
>保育サービスが充実している自治体では出生率が上がる、というデータえっせい
これかしら?
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/06/blog-post_13.html
この市長は市内の学校にエアコンを設置することを中止して結果、住民投票になったことでもよく知られていますね。思考が読めません。
ただ、3才神話とか母性神話とはまた無関係な面で3日の日経新聞によれば日本の子育て支援の政府支出はGDPの1%でOECD平均2.3%を下回る。
逆に年金・介護の高齢者向け支出はOECD平均7.3%なのに対し日本は10.4%で予算を高齢者に比重するものとなっている。
という記事があります。
それでいて高齢者は自分達が子育て支援よりも国から重きを置かれているなんて思っている人は少ないはずで、民主主義、分配といっても難しいものですね。
こちらにコメントありがとうございます。
いただいたコメントを見逃していました。
お返事が遅くなってもうしわけないです。
「三歳児神話」「母性神話」を
信じるかどうかは、因襲・反動的な家族観を、
どれだけ信奉しているかによるところが
大きいのではないかと思います。
にせ科学ならなんでも当てはまりますが、
それを「信じたい」という
潜在的欲求があるということです。
こちらにコメントありがとうございます。
それは「育児は母親が担うもの」という、
家族イデオロギーがもとにあるからです。
「三歳児神話」「母性神話」は、
そのような家族イデオロギーに
科学的根拠があるかのように装えるので、
都合がよかったのでしょう。
自分も感じた苦労よりもイデオロギーを優先するのはただのバカですよ。
コメントありがとうございます。
「イデオロギー」というより、
「既得権」かもしれないです。
効果的な人口政策や家族政策は、
ジェンダー平等志向が強いものが多いです。
それは因襲・反動的な家族・ジェンダー観に
安住する人たち(中高年男性が多い)の
「既得権」に抵触することになります。
それゆえ中高年男性たちは、
自分たちの既得権にしがみつくために、
ジェンダー平等志向の強い政策に対して
反対や妨害をすることになります。
そして、人口問題は解決しないまま、
「子どもの人口崩壊」が進むことになります。
コメントありがとうございます。
「老害」の世代の男性は、若いころは
子育てなんてろくにしていないのが
多いのではないかと思います。
彼らの時代は、子育ては妻にまかせきりで、
自分は外に出て働いていれば
問題がなかったのでした。
彼ら高齢男性が優先したいのは
イデオロギーというより既得権だと思います。
ようはジェンダー差別を維持して、
男性の自分は利益を得たい、ということです。