2015年11月04日

toujyouka016.jpg 民法改正運動・歴史と現在

民法改正の訴訟の最高裁での弁論があることを受けて、
朝日新聞が民法改正とくに夫婦別姓についての記事を載せています。
かなり気合いの入った記事となっています。

ひとつ目の記事は1ページ全部を使っています。

「どうして夫婦同姓なの 民法の規定、最高裁が初の憲法判断へ」
「どうして夫婦同姓なの」(全文)

もうひとつは、旧姓の通称使用について取り上げた記事で、
やはり1ページの大半を使った大きなものです。

「旧姓使用、広がった一方で 「夫婦同姓」規定、最高裁憲法判断へ」
「旧姓使用、広がった一方で 「夫婦同姓」規定、最高裁憲法判断へ」(全文)(1/2)
「旧姓使用、広がった一方で 「夫婦同姓」規定、最高裁憲法判断へ」(全文)(2/2)

 
女性の地位向上と活躍

夫婦別姓についての世論調査の結果/ 各国の夫婦の姓

国家資格と旧姓使用


記事の最初はこんなことが書いてあります。
「女性の活躍推進をうたう政府は、国際社会から改善を
求められても夫婦別姓を認めない。
歴史を振り返り、世論の動向や各国の仕組みを紹介する。

安倍政権がかかげる「女性活躍」とか「女性が輝く」と
選択的夫婦別姓を認めないことは、矛盾するということは、
繰り返し言及してよいでしょう。
選択的夫婦別姓を認められるかどうかが「試金石」だ、
というご指摘もあるくらいなのですから。

「首相周辺「女は家に」 「選択的夫婦別姓」試金石に」


>明治 当初は別姓だった

最初に明治から敗戦直後までの歴史に簡単に触れています。
わたしのサイトでも、つぎのコンテンツで触れていることです。

「夫婦同姓は日本の伝統?」
「戸籍を守る反対派」
「現行法は男女どちらの姓も選べるから平等?」

明治の始め、国民全員に名字と戸籍を持たせたときは、
原則的には夫婦別姓だったのでした。
「名字は出自を表わす」という考えだったからです。
「名字は家の名前」と見解が変わっていくのは、
ヨーロッパ諸国の民法典を研究していく過程においてです。

夫婦同姓で夫の名字を名乗ることを定めた、
明治民法が成立したのは1898年ですが、明治32年ですから、
明治のかなりのほうになってからだと言えます。

戦後改革で制定された新民法では、男女どちらの名字でも
選べるけれど夫婦同姓、ということにしたのでした。
そうすれば、GHQに対しては男女平等な民法だと言えるし、
現実には当時の社会通念から、ほぼ確実に妻が
改姓することになると考えたからです。
このもくろみは当たったことは、言わずもがなでしょう。

「選択的夫婦別姓のまとめ(10)」
「夫婦別姓制度が必要なワケ(3)」


>1996年 改正議論進んだか

つぎに1996年の法制審議会の答弁以降のことに触れています。
敗戦後の新民法から法制審議会までのあいだに
言及することがないわけではないですが、
紙面の都合で一気に現在の民法改正運動に飛んでいますね。

法制審議会の民法改正法案のあと、
自民党政権ではとうぜんのように実現しなかったこと、
そして政権交代して民主党政権になっても
実現しなかったことに触れています。
このあたりはリアルタイムで見てきたことです。

女子差別撤廃委員会から勧告を受け続けていることにも、
結構言及があります。
女性差別撤廃条約は、姓を選択する権利を確保するよう求めており、
日本は国連から何度も改善するよう勧告を受けてきた。
国連の女性差別撤廃委員会委員長を務める
林陽子弁護士は「どちらかの姓を選ぶと言っても、
96%が夫の姓というのは事実上の女性差別。
『失われた20年』に対する最高裁の決断は、
国際的にも注目されている」と話す。


女子差別撤廃条約の16条の1-g.項は、
「夫及び妻の同一の個人的権利」に名字を含むことを、
はっきりと書いています。
名字のことはそれだけ重要だということなのだと思います。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3b_004.html
第十六条
1. 締約国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について
女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、
特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
g. 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)

法制審議会の答弁が1996年ですから、来年でちょうど20年です。
『失われた20年』というのは、まったくその通りですよ。
「失われた20年」は家族法の世界にもあったということです。

国連の勧告にも記述が取られているのは、とても結構だと思います。
わたしとしては、女子差別撤廃委員会からは、
「世論調査を理由にするな」と言われていることにも、
言及があればよかったと思います。

「差別的法規」

また、世論調査の結果ばかりを理由にしてはならず、
法体系の一部として、条約の条項と整合が取れるよう、
国内法を整備しなければならないこと、したがって民法改正は、
条約に批准した国が義務としてなすべきである、ということを、
委員会は指摘しておきます。


>義務づけ「日本だけ」

国際比較についても紙面を割いています。
世界のほとんどの国では夫婦別姓が認められること、
そして同姓が強制されるのは日本くらいだというお話です。

「世界の夫婦別姓」

法務省によると、2010年に主要各国に問い合わせたという。
同年に衆院調査局がまとめた資料によると
とあります。
これは9月26日エントリ9月27日エントリでご紹介の、
時事通信の記事でも紹介されていた資料のことですね。

「夫婦同姓、厳しい国際世論=国連、法改正を勧告」

同姓強制の例としてジャマイカが出ています。
中米のジャマイカは夫の姓にする「同姓」だが、
法律の定めではなく慣習的なものだという。
中国や韓国は別姓で、結婚しても姓は変わらない。
フランスも別姓だが、妻は夫の姓を名乗ることも認めている。

トルコやタイはかつて、妻が夫の姓に変わると定めていた。
トルコは02年に法改正し、妻は「結合」姓も選べるようになった。
タイも05年に法改正で別姓が認められた。


posted by たんぽぽ at 21:26 | Comment(8) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
細かいところですが、Wikipediaをはじめとして、中国は同姓・複合性とも選択可能、というのをそこかしこで見かけるのですが、どうなのでしょうね。
もちろん、「基本的には」別姓なのは間違いないですが。
Posted by 魚 at 2015年11月05日 02:14
姓の認知が広まってきたと思いきや、2012〜2013年頃はデータをよむと、結構保守化していて世相や経済状況を反映しているんでしょうか。
女性の活躍の歴史はいいんですけれど、一芸に秀でた有能な女性と、一般女性の地位向上は比例してるとは実感しにくいんでしょうね。また夫婦別姓って社会的地位のある人だけのものではないはずですし、そこをフォーカスしすぎると反感買うのかなあ、と、気になるところではありますね。 

朝日とってますけど、全くこの記事しりませんでした。。(読んでない)。
確かにここにきて注目高まってますよね。
今朝もワイドショーのビビットで、夫婦別姓が扱われてました。3〜4分かなぁ。別姓どう思う?という街頭インタビューの紹介。半々ですね。
ゲストの千原ジュニアは「最近結婚したけどそんなこと考えたことない」。司会の真矢みきは「夫婦の一体感がねぇ…」と、なんやねん、ゲーノー人のこの浅い意見は。
するとコメンテーターの女性が突然早口でまくし立てました。「要は価値感なんですよ!インタビューでもそれぞれ価値感が違うでしょう!価値感が違うのに、法律で一つに押しつけるからいけないんですよ。真矢さんだって芸名は結婚してもかえていないからいいわけでしょ!!!」
声のデカい人の意見は強し。真矢みき呆然。そこで打ち切りとなって次のニュースに移りました。
仮にどう理性的にぎろんがかわされようとも、すべては判決次第かなと思います。
Posted by うがんざき at 2015年11月05日 13:17
魚さま、おひさしぶりです。
このエントリにコメントありがとうございます。

>中国は同姓・複合性とも選択可能、というのをそこかしこで見かけるのですが、

それはわたしにもわからないです。
たぶん選択はできるけれど、選ぶ人がほとんどいない、
ということではないかと思います。
名字が変わるのはふつうに不便だろうと思うので。

婚姻法が何回か改正されて、男女平等の見地にもとづく夫婦別姓と
意味付けが変わってきたことは、ちょっと調べると出てきますが。
http://lacrima09.web.fc2.com/teardrops/against/jukyou.html
Posted by たんぽぽ at 2015年11月05日 21:37
うがんざきさま、おひさしぶりです。
このエントリにコメントありがとうございます。

>2012〜2013年頃はデータをよむと、結構保守化していて
>世相や経済状況を反映しているんでしょうか

記事ではなぜか抜けているけれど、2007年にも世論調査があるのですよね。
このとき賛成が36.6%、反対が35.0%でした。
http://lacrima09.web.fc2.com/teardrops/movement/survey2007.html

2001年のときからは後退していて、
第一次安倍政権のときなので、世相の反映だと思います。
自分で考えないでまわりに流される人も多かったようです。
========
社会が混沌として情報があふれすぎて、何が善か悪かも
分らなくなっている現代では、何事を判断するにも
自分の周りのごく身近な基準に帰着するようになっています。
そういう傾向が、今回の調査結果にも影響しているのかもしれません
========

2012年は民主党政権だけど、チキンの民主党は
民法改正の実現なんで、ぜんぜん問題にしなくなって、
話題性もなくなっていましたからね。
それで夫婦別姓に関心を持つ人が少なくて、
あまり理解が広まらなかったのかもしれないです。

2001年に賛成が増えたのは、議論がさかんだったからで、
それなりに話題になれば認識が増える
ということではあるのかもしれないです。


>女性の活躍の歴史はいいんですけれど、

なんか、大きく出ましたよね。

>そこをフォーカスしすぎると反感買うのかなあ

それはたまに指摘するかたがいますね。
でも実際にその理由で反感を買ったお話を聞かないので、
実際に顕在化するほどある意見なのかどうかは、
わたしにはわからないです。


>朝日とってますけど、全くこの記事しりませんでした。。(読んでない)

わたしのブログで確認できてよかったのかな?

>なんやねん、ゲーノー人のこの浅い意見は

これはかなりお粗末ですね。
この問題を考えたことがない、ということかもしれないです。

芸能人の意見と言えば、こんなのもあったけれど。
http://bit.ly/1MjLdJA

>コメンテーターの女性が突然早口でまくし立てました

その女性はとてもよかったです。
時間が間に合ったのもよかったです。


>どう理性的にぎろんがかわされようとも、すべては判決次第かなと

違憲判決が出ない可能性を考えると戦々恐々としています。
http://bit.ly/1MBesmU

1審、2審と原告が棄却されて、それで大法廷回付なので、
最高裁ではわざわざ1審、2審と同じ判決を
言いわたすためではないと、思いたいのではありますが。
Posted by たんぽぽ at 2015年11月05日 21:42
中国の場合、婚姻しても婚姻前の姓名をそのまま引き続いて使用するのが一般的で、婚姻して姓を変える人はほとんど見かけません(私は見たことがありません)(これは歴史的な伝統のようですね)。
理由があれば姓名は変えることができるので、結婚を理由として夫婦同姓にしたり複合姓を作ったりすることも可能なのでしょう。あるいは、一方もしくは双方が少数民族(非漢民族)の場合、夫婦同姓にすることがあるのかもしれません。

ただ、複合姓と聞くと、生まれてきた子どもの姓を、父母双方から1文字ずつ取って2文字の姓にするというケースの方が思い浮かびます。

ちなみに日本でも、婚姻時に夫婦双方の姓を複合した新姓を作った人がいましたね。
Posted by Eric Prost at 2015年11月06日 20:42
たんぽぽさん

丁寧にお返事ありがとうございました。新しいエントリーでも世論調査についての考察、なるほどと思います。サンプルの年齢分布というのは重要なポイントかも。直接面談となると、こんなにも偏るのかと唖然としました。
また、賛成反対の微妙な変化は、この流されやすい人達、がKEYで、世相を反映しやすい。こういう人達は、今後判決によって、また、大きくブレるでしょう。自分の中に論拠がないんですから。

とはいっても、推進派についてもどうなんだろう、ここ10数年見てみると、別姓に関するサイトがトーンダウンしているような気がするけれど、私が知らないだけかな?たんぽぽのなみだだけが変わらず頑張ってるように思います。
ちょっとあきらめが増えてきちゃってるのかと。つまり民法が改正になる、と期待してきたのに、自民じゃ無理、が、民主党になっても無理ですもんね。

そんな中でこの裁判の原告には頭が下がる思いですが、判決については、期待する部分もあったり、悲観的に思う部分もあったり。合憲となったときのダメージは別姓推進派には大きいでしょう。世論が大きく保守化しそうな気配。こんなふうになるぐらいなら裁判なんてしないほうが良かったんだ、なんてなりそう。
まあどうなろうとも、私は自分の姓を維持する生活は変わらず続けるわけで、夫姓を通称使用しなくてはならないシチュエーションも変わらず多く、なんだかなあという現実を続けるわけで。

>芸能人の意見と言えば、こんなのもあったけれど。
http://bit.ly/1MjLdJA

笑っちゃいました。鈴木奈々。おバカ?と言いたくなるけれど、一般人の本音というのはこんなものかもしれません、口に出さないだけで。(そこに愛があるのか?って、おまえさん、愛が未来永劫とでも本気で思ってんのかいと突っ込みたくなるが(笑)。)
ただこういう人こそ、思いっきり、賛成派にガラっと変わったりするものですので、今後の彼女の動向を楽しみにしています。
それにしても最近のワイドショーは司会者を安易にタレント起用しすぎていて、今回のビビットの真矢みき、国分太一など、浅さが露呈して、アカンなあと思うのです。芸能で生きてきた人だから仕方がないけれど残念ながら物を知らなすぎるし、司会者というのはもう少し中立という立場にもいないといけませんしね。


Posted by うがんざき at 2015年11月07日 03:38
Eric Prostさま、すごいおひさしぶりです。
コメントありがとうございます。

中国の事情についてコメントくださりありがとうです。
やはり結婚改姓するかたはほとんどいないのですね。

>理由があれば姓名は変えることができるので、

できることはできるのですね。

>あるいは、一方もしくは双方が少数民族(非漢民族)の場合、
>夫婦同姓にすることがあるのかもしれません

その民族特有の名字の習慣がある少数民族が
結婚して夫婦同姓にするということかもしれないですね。


>ちなみに日本でも、婚姻時に夫婦双方の姓を複合した新姓を作った人がいましたね

これは寡聞にして初耳です。
でもちょっと調べたけれどわからなかったです。

家庭裁判所への申し出が必要ですが、
日本でも名字を変えることはできますね。
その理由や契機が結婚ということはありそうですね。
http://fb-hint.tea-nifty.com/blog/2005/01/post_13.html
Posted by たんぽぽ at 2015年11月07日 09:55
うがんざきさま、またまたコメントありがとうございます。

>直接面談となると、こんなにも偏るのかと

もっと容易に回答できないと、一人暮らしで昼間だれも
家にいない家庭とか、回答しにくくなりますよね。
2007年の世論調査が「手抜き」だったのは、
あまりやる気がなかったけれど、やると約束していたので
「ノルマ消化」という感じだったからだと思います。

>こういう人達は、今後判決によって、また、大きくブレるでしょう。
>自分の中に論拠がないんですから

まわりや多数派を見て決めるということですね。
自分に論拠がないなら、自分の意見など持たずに
保留にしておけばいいのにと思います。


>ここ10数年見てみると、別姓に関するサイトが
>トーンダウンしているような気がするけれど、

めっきり減ったと思いますよ。
(わたしも知らないのかもしれないけれど)。

いちばん華やかだったのは、ブログがはやり出した
2004-05年ごろだと思います。
郵政選挙で民主党が大敗して、民法改正の雰囲気がなくなって
きゅうにブログを書く人が減ったと思います。
民主党が政権を取る2009年ごろは、ブログ自体がはやらなくなりましたね。

>たんぽぽのなみだだけが変わらず頑張ってるように思います。

気がついたらここまで来ていたという感じですね。
たいして人気があるブログでもないのに、
よく続けていると、自分でも思います。

>そんな中でこの裁判の原告には頭が下がる思いですが、

別姓訴訟は2011年2月ですが、とうぜんもっと前から準備していたわけで、
民主党政権でも実現は無理とすぐに見切りを付けて
べつの手段に移ったのはとてもよい判断だったと思います。
http://taraxacum.seesaa.net/article/179522069.html


>一般人の本音というのはこんなものかもしれません、

ある程度以上この問題について考えたことがないと、
ちゃんとした意見は持てないのでしょうね。
鈴木奈々はぜんぜん考えたことがなかった人
だったのかもしれないです。

>(そこに愛があるのか?って、おまえさん、愛が未来永劫とでも
>本気で思ってんのかいと突っ込みたくなるが(笑)。

そうそう。
それは夫婦別姓でも夫婦同姓でも関係なく同様ですね。

>最近のワイドショーは司会者を安易にタレント起用しすぎていて

あえて無知な芸能人を登場させて、エンターテイメントをはかる
というシチュエーションではないでしょうしね。
ワイドショーでもテレビですから、それなりに影響力はあるわけで、
そのあたりともっと考えてほしいものだと思います。
Posted by たんぽぽ at 2015年11月07日 18:48
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