2016年01月24日

toujyouka016.jpg 教育のジェンダー格差

2015年の日本のジェンダーギャップ指数のお話の続き。

「男女平等指数2015年」
「収入のジェンダー格差」
「男女平等指数2015年」
「政治のジェンダー格差」

日本経済新聞の記事で触れられている「教育」分野の
ジェンダー格差について、ここでは見てみたいと思います。

「男女平等ランキング、日本は101位 女性活躍へ道遠く」
教育の個別分野では識字率や中等教育への進学率で世界1位だが、
高等教育への進学率が106位と極端に低く、同分野全体では84位だ。

 
GGG2015, country score card, Japan


日本の「教育」分野のジェンダー格差が大きいところは、
もっぱら高等教育、すなわち大学の進学率のジェンダー差です。
OECDの「Education at a glance 2011」というデータに、
各国の大学進学率のジェンダー差を比較した図があります。

「How many students finish tertiary education?」

Tertiary-type A graduation rates in 2009, by gender (first-time graduates)

女子のほうが男子より大学進学率が低い国は、
図に示された27か国のうちでは、日本とトルコの2国だけです。
ほかのOECD諸国は、どこも女子のほうが大学進学率が高いです。
女子が男子の2倍程度の国も結構たくさんあります。

諸外国では女子学生のほうが男子学生より多くて当たり前
というのが現状ですから、日本は大学教育のジェンダーギャップ指数の
スコアが低くなってもごもっともと言えます。


大学進学率のジェンダー差の要因のひとつとして、
「大学教育は女子よりも男子にとって重要」と考える人の
割合を示した『世界価値観調査』のデータがあります。
図は男女別に示していて、全体的に男性の賛成率が高い傾向があります。

「大学教育のジェンダー観の国際比較」

「大学教育は女子より男子にとって重要である」と考える割合

国ごとの比較を見ると、欧米の民主主義国は図の左下に集まっています。
日本のプロットはグラフの真ん中付近にあり、
欧米の民主主義国よりずっと「大学教育は女子よりも
男子にとって重要」と考える人の割合が高いことがわかります。
(韓国は日本と比較的近く、この点についても似たものどうしです。)


こうした意識は、子どもが娘か息子かによって
親や周りのおとなたちの期待が大きく変わる可能性が出てきます。
大学進学に対して男子は自由度がありますが、
女性は制限されがちになるということです。
それが大学進学率のジェンダー差に現れることになります。

男子なら浪人してもよいが女子なら浪人は認めないとか、
男子なら自宅から離れた大都市圏に進学してもよいが、
女子なら自宅から通えるところでないとだめ、
といったことが具体的にはあるでしょう。

家庭の経済的事情も、大学進学のジェンダー差に影響します。
家計が苦しい家の場合、息子ならなんとか大学に
入れようとするが、娘なら大学進学をあきらめさせるとか、
息子と娘がいる場合、息子だけ大学進学させるといったことです。

日本の高校は、男子のほうが大学進学に対する
自由度が高いことを見越して、男性に下駄を履かせて
入学させることがざらにあるくらいです。
ジェンダー格差が高校の方針に影響するとも言えるし、
高校の方針がジェンダー格差を再生産するとも言えます。

「学校で下駄を履く男の子」
「入試で下駄を履く男の子」


経済的事情に関しては、学費を安くしたり奨学金を充実させて、
大学進学の経済的負担を少なくすることで解消できます。
日本は学費が高く奨学金が貧しいただひとつのOECD加盟国です。
これは日本が女子より男子の大学進学率が高い
特異的な国となる原因のひとつではないかと思います。

「学費は高いわ援助はないわ・・・日本の高等教育@OECD」

Average tuition fees (USD) vs. the percentage of students receiving public subsidies for higher education, 2008-09

日本は「学費が高く奨学金が貧しい唯一の国」という
現状を解消する気はほとんどなく、さらに学費をあげようとか、
奨学金を貧しくしようとする動きさえあります。
大学進学の経済的負担が大きい現状がこのまま続くと、
とくに女子にとって大学進学が不利になり、
ジェンダー格差は縮まらない可能性があります。

posted by たんぽぽ at 21:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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