というのは、アベノミクスの支持者がよく主張することだと思います。
これについて検討してみたいと思います。
「自殺者の減少がアベノミクスの経済効果であることを懐疑したらブロックされた」
一般論としては、景気が良くなって雇用状況が改善すれば
自殺者が減る傾向にあることは確かです。
ここでは現在の日本でなされている「アベノミクス」については
どうなっているかを考えることにします。
アベノミクスの支持者は次のように、安倍政権に入ってから
実際に自殺者が減り続けていることを根拠として挙げます。
自殺者数の推移もアベノミクス(第一の矢が主力)による経済の安定化とミクロ的な財政的対応で今年度はさらに減少。この数字でも二万人を超えてるが、それでも今年度は90年代前半の水準に戻る可能性が濃厚。つまり長期停滞以前に戻る。 pic.twitter.com/3lek26qNYn
— 田中秀臣 (@hidetomitanaka) 2015, 11月 24
わたしに言わせれば、「自殺者が減ったのはアベノミクスの
経済安定化による」というのは「?」なのですよね。
民主党政権時代からすでに自殺者は減り始めているからです。
8月6日エントリでご紹介した、警視庁の自殺統計を示したいと思います。
「警視庁 統計」
ようするに2009年の民主党政権以来強化された自殺対策が
まだ続いている結果、という可能性もあるということです。
「民主党政権は自殺対策で取り組んでいるようですが、
いったいどんな内容なのでしょうか?」
民主党政権は、年間3万2000人を超える自殺を
「社会全体の問題」として捉え、政府主導で対策に取り組んでいる。
内閣府に「自殺対策緊急戦略チーム」が発足したのは2009年11月。
大島議員もチームの一員だ。
実際に日本の自殺対策は、鳩山総理と福島前大臣の下で大きく前進した。自殺が多い3月を対策強化月間に定めて集中的に啓発を展開し、警察庁に埋もれていた自殺統計を使って自殺リスクの要因分析をはじめて行った。「たかがそんなこと」ができなかったこれまでを、一変させた功績は大きい。
— 清水康之/NPO LIFELINK (@yasushimizu) 2010, 6月 2
自殺者数と経済状況との関係をよりはっきりさせるために、
動機べつの自殺者数の推移を見てみることにします。
警視庁の自殺統計には「経済・生活問題」というカテゴリがあります。
この動機の自殺者数も民主党政権以来、順調に減っています。
2009年は8377人だったのが、2014年は4144人と半分以下です。
2011年から2012年にかけては、「経済・生活問題」が
動機の自殺は6409人から5219人に減っています。
ほかの動機と比べても減り幅がとくに大きいことがわかります。
2012年は15年ぶりに自殺者が3万人を割ったのですが、
「経済・生活問題」による自殺が減ったことが、とくに大きかったのでした。
「自殺者15年ぶり3万人下回る 「経済・生活を苦に」減る」
11月分までの内閣府のまとめによると、動機別では「経済・生活問題」が
前年同期比で20%以上減少しており、全体を引き下げたとみられる
内閣府は「経済環境が底打ちした影響もあるのではないか」
(自殺対策推進室)とみている。
これが経済音痴でデフレに対策を打てなかったと言われる
民主党政権においてのことであることは、特筆することでしょう。
「経済の悪化が底に達したこともあるのだろう」と、
内閣府は分析しているのではありますが。
全体の自殺者数が減っているのだから、経済・生活問題にかぎっても
自殺者数が減るのは当然とも言えます。
そこで自殺者数全体のうち、経済・生活問題が動機の
自殺者数の割合を見てみることにします。
これも民主党政権に入ってから順調に減り続けていることがわかります。
2009年は25.5%と4分の1以上でしたが、2014年は16.2%まで減っています。
安倍政権に入ってからも減り続けていますが、
民主党政権時代のほうが減り幅が大きいくらいです。
これにかぎって言えば、「アベノミクス」による経済安定化の
影響はそれほど大きくなく、民主党政権で強化された
自殺対策の効果のほうが大きそうだと考えられるでしょう。