2015年07月21日

toujyouka016.jpg 行動の主体と政策の対象

7月16日エントリでご紹介の記事の続き。

メインの話題は1995年に行なわれた北京会議の理念と、
その観点から見た、安倍政権の「女性活用」批判についてです。

「「女性が輝ける社会」に女性はイラッとしている 日本の”男女平等”への違和感」
(はてなブックマーク)

 
「北京会議」とは国際連合が主催した、第4回世界女性会議のことです。
すべての参加国の合意のもとで「北京宣言」と「北京行動綱領」が
採択されたことが、とくに大きいです。

たとえば今年は、1995年に国連が主催し、
世界の約190かか国から約5万人の女性たちが参加した
「第4回世界女性会議」(※1)から20年目にあたります。
北京で開催されたので「北京会議」とも言われますが、
この会議が画期的だったのは全参加国の合意のもと、
「北京宣言」と「北京行動綱領」が採択されたことでした


孫引きで恐縮ですが、「北京行動綱領」の核心部分についての解説があります。
女性は「政策の対象」ではなく「行動の主体」であるということを
はっきりと確認したことが、とくに重要だろうと思います。

“行動綱領では「女性は政策の対象ではなくメイン・アクター(行動の主体)」
として位置づけられ、貧困をはじめ、すべての問題解決に
女性のエンパワーメントが強調され、その結果、ジェンダー平等に関する
最も包括的で高い水準の国際文書となった。
(「北京で燃えて20年-第4回世界女性会議」船橋邦子さん(※2)の論考より)”

女性を「行動の主体」と考えるということは、女性の権利や尊厳や
立場を中心にして、さまざまな政策を考えるということです。
それによる「経済効果」や「少子化の解消」といったことは、
「結果的なもの」であり、「副産物」ということになります。

よって「経済効果」の有無に関係なく、女性の権利や尊厳の
保障は必要なこととして、そのための政策を推進するということです。
女性の権利や尊厳が「目的」で、諸政策はその「手段」ということです。


女性を「政策の対象」とすると、「経済効果」などの政策が「目的」となり、
女性の存在はその実現のための「手段」になります。
このような考えかたの人は、「経済効果」が期待でなければ、
女性の権利や尊厳を守るための施策を行なわなくなることになります。

女性を「政策の対象」で考えていても、「経済効果」に役立つときは、
政策が導入され続けて、女性の権利や地位はそれなりに改善はしますが、
「経済効果」の役立たなくなると、女性の権利が保証されない
もとの状態に戻って行くことになりかねないです。
もとに戻さないためには、「経済効果」に役立っているときでも、
女性を「行動の主体」であると意識する必要があることになります。


安倍政権がさかんに唱えている「女性活用」に対して、
不信感がぬぐい去れないかたも多いと思います。
それは「経済のため」や「少子化解消のため」であり、
女性を「政策の対象」としていることが、透けて見えるからだと思います。

「安倍政権・女性活用の不信」
「安倍政権・女性活用の不信(2)」

安倍政権は因習・反動的な家族思想を信仰のようにしていて、
ジェンダーフリー・バッシングをはじめ、女性の権利や尊厳に
反対する主張や政策を、長いこと展開してきたのでした。
そんな人たちがにわかに「女性が輝く」と言ったところで、
どうせお金のためで、女性の権利を中心に考えていないのではないか
と思われても、無理もないというものです。

「信仰としての家族思想」
「母乳強制、DV擁護、中絶禁止…安倍内閣・女性閣僚の「反女性」発言集」

安倍政権の女性政策は、女性を「行動の主体」とは考えてないだろう、
「経済効果」を「目的」にして女性を「手段」にするという
本末転倒を起こしているだろうということは、
記事でも「「感覚」としてイラッとくる」と評しています。

「経済成長」のもとに「女性が輝ける社会」でしかないことに
対する違和感かもしれません。
経済がよいときは女性は家庭に入り、男性は働いてという
保守的な考え方を押し付け、少子化で労働力が少なくなり
経済成長が厳しくなると女性を労働市場に投入しようとする。
北京行動綱領の「女性は政策の対象ではなく
メイン・アクター(行動の主体)」とは正反対のあり方です。


posted by たんぽぽ at 22:15 | Comment(3) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさん。
相変わらず国連信仰がお強いんですね。
・国連は世界政府ではない。
・内政不干渉の原則がある。
・ただし、その国で大きな内乱や虐待等起きれば国連はそれを阻止する行動をとる場合がある。
・しかし、たとえばシリア問題において5ヵ国の常任理事国のうち中国とロシアが拒否権をは発動しいるためシリア問題が改善できないとの趣旨で国連においてアンジェリーナ・ジョリーが演説。
・ただシリア問題、それに伴うISの出現に米国の責任はないのかとの疑問も。
・北京宣言といっても中国自体が人権派弁護士や女性活動家を相次いで拘束している。
・女性の社長や管理職なども経済と無関係はあり得ず、その企業で経済的成果を出せなかったり、業績が悪化すればトップや幹部は男女無関係で降格や辞任させられるのが当然。
そうでなければ資本主義、民主主義と言えない。
・上記、アンジーが特に強調する戦時下、内乱によって女性が性被害にあうことを、今現在それが行われている紛争地があるのに国連は何一つ手を出せていない。
・そもそも中国、ロシアが常任理事国であることに疑問を持たない不思議。核を持った戦勝国がそんなに偉いのでしょうか。
常任理事国であれば逆に人権問題軽視が許されるのでしょうか。
Posted by ヒラリー at 2015年07月22日 00:45
安倍政権の行動の主体は伝統的・因習的な価値観に従う者ということでしょう。これに該当しないものは手段であると考えると合点がいきそうです。

伝統的・因習的な価値観に従って生きている官僚・公務員・経済界(経団連)・中高年層が主体であり、これらに有利な社会を実現するための手段が(偏った)経済成長であり、(偏った)少子化対策であり、(偏った)女性活用、(偏った)外国人活用なのだろうと思います。

これらが主体となって太陽のように自ら輝く存在となる社会を実現するための政策がアベノミクスであり、これらを支える者(典型的な専業主婦や、内助の功で夫を支えつつ非正規労働者として働く兼業主婦など)は月のように反射して輝く存在として扱うということでしょう。

一方で、伝統的・因習的な価値観に従わずに生きる人々、例えばキャリア志向の女性、母子世帯などは日の目を見ぬ日陰者として扱い、様々な差別の犠牲にあえいでも(どちらも昇進機会における差別に苦しみ、前者は出産を諦めざるを得ない場合が多く、後者は育児などの社会福祉において不利で生活満足度は低い場合が多い)関知しないというものです。

なお、私が政策を考えるときはどれを主体とするのではなく、包括的バランスで見ることが多いです。所得について考える場合は、男女のバランスはどうか、若年層と高齢層のバランスはどうか、それぞれにとって公平(機会均等)であるかどうかで見ることが多いです。
Posted by ritiarno at 2015年08月02日 23:56
ritiarnoさま、コメントありがとうございます。

>安倍政権の行動の主体は伝統的・因習的な価値観に従う者

より具体的には、高度経済成長期の「標準家族」ですね。
「信仰」のようになっているレベルです。
http://taraxacum.seesaa.net/article/410975268.html
http://taraxacum.seesaa.net/article/410992216.html

>(偏った)少子化対策であり、(偏った)女性活用、
>(偏った)外国人活用なのだろうと思います

家事、育児、介護のために外国人労働者を受け入れよう
なんてやり出したのが、露骨でしたね。
家事、育児、介護を「アウトサイダーの仕事」と決めて、
女性が使えなくなったから外国人というのですから。
http://taraxacum.seesaa.net/article/395128632.html

>伝統的・因習的な価値観に従わずに生きる人々、
>例えばキャリア志向の女性、母子世帯などは日の目を見ぬ日陰者として扱い、

「信仰」に従わないものを「なかった」ことにするのが、
「家族教信者」の差別のやりかたですね。
それでひとり親家庭の支援は、放置されるし、
選択的夫婦別姓はいつまでも認められないし、ということになるわけです。


>私が政策を考えるときはどれを主体とするのではなく、
>包括的バランスで見ることが多いです。

「主体」というのは、すべての立場の人間が
生きていくことが目的で、政策がその手段ということです。

あなたの場合でも、政策は人間が生きていく目的のためであり、
バランスというのは、たがいに利害が抵触するとき
どこで折り合いを付けるか、ということではないかと思います。

「政策の手段」というのは、一部の利益のために、
特定の立場の人たちを利用するだけの存在にしているということです。
政策が目的で、一部の人間は手段という考えです。
Posted by たんぽぽ at 2015年08月05日 21:36
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