2016年01月30日

toujyouka016.jpg リベラル懇話会・発足(2)

あいだが空きましたが、1月11日エントリの続き。
研究者たちによるシンクタンク「リベラル懇話会」の記事です。

「民主党への政策提言を行う「押しかけシンクタンク」が発足〜学者たちが記者会見」
(はてなブックマーク)

 
懇話会の趣旨は「リベラルの受け皿を作りたい」であって、
「民主党を支持する」のではないことを、12月14日エントリで触れましたが、
このあたりについてもっと詳しく書いてあります。

会見の冒頭で、清水准教授は「私たちリベラル懇話会は、
特定政党としての民主党の応援団ではない」と前置きしたうえで、
現在の与党・自民党による政権運営や政策に強い懸念を持つことを
背景に集まった有志だと、自らの立場を表明した。
政権を担った経験をもつ民主党が現在、与党の政策に不満を持つ
有権者の受け皿になりきれていない状況を踏まえ、
「自民党に明確に対峙することのできるリベラル政党として、
野党・民主党の立場を明確にしてほしいとの願いで、政策提言を行う」と語った。

リベラル懇話会と民主党の関係性について、
「私たちは、いわば『押しかけシンクタンク』のようなもので、
民主党から依頼を受けて立ち上がったわけではない」と、清水准教授は説明する。
民主党に対して独立性を保持している点を強調し、
整合的で実行可能性のある政策パッケージを提示することを第一に考え、
ときには批判的な見解も辞さない姿勢を示した。

また、民主党側もリベラル懇話会が提出する予定の意見書に
拘束される理由はないとしたうえで、「私たちの調査、研究、意見書が、
来たるべきマニフェストに反映されることを強く願っている」と結んだ。

懇話会設立の動機は、安倍政権に対する強い危機感です。
安倍政権が圧倒的に強く、対抗できる政治勢力がないので、
安倍政権に危機感を持つ人たち、とくにリベラルとされる人たちの
「受け皿」を作ろうということです。

その「受け皿」として現時点で蓋然性が最も高い政党は
民主党としていること、それでも民主党に固執もしないというのは、
現実的判断であるということは、12月14日エントリでも触れました。


「リベラルの受け皿」がない理由のひとつとして、
野党第1党である民主党と自民党とのあいだで
政策の違いがよくわからないということがあるでしょう。
「自民と民主とでどう違うかわからない」というのは、
よく言われますし、不満に思っているかたも多いと思います。

北田教授:野党の第一党であり、「リベラル」という名を
名乗る政党が、いったいどういう政策を打ち出しているのか、
世の中では全く認知されていないし、実際にもよく分からない。
与党である自民党と、野党第一党である民主党の政策の違いが
全く見えないという深刻な事態に、危機感を感じている。

このあたりは、民主党が自民党と差をつけやすい
政策に不熱心ということもあるだろうと思います。
ジェンダー政策なんて、自民と差をつけやすいことを、
わたしは何度かお話していますが、民主党はおしなべて積極性がないです。
単純に「票にならない」と思われているのでしょう。

「民主党の現状 識者に聞く 地味に汗をかく人少ない 
代表選 方向示す一歩に」

市民社会の中には安倍政権の女性政策に反発する
「怒れる大女子会」のような動きも出てきているが、
ごく一部の議員しかそこへ飛び込んで聞くことをしない。

懇話会が提示する政策は、どれも自民との差をつけやすく
リベラルの性格を出しやすいものだと思います。
12月14日エントリで「潜在的な要求はありながら、
「受け皿」となる政党がなかなかなくて、不満が多かった分野」と
わたしは書いていますが、これらがなおざりにされたのは、
民主党があまり積極的でなかったこともあるのでしょう。


懇話会は選挙や政局にはかかわらず、政策の提示に専念する方針です。
これはこれでひとつのスタンスだと思います。
選挙や政局に関心があるかたは、シールズが設立した
シンクタンク「リデモス」や、1月9日エントリでお話した
「市民連合」があるので、そちらの活動を追えばいいだろうと思います。

SEALDsの学生たちは安保法制に注目しつつ、社会運動を通じて、
社会にどう呼びかけていくかという活動を行っているように思う。
逆に私たちは、社会運動や選挙・政局をどうにかしよう
という部分は苦手というか、よく分からないと感じている。

自らの専門領域である人文科学や社会学、社会政策学や
比較文化研究、歴史学といった知的資源を結集して、
私たちにしかできないことに取り組んでいきたいと考えている


さらにこんなことも書いていて、性に合わないこと、
気が進まないことをあえてやっている感はありそうですね。
それくらい現在の政治状況が危機的で、なにかしなければならないと、
思わせるということなのだと思います。

「リベラル懇話会」のメンバーに名を連ねている学者や研究者は、
もともと政党に政策提言を行うという意識はなかったと思う。
10年前であれば、学者なのだからアカデミックな場所で
がんばりたいと思っていただろうし、政治からはむしろ距離を
置きたいと考えていた人がほとんどだと思う。

本来は、こんなことをしたくなかった。
「象牙の塔」にこもって、研究に没頭していたかった。
にもかかわらず、こうして行動を起こしたというのは、
今の政治に対する相当な危機感があったからだ。
私たちが学んできた学問の知識は、今、こういうところで使わなかったら、
いったい何のために大学や研究機関が存在しているのか。
そう問われているように感じる。

「私たちが学んできた学問の知識は、今、こういうところで
使わなかったら、いったい何のために大学や研究機関が
存在しているのか」という最後の問いかけは大事だと思います。

「きれいごと」を吐くのは得意だけれど、肝心のところで
役に立たない人たちというのは、結構いるのですよ。
こうした人たちは事後になっても、自分の無策や無関心だったことに
責任を取ろうとしたがらないものです。
「懇話会」はそういう人たちとも違う、ということです。


活動はおそらく完全にボランティアベースだと思います。
懇話会の趣旨に賛同したかたが、独自かつ自発的に始めたもので、
「『押しかけシンクタンク』のようなもので、
民主党から依頼を受けて立ち上がったわけではない」ので、
どこかから給料や研究費が出るのではないだろうということです。

研究者が一般にこのような「課外活動」に不熱心な理由のひとつは、
お金にならないどころか(業績には多少はなるかもしれない)、
本来の研究のための時間と労力が取られるので、
やるだけ損にしかならないからです。
この観点から見ても、現在の政治状況がそれだけ危機的なのでしょう。

posted by たんぽぽ at 21:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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