今後の展望について書いた、なかなかよい記事があるのでご紹介します。
「「日本の非正規雇用はアメリカから見てもヒドイ!」
アベノミクス失速でも安倍首相は捨て身で憲法改正に挑むはず」
(はてなブックマーク)
全体を見るのは後回しにして、ここでは記事の見出しにある、
日本の非正規雇用についての言及箇所を見ていきたいと思います。
http://wpb.shueisha.co.jp/2016/01/22/59766/2/
例えば、今みたいに非正規雇用を大量に作るんじゃなくて、
正規雇用と非正規雇用の中間くらいで、今の非正規雇用より
もう少し高い給料でいろんな保証をつけるといったような形が必要だと思います。
そもそも、日本の非正規雇用はアメリカから見てもヒドイ!
とにかく給料が低すぎます。
「日本の非正規雇用はアメリカから見てもヒドイ!
とにかく給料が低すぎます」ですよ。はっきり言われていますが、
その実像はこれまでに何度も示していることです。
「男女&雇用形態別年収分布」
正規・非正規の年収曲線。雇用形態の差と同時に,正社員のジェンダー差にも注目。これ,調査法の学生さんに計算させたんだけど,憤りの感想が多かった。 pic.twitter.com/XC6tgbqBwN
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2013, 12月 23
その「アメリカから見てもヒドイ」くらい「給料が低すぎ」る
非正規雇用に多く回されるのは、若年層と女性です。
正規、非正規のジェンダー差は、次のようにはっきりしています。
「男女別正規・非正規雇用の数」
2014年11月の雇用労働者の組成図。正方形の面積による表現。 pic.twitter.com/B5LBD8a2Is
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2014, 12月 28
そして先月、安倍首相がみずから「日本の実質賃金が下がったのは、
パートで働く女性が増えたからだ」と、語ってくれたのでした。
「実質賃金の低下と男女格差」
2015年の日本のジェンダーギャップ指数で、
「経済」分野のうち「同一賃金同一労働」のスコアが下がり
順位が下がったことにも、それは現れています。
「収入のジェンダー格差」
このような雇用や賃金に関するジェンダー格差の原因は、
ひとえに既得権益の温存にあります。
http://wpb.shueisha.co.jp/2016/01/22/59766/2/
構造改革という名の下に「雇用の流動性を増やしましょう」とか
「規制を緩和しましょう」という、ファクラーさんの意見と
同じようなことは自民党も安倍首相も言っている。
でも、実際にやっていることは既得権益者に利益を誘導するような形でしかない、と。
もっと具体的にいえば、終身雇用、年功序列、長時間労働、
新卒一括採用といった、旧来の中高年男性中心の労働環境の温存です。
「日本はどうして賃金が上がらないのか」
終身雇用制と年功序列が完全にはなくならず、
さらに正規雇用と非正規雇用が固定化したため、
低賃金の労働力が生産性の低い分野に流入した。
日本は若者や女性を虐げ、外国人労働者を排除してきたため、
時代の変化とグローバル化に完全に乗り遅れてしまった。
中高年男性の既得権益を維持したまま「雇用の流動化」や
「規制緩和」を進めるので、非正規雇用ばかり流動化して、
女性や若年層は非正規雇用から抜けにくくなるわけです。
「左派こそ金融緩和を重視するべき 松尾匡・立命館大教授」
「全体で見れば雇用は拡大している。
本来ならば正社員のような質の高い雇用が増えるべきだ。
安倍政権は雇用の流動化を進めていくので、その意味では
質の低下を伴いながら、雇用が拡大していくかもしれない」
11月14日エントリでわたしは少し触れましたが、
「雇用の流動化」や「規制緩和」は、旧来の終身雇用や年功序列で
安泰となっている中高年男性に対して適用する必要があるし、
そうでなければうまくいかないと思います。
「金融緩和・雇用の質と賃金」
最初の記事では
給料が低いと、消費の主体である中間層が育たないので内需が拡大しないという指摘もあります。
「中間層」と書いていますが、より具体的には非正規雇用に
回される若年層や女性のことになるでしょう。
http://blogos.com/article/142480/
日本では、賃金が上がらないことから消費が増えず、
景気の先行きは見通せなくなっている。
企業は、少子高齢化が進む国内市場には投資せず、海外企業を買収している。
若者たちは正規雇用の指定席を求めて、リスクをとらなくなっている。
移民についても拒絶反応は相変わらずだ。
若者や女性を低賃金で働かせて得た利益は海外に投資され、
人口はどんどん減っていく。
景気がよくなっていると言われていますが、
一般市民のあいだでは実感がないかたも多いと思います。
やはり賃金水準が上がらないことが大きいわけです。
だからみんな財布の紐が固いままで、消費が増えないことになります。
「金融緩和によってインフレを起こせば、
物価が上がって実質賃金が下がるのは当然であり、
その実質賃金の低下分で雇用が生み出されている、
いずれ失業率が下がれば実質賃金は上昇するようになる」と、
経済に詳しい人は言うのかもしれないです。
1月21日エントリでも見たように、実質賃金の低下は、
正規、非正規の格差やジェンダー格差による
構造的なものであることが大きいと考えられます。
そのような構造的問題は政策の力で積極的に解消を図らないと、
景気の循環だけでは容易に改善しないものです。
さらに最初の記事では、
中間層を育てるためにはどういう雇用形態が必要なのか、という指摘もあります。
何を保障すべきなのかを話し合うことが必要なのに、
そんな建設的な社会議論さえありません。
安倍政権は雇用や賃金におけるジェンダー格差の問題や、
正規、非正規の格差の問題、中高年男性中心の労働環境に対して、
積極的に解決する意識はない、ということのようです。
多くのかたにとって「想定の範囲内」だろうと思います。
安倍政権の経済政策は「正規雇用は原則男性のもの、
女性は非正規雇用を埋める安くてていのよい労働力」という、
従来の構造への回帰にとどまるということです。
実際、安倍政権は、派遣労働者法の改正のように
現状の傾向に拍車をかける施策を推進さえしています。
このまま安倍政権がずっと続いても、とくに女性の雇用環境は
あまり改善しないことが、予想されることになります。