10代の出産の数が減っていないという記事です。
「「世界の性教育」日本はどのレベル? 少子化の陰で増える
「15歳未満の出生数」、深刻な問題も」
(はてなブックマーク)
「少子化の一方、減らない15歳未満の出生数...何が問題? 産婦人科医会調べ」
ここでは全体の妊娠数のうち、どれだけの割合が中絶したかをしめす
中絶率の年齢階層依存を見てみたいと思います。
中絶率が高いことは、望まない妊娠が多いことをしめすからです。
最初の記事に10代を1歳ごとにしめした表が出ています。
さらに前のエントリでしめした厚生労働省の人口動態の統計と、
衛生行政の統計を使って、20代以上の世代の中絶率もしめしました。
「平成25年(2013)人口動態統計(確定数)の概況」
「第4表 母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた出生数」
「平成25年度衛生行政報告例の概況」
「6 母体保護関係」
真ん中の世代が中絶率が低く、30代前半は9.1%で1割以下です。
この世代は子どもを作るつもりで性交することが多いし、
避妊に失敗しても、子どもを産み育てるだけの
経済的・社会的状況にあることが多いのもあるのでしょう。
40代になるときゅうに多くなり、40代後半は5割を超えています。
もう妊娠しないだろうと思って避妊しないでやったら
妊娠してしまったというケースが多いのでしょうか。
10代全体の中絶率は59.9%でほぼ6割と、40大後半より高い割合です。
さらに1歳ごとに見て行くと、年齢が若くなるほど、
きわだって中絶率が高くなっていきます。
とくに15歳は85%、15歳未満は86%ですから、これらの年齢は
妊娠したらほとんど中絶していると言っていいでしょう。
10代の妊娠はとくに若年になるとほとんど望まれないことが、
はっきりと示されています。
10代で出産するのは、経済的にも社会的にも難しいですから、
(15歳未満は中学生ですし)中絶率が高くても無理もないことです。
10代の中絶に関して、最初の記事でつぎの指摘もあります。
10代で中絶を行なうかたは、遅くなってからが多いということです。
中絶を行う妊娠週数は、20歳未満では他の年代に比べて
早期(妊娠7週以前)の中絶が少なく、中期以降の中絶が多い。
妊娠12週以降の中絶となると陣痛誘発など出産と同じで、
「若い人ほど体に負担の大きい中絶手術を受けていると言える」
これはつぎのエントリに、「平成23年度衛生行政報告例」の
「64 人工妊娠中絶件数,年齢階級・妊娠週数・事由別」という
表から作ったグラフがしめされています。
これを見ておくことにします。
「(未成年の)妊娠・中絶、資料編」
中絶全体のうち、妊娠12週以降の「中期中絶」の割合は、
20代以上はどの世代もほとんど5%程度です。
ところが10代後半は10.5%、15歳未満は20.9%となっています。
若年層は中絶を受けることが遅れることが多いということです。
10代で遅れ気味の中絶が多い理由は、つぎのようだとしています。
妊娠に関する知識がふじゅうぶんであることが原因です。
中期以降の中絶が多い背景には、「まさか自分が妊娠すると思わなかった」
「つわりがなかった」「膣(ちつ)外射精でうまくいっていた」
「月経中しか性交していなかった」「太ったと思っていた」など、
月経や妊娠に関する誤った知識や思い込みがあると分析する。
ほかにも妊娠に気がついても言い出しにくいとか、
経済的事情で病院に行けないということもあるでしょう。
前に「高校生が妊娠中絶するのは、世間が認めない」という
主旨のことを言った自民党議員がいましたが、
こういう考えの人も、10代のかたが妊娠中絶を受けるのを
遅らせることに一役買っていることと思います。
「高校生の産婦人科受診」
付記:
以下の資料に出ている、年齢階層別の妊娠中絶件数。
最近のものだけですが年次推移のデータがあります。
「平成25年度衛生行政報告例の概況」
「6 母体保護関係」