2015年08月21日

toujyouka016.jpg 家庭内暴力・国連の勧告

8月20日エントリでご紹介の、日本のDVの実態の記事の続き。

「3日に1人妻が殺される!日本のDVの実態」
(はてなブックマーク)

今回はつぎのくだりを見ていきたいと思います。
日本は国際社会からDVの加害者不処罰に手をつけろ、と批判されているのに、
国内ではあまり知られていないのではないでしょうか。

 
これは具体的には国連委員会の勧告だと思います。
2008年10月の自由権規約委員会では、DVについてつぎの勧告があります。
ここでは加害者の処罰が軽微であることが指摘され、
処罰の引き上げが勧告されています。

「自由権規約日本審査最終見解に関するアジア女性資料センターの見解」

●ドメスティック・バイオレンス(DV)について(15)
加害者の処罰が軽微であり、保護命令違反者も深刻なケース以外は
すぐに逮捕されていないこと、また、被害者に対する長期的支援の欠如や、
外国籍被害者の滞在許可がすぐに下りないことで
雇用や社会保障に問題が生じるケースがあることを指摘しています。

委員会は、加害者への処罰の引き上げ、保護命令違反者の
拘束・起訴、被害者に対する補償および養育費支払額の引き上げと
裁判所命令の実施、長期的リハビリ支援の強化、
および外国籍被害者など特別のニーズをもつ
被害者への支援の強化について勧告しました。


2009年8月の女子差別撤廃委員会(CEDAW)の総括所見では、
女性に対する暴力に関して、つぎの勧告があります。
ここではあらゆる形態の親密な関係の暴力を
対象としていないことを指摘しています。

(2014年1月にDV防止法が改正され、同棲や内縁関係にある
相手からの暴力も含まれるようになったので、
ある程度改善したものと思います。)

「CEDAWが日本政府審査の総括所見を公表」

●女性に対する暴力
女性に対する暴力に関する意識啓発、データの収集と
調査にもとづく介入を行うよう勧告、法執行官や医療関係者等が
十分な知識にもとづく支援を行うよう求める。

DV法があらゆる形態の親密な関係の暴力を対象としていないことを指摘、
保護命令の発行を急ぐこと、暴力被害者のための
24時間ホットラインや質の高い支援を提供するよう勧告した。

特に、移住女性やマイノリティ女性、弱い立場にある
女性の状況に懸念を表明し、弱い立場の女性たちに対し、
被害の届け出等について支援を行うほか、暴力防止の意識啓発を行うよう求める。
性暴力の親告罪規定の撤廃、強姦罪の法定刑引き上げ、
近親かんを性暴力犯罪として規定することを勧告。


2014年8月の自由権規約委員会の日本の報告審査でも、
DVについての言及がいくつかあります。


その中につぎの記述があります。

「Human Rights Committee considers report of Japan」

Another Expert said that the prevalence of
domestic violence remained high in Japan,
while the number of convicted perpetrators was very small.
It took about two weeks for a woman to receive a protective order.

Could the delegation provide information about protection
from violence for persons in same sex or dating relationships,
who were not protected under the existing act?

日本では家庭内暴力が広く蔓延しているにもかかわらず、
有罪判決を受けた加害者の数がきわめて少ない
ということを、べつの専門家は指摘した。
女性が保護申請をしてから受理されるまで2週間ほどかかる。

従来の方法で保護されなかった、同性カップルや内縁関係のカップルに対して、
暴力からの保護についての情報を、当局は提供できたか?

DVが多いにもかかわらず、罰せられる加害者が少ない
ということについては、前のエントリでも触れています。
2014年のデータはDVの相談件数が102963件に対して、
警察の認知件数は59072件で6割程度であり、
検挙件数は6875件で、さらに10分の1程度となっています。

「日本の家庭内暴力の実態」

かなりの数のDV加害者が検挙はなおさらですが、
警察に認知もされないことが多く、野放しにされていることになります。


「国内ではあまり知られていないのではないでしょうか」とも
記事では述べていますが、DVにかぎらず国連の勧告なんて
どんな内容でどんな問題があるのか、把握しているかたなんで
一般のあいだではほとんどいないだろうと思います。

前に、学生のジェンダー平等意識についてお話しましたが、
「日本の人権水準は国際的に見て高いほうで、
深刻な問題はないだろう」くらいに、
なんとなく思っているのではないかと思います。

「学生のジェンダー平等意識」

2013年6月の国連拷問禁止委員会の日本審査で、
人権人道大使の上田秀明氏が「日本は人権先進国のひとつだ」と
言ったら会場が苦笑したことがありましたが、
これが日本人の人権意識を象徴的にしめしていると思います。

「日本の人権外交の実態」

このあたりは、日本国内のメディアは、
外国から日本の人権水準を批判される話題について、
あまり熱心に報道しないことが大きいと思います。

posted by たんぽぽ at 22:11 | Comment(1) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさん。
日本が人権先進国だというのは何ら間違えていませんよ。
8月13日の朝日に韓国セヌリ党女性議員ミン・ビョンジュ氏が「韓国は米国留学から戻る人が増えて西洋の人権意識が広まった」と語っていますが、その西洋の人権意識とはどうでしょう?
朝日のその前日12日にはドイツで難民を受け入れている施設への放火や襲撃が昨年203件。
今年は上半期だけで200件になってしまっているという記事。

米国に関しては差別による暴動で緊急事態宣言がこの1年で何度も発生しているのはご存じの通りです。

英国については共同通信の記者によって、英国の場合は日本と違って人の生死、結婚・離婚などは公開情報と認識され、請求すれば誰でもそれらの記録を見ることが出来てしまうことを明かしています。

フランスは6月24日の朝日でピケティが就職の際に履歴書を送っても、イスラム教徒を思わせる名前で、さらに男性だった場合はたとえ最高レベルの教育、インターンで最高の評価を得ていても採用は絶望的だとパリ第1大学が発表し、またイスラム教徒の女子中学生がスカートの丈が長すぎることを理由に出席禁止されるということが最近起きた。
など不平等を指摘した報国記事があります。
ただし、本人のピケティ氏自身も以前事実婚パートナーにDVで告発されています。

日本でDV被害女性の保護に時間がかかる場合があるのは偽装被害があるからでしょう。
米国人男性と結婚して子供もできたものの、離婚の協議をきちんと行わず子供を連れて日本に帰国してしまうケースが問題になりましたが、長年、日本はハーグ条約に加盟していなかったこともありますが、その女性がDV被害にあい仕方なくー
という偽りの回答をすることが多いために、米国では無断で子供を連れ去られた挙げ句に、根拠なくDV加害者にされてしまう恐ろしさは何ということかと問題になりました。
そういう話がなかなか日本に伝わらないのは日本の女性団体が動いていないからです。
あたりまえのことで女性団体やフェミニストがハーグ条約加盟反対に名を連ねていたのですから。

何度指摘しても国連人権なんたらという外圧を都合よく利用したがるんですね。
日本は長年国連に対しカネばかり出して、いつまでも常任理事国になれずロシア、中国という人権とかけ離れた国が常任理事国であり、上記の英米仏、また独も人権意識でまったく褒められたものではありません。
分かっていて国連にしがみついて外圧をお願いしている日本の左派弁護士や女性団体の情けなさは、どんどんバレてきていますがこれからさらに実体が広く認識されてくるでしょうね。
Posted by ヒラリー at 2015年08月22日 07:17
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