選択的夫婦別姓が取り上げられました。
これも最高裁大法廷回付の影響であることはもちろんでしょう。
NHKの世論調査の発表も12月7日でしたから、
同じに日にして注目されるようにしたのもあるのかもしれないです。
「家族の名字 どう考えますか? 〜“夫婦別姓”のゆくえ〜」
「家族の名字 どう考えますか? 〜“夫婦別姓”のゆくえ〜
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結婚したら、名字が変わる。
明治以来続くこの制度について、まもなく重大な判断が示されます。
最高裁判所の大法廷。
夫婦別姓を求める訴えに対し、来週、判決を言い渡します。
最初に結婚や離婚の改姓で苦労したかたのお話が出てきます。
非改姓結婚を望む動機、選択的夫婦別姓制度の実現を望む動機として、
よくあげられることがいくつか出てきます。
多くのかたがあげる「職業上の不利益」が槍玉に出てきます。
職場では、「乾」の名前でキャリアを積んできたことを
大切にしたいと、経営者に旧姓の使用を申し出ました。
このような旧姓を使うことには無理解なかたがいて、
多くの場合、彼らの意識が最大の障壁になるのですよね。
ほかのかたの例ですが、いくつか挙げられています。
40代女性“上司の考えで、強制的に戸籍姓に変えられた”
50代女性“社内電話帳から旧姓が消えたことで
辞めたと誤解され、対応が大変だった”
インタビューを受けたかたは、こんなことを言われています。
夫婦別姓問題に関っているかたであれば、
いやというほど聞かされていることだと思います。
名字を変えたくないのだったら、最初から結婚なんかするなよ。
女性であるものやっぱり結婚したら喜んで相手の名字を名乗るべしっていう考え。」
前者は結婚か名前かの二者択一の要求です。
「家族思想信仰」の考えで言えば、「改宗して信仰に従うか、
異教徒として排除されるか」の二者択一ということでしょう。
後者は「お約束」のジェンダー規範の押し付けです。
「家族思想信仰」の考えで言えば、「女に敬虔な信者であることを
要求する」ということになるでしょう。
不必要な「プライバシーの暴露」という問題も深刻です。
とくにプライベートでのおつきあいがなく、
結婚という情報が必要のない、仕事関係のかたに知られるというのが、
とりわけ負担になると言えます。
名字が原因でプライバシーがさらされてしまう事態にも直面しました
「はからずも離婚ほやほやですということを、
あちこちの施設に宣伝する事態となりました。
何も好きで離婚したわけではない。やむを得ない事情でそうなった。
なんで私だけがあちこちに知らせたくもないのに知らせることになるんだろう。」
あとのふたつは、事実婚の不利益と言ったほうがいいでしょうか。
金融関係と税制関係は、事実婚が不利に扱われる場面が多いところです。
ここでは挙げられていないですが、税制に関しては、
配偶者控除が受けられないことは、よく言われるところだと思います。
「法律婚でないことの不便」
共同で住宅ローンを組もうとしたとき、金融機関からある条件を示されました。
夫「(ローンの)本審査に入るまでには籍を入れてください。」
乾紀子さん「ちゃんと名字をそろえた状態で住民票を持ってきてください。
そうでないと(本審査が)通りませんと。」
所得税の控除が受けられないなど、いくつもの支障があることが分かりました
金融関係や税制関係で事実婚が不利になるのも、
これらも原則「家族思想信仰」の「信者」のためのものだからでしょう。
金融関係も「信仰」を持っているかで信頼できるかが決まるし、
国の制度も「信仰」を持っている人だけ対象にするということです。
もうひとり、名字のことで苦労があったかたとして、
「家名の継承」が理由であるかたを紹介しています。
家名の継承は、少子化でひとりっ子が増えて問題になった、
ということは、よく言われることです。
江戸時代から代々続く「三藤」の名字を真知子さんは大切にしてきました。
三藤真知子さん「姓を名乗るっていうことは、先祖を背負う気持ちになると思う。」
しかし、一人娘が結婚。
名字が変わり、「三藤」の名字を引き継ぐ人はいなくなりました。
あとの結婚支援センターのかたの意見を見ると、
家名の継承は、子どもがふたりが当たり前になった高度経済成長期、
すなわち「家族思想信仰」が定着したころから、
じつはすでに問題になっていたことだったようです。
1960年代に、子どもが2人というふうになってきたときから、
ずっと続いている問題で、それが最近は少子化で、
さらに一人っ子、二人っ子が増えるという中では、
もっと深刻になってきてるんですね。
インタビューされたかたは、夫が改正して自分の名字になったのですが、
周囲の風当たりが強かったことが述べられています。
名字を守るため、夫の薫さんに名字を「三藤」に変えてもらいました。
男性が名字を変える夫婦は、ごく僅か。
周囲から、冷ややかな視線を感じることもしばしばでした。
三藤真知子さん「人から見ると私がいばって夫をないがしろにして、
そう思われてるだけでなくて、口に出して言われましたからね。
ここでも「現行民法は男女どちらの名字でも選べるから
男女平等だ」という反対派(非共存派)の主張が、
「口先だけ」のものに過ぎないことを示しているでしょう。
「法律はどちらの名字でもいいけれど、
実際には女性が改姓しないとだめ」という、
男女で不平等な社会通念があるということだからです。
むかし結婚して妻の苗字を名乗る「女姓婚」の
是非を訊いたアンケートがありましたが、
反発するかたもそれなりにいたのですよね。
ふつうに婚姻届けを出しているし、
法律で認められたことをしているだけなのに、です。
「女姓婚のアンケート」
「家族思想信仰」の考えからすれば、改姓するのは当然女性
ということになるのだろうと思います。
現行法で男性の改姓が認められているのも、
実際には男女で不平等なのに「男女平等だ」と
言い逃れるためのものですから、本心から男性の改姓を
許容しているということではないのでしょう。
ここに出てきていない非改姓結婚を望む大きな理由として、
「アイデンティティ」の維持、「各種名義変更の手間」があるでしょう。
これらについても言及が欲しかったですが、
番組構成の都合でうまく入らなかったのでしょうか。
改姓によるアイデンティティの喪失によって、
精神疾患をわずらうこともあります。
また名義変更は「手間」だけでなく、金銭的負担もあります。
パスポートの更新手数料は6000円とか、高額なものもあります。
このような負担は全部、結婚改姓をしたかたの
自己責任、自己負担とされるところがさらに理不尽です。
望まない選択を強いられておいて、
その責任や負担まで取らなければならないからです。
望まない改姓の圧力をかけた人たちは、
これらについてなんの責任も負担も負わないのであり、
反対派(非共存派)はじつに無責任と言えるでしょう。
最初のインタビューのかたの最後のコメントには、
現行の同性強制の矛盾が凝縮されていると思います。
1. 夫婦のひとり(通常は女性)だけが、改姓で負担を強いられる
2. 望まない人たちにも一律に押し付ける
という大きくふたつの問題を含んでいるということです。
「どうして片一方だけが今までの自分の名字と
さよならせなあかんというのが、本当に素朴に悲しい。
素朴になんで一律にして、そんなルールやねんっていう。」
NHKの世論調査の記事で、二宮周平氏がコメントしていましたが、
1. 男女平等の問題
2. 個人の尊重の問題
のふたつの問題があるということです。
夫婦別姓には個人の尊重と男女の平等、2つの意味が込められている」