2016年02月14日

mar0006.gif賃金格差と低い労働生産性

正規、非正規間やジェンダー間などの賃金格差が、
日本の労働生産性を低くしていることが考えられます。

何度か引き合いに出している、日本は賃金水準が低いゆえに
消費が伸びず景気が回復しないという記事ですが、
この中に労働1時間当たりの名目GDPの国際比較の図があります。
(経済協力開発機構(OECD)の2012年データ)
この数値が大きいほど労働生産性が高いと言えることになります。

「日本はどうして賃金が上がらないのか」
(はてなブックマーク)

 
労働1時間当たりの名目GDP(2012年、米ドル)

労働1時間あたりの名目GDPは、日本は40ドル程度です。
図に示された国の中で、下位のほうであることは明らかです。
(2012年なので円高のときの数値ですから、
円安になったいまはもっと下がっている可能性があります。)

日本より労働1時間あたりの名目GDPが低い国は、
南ヨーロッパや旧共産圏、OECD加盟国でも末席のほうの国など、
経済力があまりないとされる国が多いです。
「経済力がある先進国」と言われてイメージする国は、
ほとんど全部日本より労働1時間あたりの名目GDPが高くなっています。

いちばん労働1時間あたりの名目GDPが高いノルウェーは80ドル以上です。
アメリカ合衆国もかなり高く60ドル以上です。
OECD平均は45ドル程度、G7平均は65ドル程度です。
日本の労働1時間あたりの名目GDPはこうした平均以下ということです。
日本の労働生産性は悪いほうと言わざるをえないです。


日本の労働生産性がこのように低い原因として、
ほかならない賃金格差が考えられるということです。
低賃金である以上、高度な知識や技術を要する専門職ではなく、
生産性の高くない単純労働者が多くなります。
そうした低賃金の単純労働者を増やしていることが、
労働生産性を低くしている原因となるということです。

日本の労働生産性の低さは、失業率が他の欧米諸国に比べて
低いためだとよく解説されるが、果たしてそうだろうか。
終身雇用制と年功序列が完全にはなくならず、
さらに正規雇用と非正規雇用が固定化したため、
低賃金の労働力が生産性の低い分野に流入した。
日本は若者や女性を虐げ、外国人労働者を排除してきたため、
時代の変化とグローバル化に完全に乗り遅れてしまった。

雇用者報酬を国民所得(要素費用表示)で割った
労働分配率(%)でも日本は、英国に逆転されている。
日本は失われた20年の間に、「低賃金」が「単純労働者」を拡大させる
マイナスのスパイラルから抜け出せなくなってしまっている。


低賃金の労働者が増える原因のひとつは、正規雇用と非正規雇用の格差です。
これまでに何度もお話していますが、非正規雇用を安く使える
ていのよい労働力として多く雇い入れることによります。

「日本の非正規雇用はひどい」
「実質賃金の低下と男女格差」

非正規雇用に回されるのは女性が多いことや、
安倍政権の経済政策が増やしているのはこうした非正規雇用であること、
そして近年の実質賃金の低下の原因になっていると
考えられることも、これまでに何度もお話しています。



もうひとつの大きな賃金格差は、正規雇用にかぎっても
ジェンダー差が大きいということにあります。

「男は結婚で年収が増える」


女性は正規雇用でも、結婚や出産、育児で責任の少ない部署に
回されることが多いことや、長時間労働に代表される
既婚男性中心の職場環境ゆえに、管理職になれないか、
なりたいと思わない女性が多いことがあるでしょう。

「WLBと女性管理職の割合」
「女性管理職と長時間労働」


日本の労働環境は中高年男性、既婚男性中心であり、
「夫が正規雇用として働き、妻は原則として専業主婦、
働くにしても夫の家計の補助」という「家族思想信仰」意識の
名残りが残っているということだと言えます。

そうした男性中心の労働環境から脱却して
女性人材も登用すれば労働生産性が上がるというのは、
欧米の民主主義国ではずっと前から議論され実践されてきたことです。
かかるジェンダー平等から日本は取り残されていて、
それが最初に示した労働1時間あたりの名目GDPにも
現れているのだろうと思います。





付記1:

日本はすでに人口オーナス期に入っているから、
経済発展は物量ではなく質への転換が必要というお話がありました。
その意味でも労働生産性の向上が必要になると言えます。

「人口ボーナス・オーナス」
「人口ボーナス・オーナス(2)」


付記2:

日本はGDPが下がり続けていることが話題になることがあります。
「アベノミクス」の支持者は「ドル換算するから
円安のためにそうなる」と主張することが多いです。
ここでお話したような労働生産性が低いことも
原因なのではないかと、わたしは思います。




posted by たんぽぽ at 22:59 | Comment(2) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

はてなブックマーク - 賃金格差と低い労働生産性 web拍手
この記事へのコメント
とある業界を対象に、時間当たりの生産量基準値を日米比較したことがあります。
結果、日本は米国の6倍の量を生産していました。
しかし、多分生産性は米国の方が高いのです。
なぜなら、米国の方が高く売れ、生産性は売上額/労働時間で算出されるからです。

技術屋として、決して品質は負けてないと信じています。
でも値段は安い。
憶測ですが、他の業界も同じような状況だと思っています。

いつの日か文化的障壁が無くなったならば、日本の生産性は激増すると思っています。
Posted by tema at 2016年02月18日 19:02
temaさま、こちらにコメントありがとうございます。

>とある業界を対象に、時間当たりの生産量基準値を日米比較したことがあります
>いつの日か文化的障壁が無くなったならば、日本の生産性は激増すると思っています

なるほどねえ。
わたしはその業界かどこかわからないし、
その業界の内情を知るよしもないので、
なんともコメントできないのが残念です。

日本の生産性が本当に低い原因があるとしたら、
休みが少ないことや長時間労働もあると思います。
「生産性=売上額/労働時間」の分母が日本は大きいということです。
Posted by たんぽぽ at 2016年02月20日 08:44
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/433819071

この記事へのトラックバック