書いた記事があるので、ご紹介したいと思います。
「批判の多い現金給付が「子どもの貧困」解決に不可欠な理由」
(はてなブックマーク)
なぜ現金給付なのかですが、
1. すぐにできてすぐ効果があるのふたつが大きいです。
2. 社会があなたを見捨てていないというメッセージになる
1.に関してですが、ひとり親世帯の雇用や収入を改善することは
もちろん重要なことで、予算を投入して推進する必要のあることです。
ところが雇用を増やし賃金を引き上げるのは現実には容易でないです。
「収入のジェンダー格差」
「子を持つ女性の賃金格差」
ひとり親とくにシングルマザーは、低収入で不安定な職に
回されやすいという、社会構造があります。
こうした社会構造はすぐには解消されるものではなく、
中長期的な視野で解決する課題ということになります。
ひとり親、特にシングルマザーの雇用と収入が、
すぐに大幅に改善される見込みがあるのでなければ、
どれほど就労支援に注力したところで、ひとり親家庭の子どもの貧困の
実体である「ひとり親の貧困」は解決されないであろう。
となると、すぐにできてすぐに効果を発揮する施策は、
「現金を直接わたす」ということになるということです。
2. の心理的効果は、かなり大きいもののようです。
現金給付に対する基礎理念でもあると言えます。
制度の定着のためにはこうした基礎的な部分の思想が
しっかりしている必要があるのでしょう。
「でも、その人たちに届けられる現金は、
『あなたたちを見捨てていません』というメッセージなんです。
その人たちが『私たち、見捨てられていないんだ』というメッセージを
受け取りつづけることは、小さくても希望につながっていくんです、
この効果は、非常に大きいと思っています」
最初の記事で取材されている
「子どもの貧困対策センター「一般財団法人あすのば」」の
「子どもの貧困対策『政策パッケージ』に関する提言」を見ると、
現金給付を始め直接的な経済支援が多くなっています。
「政策提言」
「少なくとも報道からは、「現金給付を拡大する」という政府方針は、
全く見えてこない」と批判されている2016年度予算の概算要求に
ついての記事は、ここに全文が引用されています。
http://blogs.yahoo.co.jp/katuragikitiemonn/13865827.html
子ども貧困対策に366億円…厚労省概算要求
読売新聞 8月26日(水)14時25分配信
厚生労働省は26日午前の自民党厚労部会で、2016年度予算の概算要求を示した。
一般会計総額は15年度当初予算比2・5%増の
30兆6675億円となり、4年連続で要求額が30兆円を突破した。
安倍内閣が重視する格差是正をてこ入れする狙いから、
計366億円を計上し、子どもの貧困や
ひとり親家庭への対策などを強化するのが特徴だ。
ひとり親家庭への支援を充実させるのは、社会問題化する
子どもの貧困が根底にあるためで、223億円を盛り込んだ。
市町村の相談窓口を拡充し、親の就職相談や子育てなどを一括して
「ワンストップ」で対応できるよう支援するのが柱だ。
元ハローワーク職員らを相談員として雇う市町村を補助する。
また、子どもが学習や食事をする居場所づくりを進める自治体を支援し、
親が仕事中でも規律を持って生活できるようにする。
これを見ると現金給付の拡大でないどころか、
ひとり親世帯の雇用や収入を改善する性質のものでさえないようです。
ひとり親世帯の貧困は「自己責任」と思っていて、
みずからの努力で雇用と収入を得ることだと
思っているという、相変わらずの認識なのでしょう。
上述の「あすのば」の提言も、かなりが取り入れられないことになります。
それでも現状の改善のためには少しでも取り入れられるものを
増やさねばということで、項目を絞って訴えることになるわけです。
(こういうところは、現実の課題解決のために
働きかけているかたたちだと思います。)
間もなく発表されるであろう予算概算要求の政策パッケージの中に、
取り入れていただけるものを、取り入れていただかなくては、と考えています。
もちろん、私たち『あすのば』の提言にも、
数多くの『本来、かくあるべき』のほとんどは、盛り込めていません。
けれども現金給付に関しては、今すぐに多くの方のコンセンサスを
得られそうで予算化される可能性の高いものに絞り込み、
児童扶養手当と死別父子家庭への経済支援を訴えています」
なぜかくも日本は現金給付に対する風当たりが強いのかと思います。
生活保護に対するバッシングは言わずもがなです。
貧困対策ではないですが、「子ども手当て」も「ばらまき」と言って、
バッシングして潰した実績があるくらいです。
OECD加盟国中の、日本の社会扶助費の少なさはきわだっています。
「自己責任の国」と言われるアメリカ合衆国よりも、
さらに社会扶助費が少ないという状況です。
国民のみんなが稼いだお金を、税金として集めた国が、その集めたお金の内、どの程度の割合で仕事ができないような状態の人たちを援助しているかという世界比較のグラフ図です。日本を見てください。 pic.twitter.com/fvVDCVXyAI
— 大野純一 (@ohnojunichi) 2013, 12月 10
ここでは高度経済成長期の「働いてお国に貢献したものだけが、
まともに生活する権利がある」「現金給付は怠けさせてやるだけだ」
という意識がまだ残っているからだろうと、簡単に考察しておきます。
付記:
厚生労働省の概算要求についての読売新聞の記事を見ると、
「安倍内閣が重視する格差是正をてこ入れする狙いから」
なんて書いてあって、「えっ、そうなの?」とわたしは思いましたよ。
安倍政権の経済政策は、再分配機能が弱いことは、
多くのかたが指摘するところだからです。
「安倍政権・再分配の欠如」