2015年10月17日

toujyouka016.jpg あなたは父親を超えたか?

「国勢社会調査プログラム」(ISSP)という組織が
2009年に「職業と社会に関する国際比較調査」を行なっています。
ここに「あなたは父親を超えたか」について訊く質問があります。
これを見てみたいと思います。

記事は本川裕氏の『社会実情データ図録』(ガジェット通信に寄稿)と、
舞田敏彦氏の『データえっせい』です。

「あなたは自分の父親を越えられたか」
(はてなブックマーク)
「父親を超えられない社会」
(はてなブックマーク)

 
質問内容は「現在のあなたの仕事の社会的な位置づけは、
あなたが15歳のときの父親の仕事と比べてどうですか」で、
「1.自分のほうがかなり高い」「2.自分のほうが高い」
「3.だいたい同じくらい」「4.自分のほうが低い」
「5.自分のほうがかなり低い」「6.自分は仕事をしたことがない」
「7.父親はいなかった、父親は仕事をしていなかった、父親の仕事がわからない」
の7つの選択肢があります。

1.と2.は地位が上がった、3.と4.は地位が変わらない、
5.と6.は地位が下がったとして集計します。


回答者全員の国別の統計を見てみます。
調査は成人男女(日本は16歳以上)を対象にしています。
これを見ると日本はかなり悲観的な状況であることがわかります。

あなたは自分の父親を超えられたか(2009年)

日本は「父親より仕事の地位が上がった」と答えたかたが30.6%で、
調査対象国の中では、アイスランドについで下から2番目です。
さらに「地位が下がった」と答えたかたが39.4%もいて、
調査対象国の中でいちばん多く、しかも飛び抜けています。


さらに回答者を30代の男性にかぎると、こうした悲観的な状況は
日本だけの特異な状況であることが、さらにきわだってきます。

今の仕事の地位レベルは、14〜16歳の頃の父と比べてどうか?(30代男性の回答)

今の仕事の地位レベルは、14〜16歳の頃の父と比べてどうか?(30代男性の回答)

日本で「父親より仕事の地位が上がった」と答えたかたは、
わずか14.6%で、ほかの調査対象国と比べて群を抜いて少ないです。
そして「地位が下がった」と答えたかたは60.7%です。
こちらは群を抜いて多くなっています。

中高年層が社会に出たのは冷戦崩壊かそれ以前ですから、
現在と比べて社会や経済情勢の変化が大きいです。
女性は進路選択の自由度が制限されがちですから、
ジェンダー差別がどれだけ改善したかに依存する部分が大きいでしょう。
したがって30代の男性に回答者をかぎると、
現在の社会・経済情勢をより純粋に反映すると考えられます。


日本は他国と比べて、なぜかくも「父親を超えられない、
父親より地位が低下した」というかたが多いかですが、
とりもなおさず「失われた20年」の結果だと思います。
この調査は日本の経済や社会が、それだけ凋落していることの
反映と考えられるということです。

http://tmaita77.blogspot.jp/2015/10/blog-post_8.html
日本の状況が,90年代以降の「失われた20年」の産物であるのは明らか。
若者に過重な期待をしてはいけない,自分たちと同じ人生行路を彼らが
歩めると思ってはいけない。上の世代は,この点を自覚すべきでしょう

これを見て対称的と思ったのは、高度経済成長期です。
このころは日本の経済は成長を続けていたので、
子どもが親の生活水準を超えるのは容易でした。
それゆえほとんどの男性は、女性を「玉の輿」に乗せられて、
異様に低い未婚率を実現することになったのでした。

「非婚・未婚と経済問題」
「未婚率が低かった時代」


現在は、子どもが親世代の生活水準を超えることが難しく、
女性を「玉の輿」に乗せられるだけの経済力を持った男性は、
なかなかいないことになります。

女性にとっては「結婚すればいい暮らしができる」という
経済的インセンティブがなくなるわけで、あえて望まない結婚をする
理由がなくなるので、結婚しない女性が増えることになります。

男性はいまだに高度経済成長期の結婚観や家族観に
とらわれる人が多いらしく、経済的インセンティブが
与えられなくなった現在もなお、ふつうに仕事をしていれば、
容易に結婚できた時代をよかれと思うのか、
未婚男性の不幸感が突出して高くなるのでした。

「日本の未婚男性の不幸感」

さらにこれをこじらせると、結婚できない自分に被害者意識を持ち、
「高収入女は自分を養え」などと絡んで来る
「きもくて金のないおっさん」になるのでしょう。

「きもくて金のないおっさん」


「父親を超えられるか」の調査の国際比較を見ると、
中国の結果は日本と対称的です。
30代男性にかぎると「父親より地位が上がった」が
69.8%もあり、調査対象国の中では最高です。
「地位が下がった」はわずか10.4%しかないです。

成人男女全員を対象にするとさらに顕著となり、
「地位が上がった」が72.1%、「地位が下がった」は8.6%です。
中国は現在経済発展が続いているので、
子どもが父親より生活水準が高くなることが容易なのでしょう。
高度経済成長期の日本と同様の状況なのだと思います。

日本の対極にあるのが中国です,30代の7割が「父を超えている」と思っています。
勢いありますものね,この国は。

韓国は「地位が上がった」も「地位が下がった」も
調査対象国の中では中程度で、とくに突出はしていないです。
欧米の民主主義国と比べても同水準です。
「父親を超えられるか」に関しては、
韓国は日本と同レベルにいるのではないということです。


ほかの調査対象国はほとんどが
「地位が上がった>地位が下がった」となっています。
こうして見ると多くの国では、まがりなりにも再分配機能や
教育の機会均等が整備され、子どもが親の生活水準を
超えられる社会になっているのだろうと思います。

そう考えると「地位が上がった」がきわめて少なく、
「地位が下がった」が飛び抜けて多い日本は、
「失われた20年」に対して効果的な対策を採れないまま、
ずっと来ているということにもなるでしょう。

posted by たんぽぽ at 16:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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