2015年10月10日

toujyouka016.jpg 予定外だった難民の質問

ニューヨークで行なわれた国連総会の内外記者会見で、
「日本はシリアの難民を受け入れるのか?」と訊かれた
安倍首相が「難民より女性と高齢者の活用がさき」という、
ピントのずれた回答をしたことを、お話しました。

「難民より女性活躍がさき?」

この「難民受け入れ」の質問はじつは予定外のものだった、
という裏話があったのですよ。

「米記者から「出来レース」批判された安倍首相国連会見」

(はてなブックマーク)

 
「もう1つ、質問が有る。あなたはシリアの難民問題で支援を表明したが、
なぜ難民を受け入れないのか?」

ロイター通信の記者がこう質問すると、
通訳を通して質問を理解した安倍首相の表情が強張った。
実は、その質問に慌てたのは安倍首相だけではなかった。
会見場にいた日本人記者全員が「予定外」の質問にざわめきたったのだ。

難民のことを訊かれて人口政策についてお話するという
ピントのずれた回答をしたのは、予定外のことを質問されたので、
あわてて言い繕ったため、ということもあったもののようです。


記者の質問なんて、全部その場で初めて発せられるもので
「予定外」ではないのか?とお思いのかたもいると思います。
ところが安倍首相に対する記者会見はそうではなく、
だれがどんな内容の質問をするのかあらかじめ決めて、
質問内容まで事前に提出させるという習慣になっているのでした。

(例のロイターの記者にも、あらかじめ質問内容の提出を
させたのでしょうが、それに続けて難民受け入れについての
予定外の質問をしたということだと思います。)

アイ・アジアが入手した首相官邸の資料や取材に応じた
アメリカ人記者の話によると、この会見では、質問者も質問内容も
予め決められていたのだ。つまり、出来レース会見だったのである。
日本のメディアの記者と外国メディアの記者が交互に、
5人まで質問することが決まっていた。極めて興味深いのは、
その資料には、質問者の名前とともに、質問内容まで書かれていたことだ

日本の報道の自由度は、安倍政権になって急激に低下していますが、
こんな取材をやっていれば、無理もないことだと言えます。

「報道の自由度で米国が49位に後退、日本は61位」



もちろん他国のマスコミにはこうした習慣はないです。
こんな「出来レース」会見なんて、権力による「検閲」ですし、
記者の倫理にも違反することです。
安倍首相の会見を初めて見たアメリカ人の雑誌記者は、
驚きかつあきれるのもごもっともだと思います。
(日本人でも初めて知ったかたは驚きあきれるのではないかと思います。)

「質問事項をあらかじめ提出しろということですから驚きました。
そんなことは、アメリカでは記者倫理に違反する行為です。
ところが、それは日本の政府と記者との間では
常に行われていることだというではありませんか。
本気かよ?と思ったのは私だけじゃありませんよ」
「アメリカで今、日本のメディアは安倍政権に牛耳られていると
報じられているのを、日本の記者たちは知らないのでしょうか?
記者会見というのは市民を代表してジャーナリストが権力者に挑む場だというのは、
アメリカにおいては一般の人も知っている常識です。
しかし、残念ながら、日本の権力者の会見はそうではなかった。
質問内容は権力側が予め検閲し、その答弁は予め準備されており、
会見はその通りに行われる...ちょっと信じられません」


これについてわたしが思うことを、前にもお話したことがあります。
日本のマスコミは、政府から与えられる情報を
右から左へと一般市民に伝えることが、自分たちの役目だ、
とでも考えているのではないかということです。

「日本のマスコミの体質」

政府が与えない情報を積極的に取材して、一般市民に向けて
「真実」を伝えることがジャーナリズムの役目だ、
という意識がとぼしいのではないかと思います。

それで外国人記者がびっくりするような「出来レース」取材でも、
それに甘んじていられるのではないかと思います。
政府に都合のいい取材をしていたほうが、
「政府から与えられる情報」はかえって得やすいでしょう。

問題の難民受け入れの質問が出たとき、
「会見場にいた日本人記者全員が「予定外」の質問にざわめきたった」
というのですから、かかる「出来レース」取材に、
日本のマスコミはそれだけ慣れ切っているということだと思います。


「「アメリカで今、日本のメディアは安倍政権に牛耳られていると
報じられているのを、日本の記者たちは知らないのでしょうか?」とも、
さきのアメリカ合衆国の雑誌記者は述べています。

いくらなんでも知っているだろうと、わたしは思いますよ。
現状に安住したいので、あえて聞き流しているのではないかと、
わたしは想像します。


こういう調子であれば、「難民より女性と高齢者の活用がさき」
という安倍首相のピントのずれた回答について、
日本のマスコミが報道することはないだろうと思います。

安保法案の成立後、ニューヨークで国連総会に出席した安倍首相。
帰国前に現地で記者会見を開き、国連の安保理常任理事国入りに
言及したことなどが日本でも華々しく伝えられた。
しかし、その会見をめぐって外国の記者から強い批判が
浴びせられたことは、日本では伝えられていない。

日本のマスコミは、安倍首相に対して「出来レース」取材を
やっているなんて、おおっぴらに知られたくないでしょう。
質問のやりとり自体が、安倍政権や安倍首相にとって
都合が悪いものなので触れないでおきたいのもあると思います。

難民受け入れの質問をしたロイターの記者は、
このかたなりにジャーナリズム精神を発揮したのだろうと思います。
よくぞ訊いてくれたと、わたしは思います。

posted by たんぽぽ at 16:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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