2016年03月12日

toujyouka016.jpg CEDAW日本審査・民法改正

3月7日にジュネーブで、国連女子差別撤廃委員会による
日本審査(第7、8回)が行なわれました。


「Concluding observations on the combined seventh and
eighth periodic reports of Japan」


民法改正に関するところは12.と13.です。
これを見ていきたいと思います。(あとの日本語はわたしのつたない訳)

 
Discriminatory laws and lack of legal protection (1/2)
Discriminatory laws and lack of legal protection (2/2)

差別的法規および法的保護の欠如

12. 差別的規定を撤廃するという見地からの前回勧告が
実行されていないことを、委員会は遺憾に思います。
委員会はとりわけ以下に関することを指摘します。

(a) 婚姻可能年齢が女子は16歳、男子は18歳と差が
設けられているという、差別的規定が民法に残っている。

(b) 女子のみに課された再婚禁止期間は、
最高裁判決は6か月から100日に短縮しただけで、全廃していない。

(c) 2016年12月25日、最高裁は民法750条の憲法判断に置いて
夫婦同氏を要求することを合憲としたが、
現実にはほとんど女性が夫の氏への改氏を強いられる。

(d) 2013年12月に婚外子の相続差別に関する規定が
廃止されたにもかかわらず、さまざまな差別的規定が
出生届けの記載に関係する戸籍法を含めて残されている。

(e) しばしばハラスメントやスティグマ、暴力にさらされる
さまざまな少数派集団に属する女性が受ける
複合差別をカバーする総合的な反差別法規がない。


13. 委員会は貴締結国に対し、前回(第5回および第6回日本審査)の勧告を
再度繰り返し、一刻も早く実行することを強く主張します。

(a) 女子の婚姻可能年齢を18歳に引き上げ、男子と同じにするよう民法を改正する。
選択的夫婦別姓を認める法改正を行ない、
女子が結婚しても生来の名字を維持できるようにする。
女子のみに課された再婚禁止期間を全廃する。

(b) 婚外子に関するあらゆる差別的規定を廃止し、
婚外子とその母親を社会的な偏見や差別から守るための法的保証をする。

(c) さまざまな少数派集団に属する女性が受ける、
複合的なかたちの差別から守るための総合的な反差別法規を制定する。
締結国の義務の核心である2010年の一般勧告No. 28を守ること。


女性だけの再婚禁止期間は最高裁で違憲判決が出て
6か月から100日への短縮をする改正案が準備されています
それでも女子差別撤廃委員会は、再婚禁止期間は全部なくせ、
そうでないと差別だと勧告しているということです。

これは当然のことだと言えます。
ほとんどの欧米の民主主義国では、再婚禁止期間はなくなっています。
現代の医学の水準であれば、父性の推定は問題なく可能であり、
再婚禁止期間自体が必要ないものだからです。
再婚禁止期間があるというだけで差別的ということです。

「諸外国の再婚禁止期間」


選択的夫婦別姓に関しては、前回2009年の審査では
「世論調査を言いわけにするな」が特筆するところでした。
今回の審査は「最高裁判決は差別的」が特筆することだと思います。
2015年12月に出た判決で、審査のわずか2か月前ですから、
話題性も大きくなるということなのでしょう。

選択的夫婦別姓に関しては、日本があまりにていたらくなので
特別にフォローアップをしたくらいです。
そのフォローアップでも2011年、2012年の
どちらの報告でも「なにもしていない」だったのでした。

「CEDAWフォローアップ」
「CEDAWフォローアップ(2)」
「CEDAWからの見解」
「CEDAWにまたゼロ回答」

そこへもってきて、最高裁判所が「選択的夫婦別姓を
認めなくても合憲だ」などと現状にお墨付きを与えたのですから、
女子差別撤廃委員会がかかる「差別的法規の放置」を
ますます深刻に考えることになるわけです。


今回の審査では夫婦同姓の強制の差別性について、
「現実にはほとんど女性が夫の氏への改氏を強いられる」としています。
形式的には男女平等でも、実際には社会通念によって
女性ばかりが不利益を受けるので、差別的だということです。

「現実には女性ばかり改姓を強いられているけれど、
文言が男女平等だから、差別的でなく問題ない」なんて、
最高裁判決のような「口先だけの男女平等」
女子差別撤廃委員会が認めるはずもないということです。


婚外子の相続差別は2013年12月の民法改正でなくなりましたが、
それ以外の婚外子差別は、まだかなり残っているようです。
婚外子の相続差別の撤廃は、自民党の「家族思想信仰」を奉じる
議員たちが猛烈に反発しましたし、しかたがないので
必要最低限の法改正だけしてあとは放置ということなのでしょう。

「違憲判決に反対論噴出」
「違憲判決に挑戦する自民」
「違憲判決に反対論噴出」

民法改正を即す女子差別撤廃委員会の語調は今回も強いです。
「繰り返し勧告する(reiterates)」「強く主張する(urges)」
「一刻も早く(without delay)」です。
「同じことを何度言わせるんだ」ということでしょう。



付記:

女子差別撤廃条約の日本審査で、民法改正に関するところは
mネットからも参加しています。

「【国連】女性差別撤廃条約日本政府報告審査へ 2月16日」

国連女性差別撤廃委員会(林陽子委員長)第63会期
(2月15日〜 3月4日)がスイス・ジュネーブで開催され、
16日には6年半ぶりに 日本政府報告審査が行われます。
日本からは、審査に臨む政府代表団のほか、女性差別撤廃に取り組む
NGOと日弁連の28団体79人が傍聴に参加します。

15日の開会式 後には、委員とNGOのランチタイムブリーフィング、
NGOブリーフ ィングが行われ、NGOブリーフィングでは
NGOを代表して大谷美紀 子弁護士がスピーチを行い、
ランチタイムブリーフィングでは、選択的 夫婦別姓についてmネットが行う予定です。

CEDAWの審査にはmネットから2人参加する予定です。
レポート 提出や渡航のためのカンパを募集しています。ぜひご協力ください。   

郵便振替 00100-6-601635
みずほ銀行 赤坂支店 普 1909972 mネット・キャンペーン
mネット
振込の際はカンパとご記入ください。


posted by たんぽぽ at 13:38 | Comment(4) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさま、新エントリ『女性にとって性を売ること(3)』をありがとうございます。
遅ればせながらお礼を。(我ながらすごいボリュームorz) 性産業だけの問題じゃないんですよね、日本の女性が置かれた現状は、ありとあらゆるところに同じ問題を抱えて遍在している。

>民法改正を即す女子差別撤廃委員会の語調は今回も強いです。
>「繰り返し勧告する(reiterates)」「強く主張する(urges)」
>「一刻も早く(without delay)」です。
>「同じことを何度言わせるんだ」ということでしょう。

きわめて正論であり、彼らは、相手が意見を聞き入れない時に「強く言う」ことを躊躇しない。
今はこれが当然で、世界基準なんですよね。

国内からもとうとう、例の「日本死ね」という強い言葉が出てきました。
これは力強いというより、よくよく追い詰められた女性の叫びだと、重く受けとめています。
Posted by あやめ at 2016年03月12日 14:24
あやめさま、こちらにコメントありがとうございます。

>新エントリ『女性にとって性を売ること(3)』をありがとうございます。
>遅ればせながらお礼を

いえいえ。
こちらでお礼をくださりありがとうございます。


>彼らは、相手が意見を聞き入れない時に「強く言う」ことを躊躇しない

とくに差別主義者に対しては、強く言わないとだめだろうと思います。
「こんな言いかたをしたから、返って反発するのではないか」
なんて「配慮」しても、失敗することが多いと思います。
彼らは聞く耳を持たないのですよね。

>例の「日本死ね」という強い言葉が出てきました。
>これは力強いというより、よくよく追い詰められた女性の叫びだと、

わたしも同感です。
多くの人たちが共感するところだったことが大きいですが、
国会で取り上げられ、まがりなりにも政治が動いたわけで、
「強く言う」ことは大事ということなのでしょう。
Posted by たんぽぽ at 2016年03月13日 15:28
たんぽぽさま

お返事ありがとうございます。

>強い言葉

とはつまり、
「あなたは大人でしょう」
という表明だと思います。
”あえて”やさしい(易しい・優しい)言い方をするときは、
相手を対等でない、子供扱いしている時ですよね。

『ボクちん、おねえさんのおちゃべりむじゅかちいかなあ?ボクちんにわかるかなー?』

ってね(笑)。
日本では、なぜかこういう↑のを指して、
「ちゃんしたと説明」
「丁寧な話し方」
と言っちゃう場合が多いですが(^^;)

>とくに差別主義者に対しては、強く言わないとだめだろうと思います。
>「こんな言いかたをしたから、返って反発するのではないか」
>なんて「配慮」しても、失敗することが多いと思います。
>彼らは聞く耳を持たないのですよね。

そうそう、本当に。
そもそも、誰かの意思を変えようとする時に反発が起こるのは自明ですし、
言い方を変えたくらいで従うなら、自発的にやめられるよってなもんで。
ああいうのは、要は理に適った反論が出せないから言い方に難癖を付けて
無効化を図ってるんですよね。

「わかんなあい」
「しらないもーん」
「あー、あー、あー、キコエナーイ」

問題はこれが小学校三年生くらいの男の子じゃないくて、充分いい年をした
オッサン、かつ、それなりの社会的地位を持つ人物だ、ということ。
こんな風に踏みつけてる側にどこまでも甘ったれながら、権力を手放さずに
いるクズだ思えば、そりゃまさに、「日本死ね」だよなあ…と。

私自身はああいう物言いが好きですし、スカッとしましたが、
日頃、そういう言葉使いを厳に慎んできた日本の女性達が、とうとう言った!
っていうことのインパクトがすごかったと思います。
(「本当に女性か書いたのか?」なんていうゲスな政治家がいましたが、ああいうの、
何か本当に、「生きた、血の通った言葉」を聞いたことが無いんだなあ…と。
スゲェなあ。あれで『国民の皆様の声を国会に届けます』なんて言えちゃうんだなあ…)
Posted by あやめ at 2016年03月13日 18:54
あやめさま、またまたコメントありがとうございます。

>誰かの意思を変えようとする時に反発が起こるのは自明ですし、
>言い方を変えたくらいで従うなら、自発的にやめられるよってなもんで

とくに差別主義者は、強く批判されないことで、
「これでいいのだ」と安心するのだと思います。
彼らは現状を維持したまま、いかに「差別している」と
批判されないようにするかを考えているので、
「言いかたに配慮する」のは、そうした願望に沿うことになるのだと思います。


むかしわたしがネットで関わった、選択的夫婦別姓の市民団体が
「言いかたに配慮する」というやりかただったのでした。
「強く批判するとかえって反対派が反発する」
「人はだれしもいつかわかりあえる」と信じていたのでした。

実際には反対派が理解を示すことはぜんぜんなく、
市民団体の人たちが適度に擁護してくれるので
安心したりそれを利用するようにさえなったのでした。
自分たちのやりかたが失敗だったと自覚した
市民団体の人たちは、いままでのことを「なかった」ことにして、
フェードアウトさせようとしたのでした。


>そういう言葉使いを厳に慎んできた日本の女性達が、とうとう言った!
>っていうことのインパクトがすごかったと思います。

「女が強く自己主張するはずない」と
たかをくくっていたのかもしれないですね。
「強く批判されない」ことに、社会が慣れすぎていたのもありそうです。

>「本当に女性か書いたのか?」なんていうゲスな政治家がいましたが、

都合の悪い相手の属性を疑うとか、属性攻撃に転嫁させるのは、
だめな「論客」にありがちだと思います。
反論できないからそういうところしか攻撃できないということです。
Posted by たんぽぽ at 2016年03月15日 21:41
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