2015年08月23日

toujyouka016.jpg 家庭がいちばん恐ろしい

8月20日エントリ8月21日エントリの続き。
日本のDV被害の実態についての記事を見ていきたいと思います。

「3日に1人妻が殺される!日本のDVの実態」
(はてなブックマーク)

今回はつぎのくだりに注目したいと思います。
「家庭がいちばん恐ろしい」というお話です。
日本政府は、「すべての女性が輝く社会」をうたっていますが、
長年にわたりDV被害者支援に携わってきた私からみれば、
「女、子どもは家の中で殺されてもおかしくない社会」です。

 
家族がいちばん恐ろしいことを示すデータとして、
日本で検挙された殺人事件のうち、面識者である割合や
親族である割合が高いことが、つぎのエントリで紹介されています。

「殺人の半分が親族間で行われてる国で一家団らんとか夢見すぎ」

上記エントリでリンクされているつぎの資料に図が出ています。
2011年のデータは面識率が87.8%、親族率が52.2%です。

「第2章 殺人事件の動向」

2ー1−3図 殺人 被疑者と被害者との関係別検挙件数・面識率・親族率の推移

殺人事件全体のうち、身内に殺されるケースが半分以上ということです。
「殺人は身内の犯罪」と言っていいレベルだと思います。
残りの35%程度が「親族でない知っている人」が加害者です。
見ず知らずの人に殺されるのは10数パーセント程度にすぎないです。

「面識率」も「親族率」も1979年からほぼ一定と言えます。
よって最近の傾向ということではなく、むかしから殺人事件は
親族によるものが多かったということです。


こちらは国際統計ですが、全世界の殺人の犠牲者のうち
約15%がDVによることが、国連薬物犯罪事務所(UNODC)の
調査でしめされています。
そしてDVによる殺人の被害者のうち7割近くが女性です。
「家庭がいちばん恐ろしい、とくに女性にとっては」です。

「家庭がいちばん恐ろしい」
「世界の殺人犠牲者15%はDV 国連機関集計、12年」

国連薬物犯罪事務所(UNODC)は10日、
2012年に世界で起きた殺人事件で約43万7千人が犠牲になったと発表した。
うち15%の6万3600人が家庭内暴力(DV)の犠牲者で、
中でも女性が4万3600人と7割近くを占めた。


「女、子どもは家の中で殺されてもおかしくない」というのは
誇張ではなく、現状を的確に言い表していると言えます。
むしろ「家庭とはそういう危険なところ」という認識を
持ったほうがいいくらいだと思います。

家族から殺されることが多いことは、
少し考えれば納得できることかもしれないです。
家庭も一種の密室状態ですし、抜け出すことは困難です。
そうした中で終始顔をつき合わせています。
そしてメンバーどうしのヒエラルキーもはっきりしています。
力の支配も起きやすくて当然と言えます。


それにもかかわらず、「家庭の団らん」とか
「家庭のぬくもり」といった「幻想」が広まっているのは、
例の「家族思想」が「信仰」のようになっている人たちがいることも、
日本の場合は原因のひとつなのではないかと思います。

「信仰としての家族思想」
「信仰としての家族思想(2)」

「信仰」に沿った「正しい家族」であれば、
そこは暖かい理想の空間であり、DVのような家庭内の問題は
起きないはずとでも、彼らは信じているのだろうと思います。
そのようなかたは、じつは家庭こそ危険な場所なのだと、
認識を改める必要があると思います。

posted by たんぽぽ at 17:04 | Comment(4) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさん。
あまり家族や夫婦を理想的に語るのも良くないですが、その人が主張する「女、子供は家の中で殺されてもおかしくない」
というのは誇張ではないと、たんぽぽさんは見ていてもこれは完全に誇張です。
日本は殺人そのものが少ないですし。
そういう仕事をしているとそういう人ばかり見てるからそうなるんだと思いますね。

覚醒剤使用、依存症の人を見たり立ち直り支援をやっている人は、他人事でなく誰でも些細なきっかけで覚醒剤に手をだしたり溺れてしまう危険があると雑誌の取材などで警告しますね。
これは昔からそういうことが言われていますが、実際どうかと言えば覚醒剤なんてものにはめったに手を出さないし、私自身が真面目な人間でなくても覚醒剤の現物なんて見たこともないし、誰かにそそのかされたこともないです。
殺人の加害者も被害者も知人にはいないし日本ならそれが普通ですね。

近年、一人暮らしの大学生に対して親の仕送り額が減少傾向という記事がありますが、逆に言えば親以外に誰が学費や仕送りを出してくれますかという話ですよ。
子供なんて勝手ですからね。私なんかも反省してますが、学費とか日常でいろいろ親の世話になってるのに干渉はしないでくれという(笑)
そんな言い草なんて相手が親でもないと通用しませんね。
親に虐待されて逃げて保護され養護施設で育ちましたという人なら仕方ないですが、その場合でも日本に力と支援の思想があるから可能になることです。
またそういう人が家族なんてものは地獄で殺されてもおかしくないと考えたり、一般化して話を広めてますかね?
あくまでも自分はそうだったと個人論で述べる人が多いと思いますよ。
Posted by ヒラリー at 2015年08月24日 09:12
ちょっと極端じゃね?と言う危惧を持たれる方の気持ちもわからなくはないけれど、しかしデータという事実たるや、ですよ。
それでも結婚を続けるのか?と言いたくなりますが、経済的自立の困難さが女性の離婚を阻んでるんです。
このジレンマをどうしたらいいの?

たんぽぽさんが家庭はこわい,とあおった?ところで、日本は結婚帝国です。みんな結婚したい、結婚教です。婚姻率低下して矛盾してるけれど気持ちは結婚。結婚が幸せにしてくれると思ってる。
だから家庭に幻想抱いてるのは皆変わらない。

私は幸い夫とはDVはありませんけれど、私の親は仲が悪かったのでケンカばかり、時に母が血を流していたのをみて,自分と母の無力さを感じました。本当に家庭というところが嫌でした。家を出てからも、いつも母が心配でした。私には家庭というところが重荷でしたね。
Posted by うがんざき at 2015年08月24日 14:56
うがんざきさま、
このエントリにコメントありがとうございます。

最初のコメントような反応は、想定の範囲内ではあります。
家庭の危険性を指摘すると、反発する人は結構いると思います。
「家庭は暖かいところだ」と思いたい願望が、それだけ強いのでしょう。
そういう人が多いということが、DVの問題視を遅らせ
ひいては対応を遅らせることにもなるのだと思います。

「家庭のぬくもり」とか「家庭の団らん」を批判するのは、
まだまだ覚悟してかかる必要があると思います。
家庭は地獄だったという体験を語る人が少ないのだとしたら、
そういう発言は抑圧されるということだと思います。


>しかしデータという事実たるや、ですよ。

最初のコメントのかたは「自分が知らないから存在しない」
と言いたいもののようですね。
自分のせまい個人的体験だけで全体を語るのは、
社会問題に無理解な人にありがちなことだと思います。

「自分はそうだったと個人論で述べる人」は、
ほかならぬ自分だということに、最初のコメントのかたは
気がついたほうがいいと思います。


>たんぽぽさんが家庭はこわい,とあおった?ところで、

現実と乖離していて問題含みなのは、「家庭のぬくもり」とか
「家庭の団らん」に対する幻想ですからね。
そうした幻想から脱却するためにも、家庭は怖いということを、
強調したほうがいいと思います。

>私には家庭というところが重荷でしたね。

エントリでは殺人を挙げたけれど、殺人だけがDVではないですからね。
日本は自殺が多い国ですが、DVを苦に自殺する人は多いかもしれないです。

わたしも子どものころは問題家庭でしたし、
ご他聞にもれず、家族なんてとても苦痛でしたよ。
命にかかわる事態こそなかったけれど、
いま考えればDVと呼べる仕打ちは、たくさんありましたね。
Posted by たんぽぽ at 2015年08月24日 19:41
たんぽぽさんにペンネームでなく、最初のコメントのかた、という呼ばれ方になりましたね(笑)
DVに関して中学、高校とかそれ以上の年齢になっても娘さんだと不利ですね。
私なら父親がそんな男だったら張り倒しますから。別の女と再婚したらその部屋まで土足で上がり込んで慰謝料ぶん取ります。
それだと再婚相手も逃げるだろうし、警察呼んでも真剣に関わってくれる可能性も薄いでしょう。

高校の時、父親と激し言い争いとなり馬鹿らしくなって私は勢いよく立ち上がり外の空気を浴びようかと思いましたが、武道をやっていて父親より体も大きかったから、母親は勢いよく立ち上がった瞬間、私が父を殴るとでも思ったんでしょうね。
父の体の前に立ちふさがって、やめて!この人は私の大事な人だから、だって(笑)
見てるほうが恥ずかしくなるとはこういうことですよ。
ただ親の子供に対する虐待や夫婦間のDVだけでなく、子供による親への暴力もありますよね。
意外と大事に育てられて進学も経済的にも不自由させなかったのに何故?という場合も。
子供に殺される親も、親が暴力振るうから追い詰められた逆襲とも限りませんよね。
結局、親も子も夫婦も暴力に関して他人なら平手打ち一発で犯罪でも身内だから殺さなくとも出血するくらいの暴力は大丈夫という甘えがあるんでしょうね。
Posted by ヒラリー at 2015年08月24日 22:03
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