2015年11月19日

toujyouka016.jpg とある左派の経済政策観?

10月30日10月31日11月14日エントリで、
政策実行のために金融緩和が重要であることを解説する、
松尾匡氏の記事を見てきたのでした。

「左派こそ金融緩和を重視するべき 松尾匡・立命館大教授」
(はてなブックマーク)
「左派こそ金融緩和を重視するべき 松尾匡・立命館大教授(朝日新聞デジタル)」

この記事をごらんになって、つぎのエントリを書いたかたがいます。
経済政策に理解の薄い「左派」のひとつの見本かもしれないです。

「これでは左派が支持しないのは不思議でもなんでもないのでは?」
(はてなブックマーク)

 
タイトルがすでに
これでは左派が支持しないのは不思議でもなんでもないのでは?
ですし、本文中でも、
しかし特に経済学に詳しいわけではない左派が
金融緩和の意義を素直に納得できる状況にない、
ということも率直に認めるべきではないのでしょうか?
と書いています。
そんな「悠長」なことを言っている場合ではないと、わたしは思います。


左派諸氏ももっと積極的に金融緩和の意義を理解して、
効果的な経済政策を打ち出せるようにするところだと思います。
有権者は「食いぶち」を提供する政権・政策を支持するからです。
それはこのブログの12月8日エントリでお話した通りです。

「経済政策と支持の確保」

一般の有権者にとってなにより大事なのは自分の生活です。
自分の暮らしを保証や改善する政治勢力であれば、
それがどんな政治的旗色を持っていようと、
その政治勢力を支持することになります。

それゆえ経済政策で効果をあげているけれど、危険で極端な政治勢力を
支持する有権者を叱咤するのは、効果が薄くなります。
政策を示す立場の側から、より効果的な経済政策を示すことで、
有権者の支持を集めることが、確度の高い対処になります。


かつてヒトラー・ナチスが絶大な支持を得たのは、
経済政策で大成果をあげたことがあります。
他国が不況で喘ぐ中、政権獲得から4年後には
ほぼ完全雇用を達成し、それまで悲惨な暮らしを余儀なくされた
労働者にとっての「夢の国」を実現したのでした。

リヒターの『あのころはフリードリヒがいた』という本を見ると、
失業者だった主人公の父親が、ナチスに入党して
職を得て暮らしが安定した、というお話が出てきます。

「あのころはフリードリヒがいた」
このようにユダヤ人迫害が進む中、「ボク」の父親はナチ党員となります。
そして家にシュナイダーさんを招き、自分がとても良い職につけたことを語ります。
「初めて家族揃って休暇旅行に行けるんです。
<喜びを通じて力を>という、アレですよ。
私がナチ党員になったのは、家族のためになると思ったからなんですよ」

「極端で危険な政治勢力を台頭させないために、
すくなくとも経済政策だけはしっかりやっておけ」
「極端で危険な政治勢力に経済政策でさきを越されないようにしろ」です。
これがワイマール共和国とナチスからの教訓です。


いまの日本は安倍政権という極端で危険な政治勢力が
経済政策でさきを越していて、高い支持率を維持している状況です。
安倍政権の高支持率をこれ以上許すわけにいかないのなら、
なおさら自分たちが安倍政権を超える経済政策を示して、
有権者の支持を集める必要があるというものです。

そのためには、リベラルや左派、あるいは安倍政権と対峙する
立場であれば、どんな政策を掲げたらいいのか、
再分配を重視しろとか、賃金を上げろとか、
松尾匡氏の当該記事を含めて、これまでにも何人もの
経済学者からコメントが繰り返されています。

「左派こそ金融緩和を重視」
「財政政策・福祉と公共事業」
「金融緩和・雇用の質と賃金」


(財政赤字があるなかでの)緊縮は道徳感情的には「自然」なんですよ。
「未来世代に借金を残していいのか!」という主張が訴求力をもつ程度には
有権者は利他的(道徳的)だ、ということではないのでしょうか?

そう思うなら、あなたたち左派が有権者に対して、
緊縮財政のなにが問題で経済成長が必要な理由はなんなのか、
理解を得る努力をすればいいのだと思います。
経済がわかっていて生活を保証してくれると
一般有権者から思われるようになれば、
支持を集めることができると思いますよ。

そんなに「リフレ派」が信用できないなら、
あなたがた左派が「リフレ派」に取って代わって、
経済政策で主導的になれるようになればいいのだと思います。
「歴史修正主義者に甘いリフレ派」から支持を奪って、
自分たちが支持されるなら「一石二鳥」ですよ。

そこへもってきて「これでは左派が支持しない」なんて、
なにを他人ごとのように構えているのかと思います。
エントリのかたは、自分たち左派が経済政策を
見放しているつもりでいるのでしょうが、
実は彼ら左派が一般有権者から見放されているのだと思います。


エントリを書いた「Apeman」氏は、歴史修正主義に対するスタンスで、
「恃むに値する」かどうかがわかると考えています。
前述のように「リフレ派」は「歴史修正主義に甘い」から
支持されないという趣旨のことを、しょっちゅう言っています。

「歴史認識で恃むに値する?」

歴史修正主義を批判する「崇高な政治思想」の
自分たちは一般有権者からとうぜん支持される、
「歴史修正主義に甘いリフレ派」は、とうぜん一般有権者も支持しない、
くらいの認識なのかもしれないです。

一般の有権者は「崇高な政治思想」ではなく、
「食いぶち」を提供する政治勢力を支持するということを、
あまり理解していないのかもしれないです。



付記:

「Apeman」氏は以前、「緊縮財政が道徳的にしっくりくる」
という趣旨のことを言っていたのですが、
わたしにはなんのことなのかわからなかったのでした。

「金融安定化と道徳感情?」

財政再建主義のかたが殺し文句としてよく出す、
「未来世代に借金を残していいのか!」のことのようです。

posted by たんぽぽ at 21:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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