2015年11月28日

toujyouka016.jpg 保育士の給与はなぜ低い?

保育士の給与が低いことは、よく言われることです。
その現状や原因を分析した記事があるので、ご紹介したいと思います。

「保育士の給与はなぜ低いのか 待機児童問題から考える」
(はてなブックマーク)
「現役保育士の「衝撃給与」暴露相次ぐ 「命を預かる仕事」が手取り10万円台でいいのか?」
(はてなブックマーク)
「現役保育士ら、安すぎる給与の改善など訴え」
(はてなブックマーク)

 
保育士の給与はどの程度か、他業種との比較を見てみることにします。
資料は「舞田敏彦のデータで読み解くDUALな疑問」の、
2015年9月28日の記事です。

「いくら稼げる? 129職業の年収ランキング」

保育士を含むいくつかの業種について、平均年収を比べたのが以下の図です。
月収と年間賞与(ボーナス)から平均年収を推定しています。

職業別の推定年収(万円)

保育士の平均月収は21.6万円、ボーナスを合わせても
推定平均年収は300万円をどうにか超える程度です。
保育士は手取りが月10万円台というのは、
かなりありふれた状況であることがここからもわかります。

http://blogos.com/article/144071/
フルタイムで働く保育士の給与は、24歳2年目で手取り約11万4000円、
28歳6年目で手取り約14万円ということだった。

平均値だけでは情報がふじゅうぶんだとお考えのかたのために、
月収階層べつの割合の図も出ています。
保育士は月収20万円以下が半分以上です。
全体の9割程度が月収30万円以下です。
保育士の薄給ぶりが、改めてはっきりしてくると言えます。

職業別の月収分布


なぜ保育士がかくも薄給なのか、10月6日の朝日新聞の
インタビュー記事に詳しく分析されています。
ここで注目したいのは、次の保育士に対する社会的評価です。
これが社会が保育士をどう扱うかという
基礎理念を決めていると考えられるからです。

http://www.asahi.com/articles/ASH9Y524SH9YUEHF00S.html
保育士を教育の職員としてみている国では学校教員との
給与格差はありませんが、日本は福祉職なので、格差が大きいと言えます。
それに『ただ子どもと遊んでいるだけ』という保育士に対する誤解もあります」

それにもかかわらず、『子どもと遊ぶだけで、特別な知識もいらない』と
認識している人がいるなど、社会的評価が必ずしも高くありません」
「欧州でも『保育士は遊んでいるだけ』という見方が長かったそうです。
でも、そうではなく教育者として重要な仕事をしていると理解され、
保育士の処遇を上げ、実際に保育が子どもの発達に
プラスになっているかをチェックする機関をつくるなどして、
保育に税金を投じることに国民が納得するようになった歴史があります」

最大の要因は『子どもと遊ぶだけで、特別な知識もいらない』
という認識をしている人が多いということです。
欧米の民主主義国では「専門知識の必要な教育者」と認識を
転換したことで、保育士の待遇が改善されていったのでした。

実際、高度な専門知識、技術は必要なことです。
小さな子どもの世話なんて、そう簡単なことではないと思います。
http://blogos.com/article/144071/
小さな子どもの動きは、3秒先も予測できない。
遊びの時間は常に走り回っているため、いつケガをしてもおかしくない状況だ。

給食の時間も園児らが食事を喉に詰まらせないか、
常に注意しなければならない。食べ物をこぼす、落とすは日常茶飯事。
数秒の油断が事故につながるため、保育士は常に気を張っている――。
子どもの命を預かる仕事というのは、そういうものなのだ。


ときどき導入が検討される「准保育士」制度は、
『子どもと遊ぶだけで、特別な知識もいらない』という認識が
あるからではないか、という気がしています。
「専門知識のハードルを下げる一方で、主婦の子育て経験を重視する」
というのが基本コンセプトだからです。

「「准保育士」導入を検討 政府、子育て経験女性を担い手に」

「准保育士」制度は保育士の不足を補うためでもあります。
人材の不足を解消したいのなら、
保育士の待遇をもっとよくすることだと思います。
ひとえに待遇が悪いゆえに、資格があっても保育士に
ならないかたも多くなるからです。

http://www.asahi.com/articles/ASH9Y524SH9YUEHF00S.html
「まず、保育士不足の現状として、政府が1月に打ち出した
『保育士確保プラン』では、17年度末までに
新たに6・9万人の保育士確保が必要としています。
しかし、保育士の資格があっても保育士の仕事に就かない人も多くいます」


posted by たんぽぽ at 07:19 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
公立保育園であれば公務員ですから給与は良いです。
要は民間ですよね、安いのは。
マックより安い賃金で雇われているパートさん達で回してます。資格は持ってなくても雇用されます。か、独身時代、保育士だった人がM字雇用で復活していたりします。
人件費が大半を占めるビジネスですので、安い労働力でなければ、とても経営が成り立たない現状です。公立保育園よりはるかに高い保育料なら成り立つでしょうが、そんなことは非現実的です。

公立との差別化サービスとして、遅くまで預かる、休日保育、突然の残業にも対応、そして顧客の要求度も増して、冷凍母乳にしてくれ、アレルギーで特別食だ、布おむつにしてくれなど、対応すればするほど人件費が膨らむというものです。

最近は、民間参入して公設民営も増えましたが、聞こえはいいですけど、経営実態は厳しく。

働く親達のキャリアアップを、パート保育士の安い賃金で支えているわけですから、ここに大きな格差構造が発生するというのは、皮肉なことです。

だから国からの助成金がもっと必要な領域だと思いますし、なんでもかんでも民営化だ、規制緩和ってなると、どんどん格差が発生します。

個人的には、公立はお迎えが1分でも遅れれば、徹底的に文句言われて腹が立つことも多かったですが、一方で民間の柔軟なサービスには本当に助けられたという思いは強いです。
なので、何とか民間の保育士には、もっと高賃金をもらえる仕組みを作れないものかと思います。
Posted by うがんざき at 2015年11月29日 13:19
このエントリにコメントありがとうございます。

保育園についての詳しい現状、まことにありがとうございます。
このエントリで問題にしているような薄給は、民間の問題なのですね。

>働く親達のキャリアアップを、パート保育士の安い賃金で
>支えているわけですから、ここに大きな格差構造が
>発生するというのは、皮肉なことです

格差構造のしわ寄せを保育士の世界にお仕着せしているようです。
こういう不健全な状況が長く続けば、いずれ破綻も出てくるのでしょう。
そのうち支えきれなくなる可能性もありますしね。


>だから国からの助成金がもっと必要な領域だと思いますし、
>なんでもかんでも民営化だ、規制緩和ってなると、どんどん格差が発生します。

いちばんの根源が基礎理念ですね。
「保育士は専門性の必要な教育職」ということと、
「すべての子どもに保育所に通う権利がある」
という認識の定着を、記事では挙げていますが。
http://www.asahi.com/articles/ASH9Y524SH9YUEHF00S.html

お金がかかるのはどこの国も同じことですが、
進んでいる国では単に予算を投入するだけでなく、
保育士の給料にちゃんと使われているか、
といった監視の仕組みも整えていますね。


>個人的には、公立はお迎えが1分でも遅れれば、
>徹底的に文句言われて腹が立つことも多かったですが、
>一方で民間の柔軟なサービスには本当に助けられたという思いは強いです

自由競争ゆえの民間のよさもちゃんとあるのですよね。
そういうところこそ支援が必要だと言えます。
Posted by たんぽぽ at 2015年11月30日 21:34
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