2015年09月21日

toujyouka016.jpg 22歳妊娠適齢説・図の由来

9月18日エントリ9月19日エントリの続き。

文部科学省の副教材に出てくる「22歳妊娠適齢説」の図は、
どこから出てきたのかという問題があると思います。
出典はオコナーとなっていますが、縦軸が「みかけの受胎確率」から
「妊娠しやすさ」に変わっているし、カーブの形状が違っています。

グラフの由来について調べたのがつぎの記事とまとめです。

「「妊娠のしやすさ」をめぐるデータ・ロンダリングの過程」
(はてなブックマーク)
「TANAKA Sigetoさんによる”「女性の妊娠のしやすさと年齢の関係」
文科省副教材”の出典検証と解説」

(はてなブックマーク)

 
現在見つかっている中で、最初に同様の図が登場するのは、
吉村泰典氏のブログの2013年6月25日エントリです。

「卵子の老化―続報― 女性の年齢と妊孕力との関係」

女性の年齢と妊孕力

ここに載せている図は、9月18日エントリでしめした、
出典がオコナーの1998年の論文となっています。
すでにここで縦軸は「妊孕力(にんようりょく)」という
生物学的能力となっていて、オコナーの論文の図にあった
「みかけの」という記述はなくなっています。

カーブのかたちはオコナーの論文に出てくる図のものと
同じではなく、小さめの値を取っています。
副教材に載った「妊娠しやすさ」の図
これとカーブが同じですから、ここから採ったらしいとわかります。
出典がオコナーとしておきながら、なぜにオコナーの論文と
カーブの形状が違っているのかはわからないです。

8月25日の毎日新聞を見ると、文部科学省の副教材用の
資料は吉村泰典氏が提出したとあります。
それで吉村泰典氏のブログの図が副教材に載ったのでしょう。

「文科省:妊娠副教材で誤った数値掲載」
グラフの資料は、内閣府の結婚・子育て支援検討会の座長を務めた、
吉村泰典・元日本産科婦人科学会理事長が、内閣府を通じて文科省に提出した。


オコナーの論文との図の違いについて、
吉村泰典氏はつぎのような釈明しています。
「誰が作製したのか分からない」し、ネットではなさそうですから、
出典を探すのはほとんど無理かもしれないです。

「産婦人科では長年広く使われてきたグラフ」というのは、
のっぴきならないことだと思います。
ウェブに載せられているものは最近のものばかりであり、
数もかなりかぎられているようです。
もちろんウェブ以外でずっと使われていた可能性はあるでしょう。

http://mainichi.jp/select/news/20150826k0000m040058000c.html
吉村氏は「誰が作製したのか分からないが、産婦人科では
長年広く使われてきたグラフだったので誤りに気づかなかった。
確かに誤りがあり遺憾だ」と話した。
両府省は「チェックがおろそかだった」と釈明した。


ほかに特筆することは、22歳のところに縦の破線が入っていて、
「もっとも妊孕力が高い」ことが強調されていることだと思います。
これもオコナーの論文の図にはなかったものです。
(「実際の受胎確率」を推測するための「みかけ」の値なのだから、
「みかけ」のピーク値をしめすことに意味はない。)


付記:

2006年に産科婦人科学会が、事実婚夫婦にも体外受精を認めたときに、
わたしのブログで吉村泰典氏について取り上げていました。
「このかたは事実婚や婚外子に対する理解が薄い」
という主旨のことを、わたしは書いていました。

「事実婚にも体外受精」
「事実婚にも体外受精(2)」

2014年に体外受精を非婚の親でも認めるようになったときも、
吉村泰典氏のコメントを引用しています。

「未婚親の体外受精容認」

posted by たんぽぽ at 20:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 疑似科学(にせ科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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