タイトルどおり、なぜ左派・リベラルは安倍政権にかなわないのか、
ということを考察しています。
「左派・リベラルはなぜ安倍政権を倒せないのか?」
(はてなブックマーク)
このエントリで、左派・リベラルが安倍政権にかなわない理由として、
金融安定化政策への無理解を挙げています。
これはたしかに大きな原因のひとつだと、わたしは思います。
「経済政策と民主党の支持」
「経済政策と支持の確保」
「金融安定化政策と民主党」
安倍政権は金融緩和によってデフレから抜け出し、
雇用を増やし、まがりなりにも景気を回復させたのでした。
人は食いぶちを求めるのは当然ですから、経済を安定化させ
雇用を保証する政権に支持が集まるのは必然です。
そして民主党や左派・リベラルは金融緩和アレルギーと
財政再建主義にとらわれて、デフレ脱却の政策を打ち出せず、
経済政策では安倍政権に大きく先を越された、ということです。
つぎにエントリでは、なぜ左派・リベラルは金融安定化政策に
積極的になれないかについての分析をしています。
「現代の左派・リベラルが、かつての社会主義・マルクス主義の
思想的影響下にある」と考えているのですよ。
エントリでは、インフレを許容して経済成長を追求するか、
あるいは超インフレを避けるために経済成長を抑制するかという、
戦前からオイルショックのころまでの経済論争をしめし、
それがそのまま現在の金融緩和に対する賛否の議論に
引き継がれていると考えています。
かつてのマルクス経済学者はすべて超インフレを恐れた
経済成長の抑制派だったので、左派・リベラルの金融緩和アレルギーも、
その系譜を引き継いでいるのだと考えています。
>現代日本の金融緩和アレルギー
わたしに言わせれば、それはこの際関係ないように思います。
いまどき「社会主義・マルクス主義の思想的影響下」にある、
左派やリベラルはどれだけいるのかと思います。
現代の金融緩和アレルギーは、もっと最近のことが原因だろうと思います。
ひとつはバブル崩壊にともなう、インフレに対するトラウマです。
もうひとつは、財務省の財政再建主義・緊縮財政主義の影響です。
「失われた20年」を、バブル崩壊の1992年から
民主党政権が終焉した2012年までとすると、
自民党が政権にいなかったのは全部で5年にも満たないです。
残りの約15年は自民党が政権についていましたが、
ずっと金融緩和アレルギーであり続けてきたのでした。
いまの日本社会において、金融安定化政策に理解がないのは、
右派や保守にも広く見られることだと思います。
左派・リベラルだけの特徴ではないことがわかります。
>バブル崩壊のトラウマ
バブル崩壊のトラウマは、前にお話したことがあります。
トラウマによって金融緩和アレルギーになったのは、
日本銀行やマスコミや知識人にも多いとあります。
彼らの多くは、左派でもリベラルでもないでしょう。
「民主党支持者としての執行部のアベノミクス批判への愚痴」
日本銀行には、第一次石油危機の時の高インフレや、
バブル経済の時代に金融緩和をしすぎた記憶から、
インフレは悪だという認識が根強くあります。
デフレでも良いからとにかくインフレにならないような金融政策を行ってきました。
38度の熱を出してしまったトラウマが忘れられなくて
体温を34度に保って体を鍛えようとしている人がいたら
まず36度ぐらいまで体を温めろよと言うと思うんですが、
体温を上げるのは絶対に許せないと言う考えが日本銀行には強くあります。
それと、マスコミや知識人に多いのがイデオロギー的に
金融緩和にアレルギーを持っている人たちです。
バブル時代、自民党政権は好景気の中で金融緩和を進め
赤字国債を発行し財政支出を増やしていきました。
この時期の「自民党的」な政策に対するアレルギーから、
金融緩和政策に対して脊髄反射的にバブルの再来、
という言葉を使いたがる傾向があります。
>財務省の財政再建主義
財務省は不況になると、自分たちの権限が縮小される懸念から、
財政再建主義・緊縮財政政策を主張したがります。
2013年11月に財務省は、あちこちの識者のところを回って、
消費税増税の必要性について「ご説明」にうかがっていたのでした。
「財務省の消費税増税戦略」
財務省が不況になると、あきらかに悪影響な緊縮財政を主張するのは、
天下りさきの確保や、自分たちの権限の維持のためです。
ようは自分の利益のためであり、イデオロギーは関係ないです。
「財務省の緊縮財政の目的」
>イデオロギーと関係ない金融緩和アレルギー
エントリ作者も1990年代の政治改革の時代には、
自民党出身の政治家も、財政再建主義だったことを指摘しています。
1990年代の「非自民政権」を志向した政治家には
小沢一郎、細川護煕、武村正義のような自民党出身者も多いのですが、
彼らが財政再建を主張して消費税増税を画策し、
インフレを恐れ、経済成長に無頓着であった
橋本龍太郎が首相のとき、財務省(当時は大蔵省)を信用して
財政再建主義を採り消費税を増税したので、日本経済は大不況におちいる
という大失敗となったことは、結構有名ではないかと思います。
これは左派でもリベラルでもない自民党政権の失策です。
「#なぜ日本だけでデフレが続くのか ?〜
#緊縮財政 が日本から成長を奪った。#自民党の失政」
左派やリベラルに分類されるであろう菅直人は、
もともと橋本政権時代の財政再建政策を批判し、
予算編成権を官僚から議会に移すため、国家戦略局の設置など
政治主導確立法案の成立を主張していたのでした。
「参院選総括:「ありえない敗戦」の真因は菅首相の財務省への屈服。」
98年の参院選で大蔵省の財政金融政策を徹底的に批判して勝利し、
「金融国会」で政策新人類を率いて財金分離を実現した菅首相の集大成は、
「国家戦略局」による主計局からの予算編成権奪取だったはずだ。
首相の座についてから財政再建主義に走って、
消費税を10%に増税する議論を始めようとしたのですが、
ここには財務省の影響があると考えられます。
民主党政権と財務省の関係性について当時、財務省トップの勝栄二郎という人がやたらと新聞、雑誌で記事になってネットでも取り上げられていましたね。
テレビでもよく報道されていたそうで。
一般的に財務省が国を動かしてるとか漠然と言われて、なんとなくそういう認識があってもトップの固有名詞なんてなかなか出てこないです。
今は花の昭和54年入省組みがどうの話題になって、このまえ、前次官が亡くなったといってもそれほど名前は出てきません。
ところが民主党政権時の勝氏が異例的な有名人のようになって、民主党は彼に操られているといった趣旨の記事、報道が政権にとって痛かったと思います。
その一方で官僚主導でなく政治主導と主張し、それはある面では掛け声だけでなくなく実践していたようです。
それで何が起こったかといえば「民主党政権になってから我々官僚の仕事は減って、早く帰れるようになったからありがたい」というコメント記事を目にしたことがあります。
政治主導はいいんですが官僚の仕事を減らしてラクさせるというのは方向性が違いますね。
そのような中で菅総理ー野田総理が消費税アップを言い出したので財務省の影響と見られて信頼性を失ったように思います。
突っ込んで考えると、上記の民主党政権になってから早く帰れるようになった、という官僚のコメントなんてでっち上げかもしれないし、勝次官の影響なんて無関係で政府が消費税アップが必要だと判断したのかもしれません。
真相はともかく、国民は官僚含めてよく顔の見えない組織の影響下に政権があるというのは嫌悪感を持ちますからね。
そうなると当初好評だった事業仕分けも財務省の仕掛けだったんじゃないかと疑われたりとか。
ただ政権与党のノウハウがなかった。だからダメでなく、だからもう少し長い目で見ようとの意見も一理あるとは思いました。
それでも先々好転する展望をアピールできなかったのも事実でしょうかね。