2015年12月06日

toujyouka016.jpg 広島・マタハラ訴訟のメモ

広島の病院勤務の理学療法士のかたのマタハラ
(マタニティ・ハラスメント)裁判についての記事です。
いままで見てこなかったので、見ていきたいと思います。

「マタハラ降格に賠償命令、女性が逆転勝訴」
「「妊娠も仕事も取るのは欲張り」と人事部長に言われた――マタハラ被害者が語る実態」
「“妊娠女性の降格 違法で無効”最高裁が初判断」
「妊娠理由の降格はマタハラ…?最高裁弁論で2審までの判決見直しの可能性」

この訴訟は、妊娠を理由に降格されたことが、
男女雇用均等法に違反するかどうかを争ったものです。

 
1審、2審は原告が敗訴、最高裁で原告の逆転勝訴となりました。
最高裁から判決が出たのが、2014年10月、1年ちょっと前です。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141023/k10015647721000.html
病院で働いていた女性が妊娠を理由に降格させられたのは
不当だと訴えた裁判の判決で、最高裁判所は「妊娠や出産を理由とした
降格は原則、違法で無効だ」という初めての判断を示しました。
23日の最高裁判所の判決で、第1小法廷の櫻井龍子裁判長は
「妊娠や出産を理由にした降格は、女性の自由な意思に基づく
承諾があったと客観的に認められる場合や、円滑な業務運営などに支障があり、
降格させても女性の不利益にもならないような特別な事情がある場合を
除いて原則として違法で無効だ」という初めての判断を示しました。

そのうえで、「原告の女性は降格を承諾していたとはいえない」と
指摘して訴えを退けた2審に審理のやり直しを命じました。


かくして広島高等裁判所に差し戻しがなされ、
11月17日に病院側に賠償が命じられたのでした。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17H92_X11C15A1CC1000/
広島市の病院に理学療法士として勤務していた女性が
妊娠を理由に降格されたことが、男女雇用機会均等法に
反するかが争われ、最高裁が違法と初判断した訴訟の
差し戻し控訴審判決が17日、広島高裁であった。

野々上友之裁判長は降格を適法とした一審・広島地裁判決を変更し、
精神的苦痛による慰謝料も含めてほぼ請求通り
約175万円の賠償を病院側に命じた。女性が逆転勝訴した。

この訴訟は「妊娠や出産を理由とした降格は、原則として違法」
という判断を、最高裁判所が初めて下したことで、画期的とされています。
今後の訴訟や、労働基準監督署の相談に対する指針も、与えることになるでしょう。

「労働局に寄せられるマタニティーハラスメントの相談件数は
全国的に増えているので労働局は最高裁がきょう示した基準を
今後、行政指導などの際、活用できると思う。


2014年になってようやくマタハラに違法という判決が
最高裁から出たとも、見ようによっては言えるのですよね。
いかに日本の社会が、「妊娠・出産したら女性は
仕事を続けられなくて当たり前」という状況で
あり続けてきたかを、示しているとも言えます。

「弁護士ドットコム」の記事を見ると、
「妊娠も仕事も両方取るのは、欲張り。わがまま」
「そんなに職場に戻りたいなら、妊娠は9割あきらめろ」
なんて言われた少しむかしのお話が出ています。
このくらい露骨に「子どもか仕事か」の二者択一を迫られて
当たり前というのが、「きのうの世界」のことだったわけです。

マタハラの是正勧告を「法律を守るつもりはない」と言って
無視したので公表された事業主がいたのでした。
このようなマタハラに関しては法律無視というのも、
ちょっと前までは露骨にまかりとおっていたのでした。

『法がどうのこうの言ったって、その職場に合わせてできた法律ではない。
その法律は、うちの職場では通用しないから』と言われました」


マタハラの背景的原因は、ご多分にもれず日本の企業文化として
根強く定着している、「長時間労働」にあるようです。
新村弁護士は「日本では、長時間働けて、
サービス残業もたっぷりできないと、雇ってもらえない。
妊娠や育児をしている女性はそんなに働けないので、
そこから排除される代表になる。それがマタハラの原因です」と指摘した。

「長時間労働」は、高度経済成長期に家庭のことは女性に任せて、
男性は会社で働くことに専念できるようにしたことで生じたものです。
もとより働くのは男性だけという前提ですから、
妊娠や出産が存在しないので、念頭に置かれないことになります。

企業文化が妊娠や出産をしないことを前提にしているので、
女性に対しては「仕事か子どもか」の二者択一を突きつけるし、
妊娠や出産をした女性を企業社会から締め出すことにもなるわけです。
まさに「男性中心」世界の産物ということです。



付記1:

長時間労働は男性中心の労働文化の産物であり、
それゆえ女性の管理職が増えない、大きな原因でもあります。

「WLBと女性管理職の割合」
「女性管理職と長時間労働」


付記2:

いまでも多くの企業では女性は妊娠や出産をすると、
戦力にならなくなるというので、採用時には男子に下駄を履かせて
優先的に採用することが、「当たり前」なのですよね。

「女子は優秀でも採らない(2)」

posted by たんぽぽ at 21:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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