男性の「結婚ジニ係数」なるものを算出しています。
今回はこれを見てみたいと思います。
「オトコが結婚するのに「収入」がモノをいう社会」
(はてなブックマーク)
未婚男性と既婚男性の年収分布から格差を調べ、
「男性が結婚するのにどれだけ年収がものを言うか」を示したものです。
元になるデータは、2012年に行なわれた
ISSPの「家族と性役割に関する意識調査」です。
はじめに25-54歳の未婚男性と既婚男性の、年収の累積相対度数を算出します。
横軸に未婚男性、縦軸に既婚男性の年収の累積相対度数を
プロットしてグラフを描くと、以下のようなローレンツ曲線ができます。
ピンクで塗った部分の2倍の面積がジニ係数です。
未婚と既婚とで格差が大きいほどグラフは下のほうを描くので、
ピンクの部分の面積が広くなって、ジニ係数の値も大きくなります。
日本の男性の「結婚ジニ係数」は0.535です。
さらに他国と比較したものが次の図です。
これらの国の中では日本の0.535がもっとも大きいです。
日本がいちばん「男の結婚には収入が重要」な国であることがわかりました。
欧米の民主主義国は0.35-0.40のあたりに集まっています。
韓国は0.405ですから、図中では2番目とはいえ、
欧米の民主主義国に「結婚ジニ係数」は近くなっています。
ジェンダーの調査にありがちな「日本と韓国が孤立して最下位争い」
というパターンには、ここではなっていないです。
北ヨーロッパの2国、スウェーデン、フィンランドは
さらに「結婚ジニ係数」が小さく、0.25前後です。
女性の労働力率が高く共稼ぎが定着して、年収のジェンダー格差も小さいので、
男性がとくに年収が高くなくても結婚できるということでしょう。
日本の男性は年収が高いほど未婚率が低くなることや、
それに近いものとして、男性は正規雇用のほうが未婚率が
低くなることを、これまでに何度かお話ししてきたのでした。
「結婚ジニ係数」を算出して国際比較することで、
日本の男性の未婚率と年収の関係が、またはっきりしたことになります。
「年収別未婚率の男女差」
「年収別未婚率の男女差」
「就労形態と未婚率の関係」
日本の男性の結婚に収入が大きく影響するのは、
年収のジェンダー格差によるところが大きいです。
「収入のジェンダー格差」
「収入のジェンダー格差」
「男女の年齢層別年収分布」
「男女&雇用形態別年収分布」
「年収の男女格差・国際比較」
女性は正規雇用であっても、結婚すると年収が減ることが大きいです。
それゆえ女性は年収の低い男性との結婚が経済的に難しくなり、
年収が高い男性でないと結婚できなくなることになります。
「女は結婚で年収が減る」
「年収が低い男性との結婚」
また原因と結果が逆で、男性は結婚すると年収が高くなる、
つまり既婚男性が企業社会で優遇されていることもありそうです。
それで既婚男性の年収が軒並み高くなるということです。
「男は結婚で年収が増える」
ここで重要なことは、年収の低い男性の結婚が難しいのは、
女性は結婚相手の男性に不当な高望みをするとか、
日本の女性に経済的な依存体質があるなどと
考えることではない、ということです。
最初のエントリでは、この点を2回言及しています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/03/blog-post_4.html
これは,女性たちの依存気質への批判につなげるべきではなく,
男女の給与格差が大きいこと,女性にすれば結婚・出産が,バリバリ働くことを
妨げる足かせになること,という現実と関連して考えるべきです。
このデータをどうみるかですが,「女性は旦那を頼って,
けしからん」などという解釈は筋違いです。
同じ仕事をしても給与に性差がある,女性にとって,
結婚・出産が仕事の足かせになる…。こういう現実を変えろ,
というメッセージを発するデータと読むべきでしょう
補助ブログの2015年6月13日エントリで、日本の結婚は
「恋愛感情」と「男性の経済力」の両方が必要とされているが、
欧米の民主主義国は「男性の経済力」があまり影響せず
「恋愛感情」優先で結婚する、ということをお話ししました。
「結婚と恋愛感情と経済力」
「若者が結婚できない理由」
日本の結婚は「積み過ぎている」という話が面白かった。
日本はいまだに「恋愛結婚」をしなければならない社会であって、
「恋愛感情」と「経済力」の両方が結婚に必要とされている。
結婚パターンを一つに集約するはできないが、おおまかな傾向として、
欧米の場合、特にアメリカなどは、「恋愛感情」を最優先して『経済力」という
積み荷を下ろすことで男女が結婚する方向に向かっているらしい。
女性の経済進出を進めて、男が稼いでなくても
結婚できるカップルが増えている。
北ヨーロッパはスウェーデンの場合ですが、次のような皮肉が
言われたりして、「経済力」は関係なく「恋愛感情」優先で結婚
という意識が、さらに徹底しているのでしょう。
「美術手帖 ボーイズラブ特集 感想」
>>スウェーデンには女が経済力がつき、
男は小さい頃から掃除洗濯料理育児日曜大工を教え込むから
「スウェーデンの男女は初めて愛情で結婚するようになった。
日本の男女は生活のために結婚する」という皮肉がある。
「結婚ジニ係数」の国際比較は、山田昌弘氏の『結婚の社会学』にある
こうした結婚のありかたの違いを、数値で裏付けたことになりそうです。
中国の「結婚ジニ係数」が0.039で異様に低いのが気になるところです。
この数値を信用するなら、中国の結婚はほとんど経済的事情という
『結婚の社会学』の指摘が、やはり関係しているかもしれないです。
一方で中国は、「恋愛感情」のほうの積み荷を下ろすことで
結婚難に対応しようとしている。恋愛感情は二の次で、
金持ってる人がいれば結婚するし、結婚と恋愛は別物だよという考え方だ。
ようはお金のない人が生活のためにお金のある人と結婚する、
そこに男女の別はなく、お金のない男がお金のある女と結婚することも
わりとふつうにある、というではないかと想像します。