公務員の給与を2割削減することを明記したというニュースが、
ちょっと話題になっていました。
「民主・維新、参院選で共通公約 公務員給与2割減、明記へ 安保法は「廃止」」
「民主・維新、参院選で共通公約 公務員給与2割減、明記へ 安保法は「廃止」」(全文)
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「池田香代子氏も「しっかりして、民主党」と呆れる
「民主・維新が参院選公約で公務員給与2割減明記」に対する反応集」
(はてなブックマーク)
いまだに「身を切る改革」と言って、「公務員たたき」をすることが
有権者に受けると思っているのかと思います。
それともこれらが受ける有権者は、まだたくさんいるのでしょうか?
この期におよんで給与を削減をしたら、ますます消費が落ち込んで
デフレが進行することなるでしょう。
日本経済が停滞してデフレが続いているのは、政府による税金の取り過ぎと、
企業が給与の抑制のし過ぎが、大きな原因だからです。
(6月26日エントリで少し触れた。)
「日本ではピケティでr>gより大事なこと」
日本経済は、企業が従業員給与を抑制し過ぎ(新自由主義の蔓延)、
政府が税金を取り過ぎ(財政再建至上主義の蔓延)、
その結果お金が回らないデフレとなって、国の経済全体を縮めているという
まったく馬鹿げた状態と言えるでしょう。
民主党の「福祉国家の4K」政策が根付かなかったのは、
デフレ続きで財源が確保できなかったことが、大きな原因のひとつです。
安倍政権の支持率が高いのは、金融緩和によって
デフレから脱却して、まがりなりにも雇用を増やしたからです。
ここへ来てわざわざデフレを誘う政策を公約にするのは、
どういうつもりなのかと思います。
こんな調子で民主党は政権を取れるのか、
取ったところでまともな政権運営ができるのかと思います。
デフレから脱却するなら、公務員の給与を増やす必要があるくらいです。
格差研究のピケティは、はっきり公務員の給与を上げよと言っています。
「維新の看板政策でもある「身を切る改革」を民主党が受け入れ、国家公務員の給与の2割減を明記する」民主党ピケティに話聞いたんじゃなかったの。ピケティが提案する最も簡単な脱デフレって公務員の給料↑よ http://t.co/L1HatwW79S
— You-meとかU-meとかそういうの (@anatawatashihtn) 2015, 10月 5
このあたりは2月1日の日本経済新聞『日曜に考える』に、
ややくわしく述べられています。
「資本主義を生かすために 富の透明性高め格差縮小」
これはインフレの必要条件だが、十分条件とはいえない。
お札を刷るだけでは、消費や設備投資に回る保証はない。
消費者物価の上昇だけでなく、資産インフレを招きかねない。
安倍政権の経済政策『アベノミクス』は
株式や不動産のバブルを生むリスクをはらんでいる。
肝心の物価の上昇を実現するには、金融を緩和すると同時に
賃金の上昇を果たす必要がある。
もしデフレに終止符を打ち、インフレに転換したいなら、
政府は民間の後を追うのではなく、率先して公務員の賃金を上げるべきだ。
消費税増税の分を除いた消費者物価上昇率が1%を
下回っているというのはやはり低い。思い切った措置が必要だろう。
民間企業の賃金は各企業が独自に決めるので、
政府が直接的に決められる公務員の給料ということになります。
公務員の給料が増えれば、求人が公務員に増えるので、
人材確保のために民間が給与を引き上げることも、
期待できることになります。
給与を引き上げれば、購買力が増えて消費が増えて
お金が回るようになるという、直接的な効果はもちろんあります。
ほかにインフレの効果が株式や不動産に集中して、
それこそお金持ちだけが恩恵を受ける事態を避けるため、
社会全体に富が分配されるよう、賃金を引き上げる
ということもあるということです。
「ピケティの主張は、公務員の給与が安い
欧米の民主主義国の常識にもとづいている、
日本の公務員は給与が高いからそのかぎりでない」と
お考えになるかたもいるかもしれないです。
そこで日本の公務員と民間との年収は、どれくらいかを見ることにします。
ひとつ目の図は民間と公務員の両方をカウントしています。
ふたつ目の図は公務員にかぎっています。
「男女&雇用形態別年収分布」
正規・非正規の年収曲線。雇用形態の差と同時に,正社員のジェンダー差にも注目。これ,調査法の学生さんに計算させたんだけど,憤りの感想が多かった。 pic.twitter.com/XC6tgbqBwN
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2013, 12月 23
公務員の正規・非正規の年収曲線。公務員の場合。正規職員のジェンダー差は相対的に小さい。ただ,正規と非正規の差が際立っている。 pic.twitter.com/YxuUFapaL4
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2013, 12月 23
これらを見ていると、女性と高齢者は公務員は民間より
ずっと年収が高い(というより、民間がかなり低水準)と言えます。
それ以外の男性労働者は、公務員が民間と比べて
格段に年収が多いというほどではないと言えます。
これくらいならピケティの主張通り、公務員の給与の引き上げは、
デフレからの脱却にじゅうぶん効果的と思います。
非正規雇用は公務員も民間もほぼ同じくらいの低年収です。
それでピケティの主張を推し進めるならば、
非正規雇用の給与を引き上げるのがよいと、わたしは思います。
非正規雇用は見てのとおり、異様な低年収に抑えられていて、
給与を上昇させる余地が大きいからです。
「公務員たたき」が好きな人たちも、非正規雇用の給与を
ある程度引き上げるなら、文句は言わないだろうとたぶん思います。
そしてなにより、非正規雇用の人たちの現状を考えれば、
彼らの給与を引き上げることは、かなり直接的に
格差の解消につながることになるからです。