2016年02月07日

toujyouka016.jpg 安倍政権・経済効果が薄い理由

2月6日エントリでご紹介した、日本の非正規雇用が
なぜひどいのかについてお話した記事を、見ていきたいと思います。

「「日本の非正規雇用はアメリカから見てもヒドイ!」
アベノミクス失速でも安倍首相は捨て身で憲法改正に挑むはず」

(はてなブックマーク)

今回は最初から見ていきたいと思います。
アベノミクス全般の評価をしています。

 
アベノミクスの1本目の矢である「金融緩和」は評価しています。
ここはいかに安倍政権に批判的なかたでも、評価するところだと思います。
デフレ脱却のために、政府がお金を積極的に回そうとするのは当然ですし、
金融緩和まで否定的な一部の論調のほうが問題と言えます。

ファクラー アベノミクスには、基本的には「1本の矢」しかありません。
日銀による金融緩和策で、それは本当にうまくいったんですね。
むしろ、この20年ほど日銀が何も動いていなかったのが
異常な状態だったとも言えます。

海外でも「なぜ日銀はもっと積極的に手を出さないんだ?」と
言われていたのが、黒田総裁になってから
ようやく日銀の金融政策がアメリカやヨーロッパの中央銀行に追いついた。
いわば、「普通の国になった」という感じですね。

金融緩和は欧米の民主主義国では当たり前の政策であり、
日本の金融政策もようやくそうなったことに言及しています。
ただ「基本的には「1本の矢」しかありません」とも
言っていて、アベノミクスで評価できるのは、
金融緩和だけだとも言っているということです。


次にアベノミクスで景気が回復したと言っても、
それを実感している人は少ないという指摘があります。
「景気回復の実感はない」ことを伝えるニュースは、
たくさん聞いていると思いますが、実際少なくないかたが
同様に景気回復の実感がないのではないかと思います。

これはアメリカもヨーロッパもそうですけど、
経済が回復しても普通の人はあまり効果を感じないんです。
アベノミクスはその傾向が特に強くて、利益を受けているのは
限られた人たちだけで普通の人は悲観的ですよね。
地方に取材に行くと、必ずみんな言うんです…「何も効果がない」

一般の人たちが経済の回復を実感できないのは
欧米の民主主義国でもそうだと言うのですが、
アベノミクスはとくにその傾向が強いということのようです。
その原因は賃金が上がらないからであり、単なる実感だけでなく、
実際に経済効果が一般の人たちまで波及していないわけです。

経済効果が広がっていないのはアベノミクスの致命的な弱点ですね。
内需が一番大事なのに、それが拡大していない。
結局、給料は上がってないから、みんなお金を使わない…
という「デフレマインド」から脱却できていないんです


欧米の民主主義国と同様の金融政策を続けているのに、
日本ではなぜ効果がじゅうぶんに現れないのか、
とくに一般市民への経済効果の波及が薄いのかについては、
日本特有の経済構造について考える必要があります。

記事では大きくふたつ理由を挙げて、ひとつは「地方の既得権益」です。
これはおそらく公共事業のことではないかと思います。
そこにはふたつの問題があって、ひとつは政治的な問題。
安倍首相は政治的に地方の既得権益とかが必要だから、
本当の意味の改革を入れていないんですよ。

自民党の支持基盤は、各地元の地域ぐるみの利権集団で、
「政治家城下町」とでも呼べる「利権サークル」です。
これは地元選出の自民党の代議士が、公共事業のための補助金を
引っ張ってくることで、地元の産業を成り立たせるというものです。
公共事業にリソースを回すのは、政権を維持するための
支持の取り付けに必要ということです。

「政治家城下町」

公共事業にいくら投資しても「政治家城下町」に含まれない
「利権サークル外」の人は恩恵を受けられないことになります。
締め出されるのはとくに都市部の消費者に多くなるのですが、
公共事業がいくらさかんになっても、そうした人たちが
「景気回復の実感」を持てるはずもないということです。


公共事業を増やすことが、デフレからの脱却や雇用の創出という
観点からは効果が薄いことは、ほかでも指摘があります

「政治と経済の失われた20年 ―― データから語る日本の未来」

わたしは自民党が掲げる金融政策はまっとうだと思う一方で、
デフレを脱却するために公共事業をすると
語られている点についてはあまり評価していません。
現在、インフラの整備などの公共事業には高度な技術や資格が必要とされています。
昔のように頭数を集めて、体力勝負で行う事業はなかなかない。
つまり公共事業に予算を投じても、あまり雇用に結びつかないのですね。
公共事業はメンテナンスや防災のために必要ではあるが、
景気対策としての効果は疑問視されているわけですね。


もうひとつは55年体制時代の既得権が強いことを挙げています。
もうひとつは個人的な見解ですが、戦後の高度成長期を作った体制が
あまりにもうまく行き過ぎて、その結果として生まれた既得権益のおかげで、
日本は若い人があまり活躍できない社会になってしまったという点。
団塊世代の雇用を守るために若い世代が
非正規雇用になるといったしわ寄せが生じている。

戦後にはソニー、ホンダ、キョーセラなどたくさん新興企業が出てきたけれど、
それらが成功して、ある程度経済の構造が固まった結果、
いつの間にか若い世代がチャンスを得にくい社会構造になってしまった。

こちらの既得権益とは具体的には中高年層の男性です。
終身雇用、年功序列、長時間労働、新卒一括採用といった
前時代からの労働習慣は依然として維持され、
女性と若年層を低賃金の非正規雇用に押しやることになったのでした。
実質賃金が上がらず内需が拡大しないのも、
このような低賃金の労働者が増えることによると考えられます。

「実質賃金の低下と男女格差」

このあたりは2月6日エントリで、詳しくお話していることです。
記事では「個人的な見解ですが」と断わっていますが、
じゅうぶん本質的なことであり、重要だろうとわたしは思います。

「日本の非正規雇用はひどい」


安倍政権の経済政策の効果がじゅうぶん現れない原因は、
経済構造に既得権益が温存されているから、ということになるでしょう。
そのひとつは公共事業中心の「政治家城下町」であり、
もうひとつは労働環境における中高年男性ということです。

どこの社会でも、改革が立ち遅れる大きな原因として
既得権益層の力が強く、必要な変革を阻むことがあります。
現代日本はまさにその状況ということです。


この記事にある分析は、安倍政権の経済政策の評価として
納得できるかたも多いのではないかと思います。
アベノミクスに対する多くのかたが思っていそうな疑問や懐疑を
ちょうど埋めているのではないかと思います。

「金融緩和で雇用が増えたことはいちおう納得できるけれど
景気が回復したという実感は自分にはない」とか、
「女性活躍とか言っているけれど、女性の労働環境は
たいして改善されないだろう」と思っているかたは、
少なからずいらっしゃるだろうからです。

インタビューを受けているかたのプロフィールを見たら
「日本再建イニシアティブ」の主任研究員とあります。
『民主党政権 失敗の検証』という本を出したシンクタンクです。
それで納得できるのかと、わたしはちょっと納得しました。

■マーティン・ファクラー
アメリカ・アイオワ州出身。東京大学大学院で学び、
1996年からブルームバーグの東京駐在員。
その後、AP通信、「ウォールストリート・ジャーナル」を経て、
「ニューヨーク・タイムズ」東京支局長を務めた。15年7月に同紙を退職。
現在は民間シンクタンク「日本再建イニシアティブ」の主任研究員。
著書に『崖っぷち国家 日本の決断』(孫崎享と共著 日本文芸社)などがある

posted by たんぽぽ at 23:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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