2016年03月27日

toujyouka016.jpg 平沢勝栄・匿名記事に論難

はてなダイアリーの匿名記事「保育園落ちた日本死ね」の作者は、
国会でも取り上げられ話題になったのでした。
そのとき野次を飛ばしたひとりである自民党の平沢勝栄議員は
後日釈明したのですが、それがひどいものだったりします。

「平沢勝栄議員、番組でヤジ謝罪。
でも「本当に女性が書いた文書ですか」【保育園落ちた日本死ね】」

(はてなブックマーク)
「自民・平沢氏「保育園不満ブログ」へのヤジ認め陳謝」

3月10日にテレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」したときです。

 
平沢勝栄はそこで「本当に女性が書いた文書ですか」などと言ったのでした。
(平沢勝栄) これは私たちは反省しなければならないです。
先ほどのブログ、これ本当に女性の方が書いた文書ですかね。

高木美保:それ関係ないでしょ。女性とか男性とか関係ないですよ。


出演者のひとり高木美保氏がすぐさま反論していますが、
書いた人が女性でなかったらなんなのかと思います。
男性だったら説得力が増えたり減ったりするのでしょうか?
男性でも子どもがいれば、待機児童問題に直面することはあります。


「保育園落ちた」の記事は、同様の経験をしているかたが
たくさんいる現実であること、そして抗議集会や署名に発展するほど
多くの人の賛同や支持を得ていることが本質的で重要なことです。

「「保育園落ちた」集会と署名」

匿名記事の作者は同様の状況にあるかたたちの代表であり、
「不特定多数の中のひとり」とでも言えるものです。
具体的にだれかとか、どんな属性の人かを特定したり問題にするのは、
ほとんど意味がないことだと言えます。

安易に属性を懐疑したり、属性批判に転化させるのは
「だめな論客」にありがちなことだと言えます。
効果的な反論ができないから、属性を攻撃するのでしょう。
「保育園落ちた」の作者は新聞社の取材を受けていて、
そこでは女性と名乗ったことは確かめられています。

「「保育園落ちた日本死ね!」 匿名ブロガーに記者接触」
記者がメールでブログの主に連絡を取ると、東京都内に暮らす
30代前半の女性と名乗った。夫と間もなく1歳になる男児と3人暮らし。
事務職の正社員で、4月に復職の予定だったが、
保育所に子どもを入れられなかったという。

さらに言えば、気に入らない主張をしているのが女性のとき、
「本当に女なのか」とか「実は男ではないのか」と言い出すのは、
それこそネットの「だめな論客」の典型だと思います。
容姿攻撃、年齢攻撃、ネカマ呼ばわりは、
相手が女性のときしばしば出てくる3要素だと思いますが、
差別的な女性観も染み出て陳腐きわまりないと言えます。


平沢勝栄は「保育園落ちた日本死ね」の記事は
「匿名だから信用できない」ということも言っています。
同様のことを共同通信の取材でも言っていて、
山尾志桜里議員の発言を予算委員会の議事録から削除することを、
求めようともしているのでした。

――じゃあ、ヤジの中身にいきますね。「誰が書いたんだそれ」って言いましたよね。

出典が明らかでなければ使えないということがあるから。
その前の段階として、こういう形で山尾さんがなぜ出したんだと。
「自民党が止めた」と言ったことに対して、その延長線でこう言ったわけです。


「保育園落ちた」の記事は、前述のように「だれが書いたか」ではなく、
「同様の状況のかたがたくさんいる」ことが大事です。
書いた内容が現実的であることが本質的なことであり、
極端なお話、出典なんてなんでもいいとも言えます。

安易に「匿名批判」をするのも「だめな論客」にありがちです。
「保育園落ちた」の記事は、自身のツイッターも解説しているし、
上述のようにメディアの取材を受けて、簡単なプロフィールが明かされ
実在の人物であることは確かめられています。
ネットの議論という観点からすれば「匿名でない」と言えます。

「「匿名」による批判の禁止ルールについて」
「「匿名」による批判の禁止」

平沢勝栄はつぎの1.をもって2.を主張したいのなら、
2.が事実と反するので、1.を根拠にしたところで間違いです。
2.が証明できないので、ことさらに1.を強調するのなら、
効果的な反論ができないので、匿名批判に転化していると言えます。

1. 匿名で出典がわからないので信用できない
2. よって待機児童が不足しているというのも信用できない


平沢勝栄はさらに「日本死ね」という表現が問題だとしています。
「日本滅びろ」ならよかったのでしょうか?
この表現については、議論の余地はあるかもしれないです。

ここでの「日本」は「日本社会」のことであって、
特定もしくは不特定のだれかを指しているのではないです。
いじめられっ子のような社会的弱者でもないです。
よっていじめのときの「あなた死ね」と同じではないでしょう。

例えばいじめの時、「あなた死ね」ということはよくあるんです。
このなんとか死ね、っていうことに市民権を与えるのがいいのかということです。
そういう表現を使うことはどうかなと。

――それくらいの思いということが共感を呼んでいるんです。

それは分かっていますけど。「日本死ね」っていう表現はよくない。
私たちは、保育の問題や待機児童を軽く見ているわけではありません。

相手の主張の中に出てくる攻撃的な語句を取り上げて
ことさらにそれを批判するのも、「だめな論客」にありがちです。
これも内容に対する効果的な反論ができないので、
そこにある特定の語句にだけ噛み付いているのだと思います。

匿名ブログの作者のような日本社会に対峙する一市民という
社会的弱者にある人に対して、特定の語句を執拗に批判すると、
弱者の発言に対する抑圧として働くことになります。
弱者にことさらに「聖人君子」であることを
要求することになるので、差別的にもなります。


平沢勝栄は「日本死ね」がヘイトスピーチに該当する
可能性を示唆さえもしています。

「自民・平沢氏「保育園不満ブログ」へのヤジ認め陳謝」
自らが委員長を務める自民党の「差別問題に関する特命委員会」にも出席し
「ブログに『死ね』という言葉が出てきて違和感を覚えている」と述べた。

「日本死ね」がヘイトスピーチでないことははっきり言えます。
ヘイトスピーチというのは、差別構造がある状況で
強者側から弱者側に対して向けられる憎悪表現を指すからです。
弱者側から強者側に向けられる場合は、ヘイトスピーチとは言わないです。

前述のように「日本」は「日本社会」のことですから、
差別構造上の弱者でないことは明らかです。
匿名記事を書いた本人も「日本社会」に属する一員ですから、
他者に向けられているものでさえないと考えることもできます。

あえて特定または不特定のだれかを指すと考えたとしても、
それは日本社会における体制側の人間、
既得権益層や為政者を指すことになるでしょう。
彼らは社会構造上の強者になるので、
やはりヘイトスピーチに該当しないことになります。


平沢勝栄が「羽鳥慎一モーニングショー」に出演したのは、
2月29日の衆院予算員会で、山尾志桜里議員の質疑に対して
野次を飛ばしたことに対する釈明でもあったのでした。

http://www.huffingtonpost.jp/2016/03/09/katsuei-hirasawa-hooted_n_9423292.html
話題の匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」をめぐり、
2月29日の衆院予算委員会で質問した山尾志桜里議員(民主党)に対して
ヤジを飛ばした自民党の平沢勝栄議員が3月10日に
テレビ出演し、ヤジを飛ばしたことを謝罪した。

予算委員会では、山尾氏がブログの内容を読み上げる最中に、
議員席から「誰が書いたんだよ」「中身のある議論をしろ」
「本人に会ったのか」などのヤジが飛んだ。
平沢氏はヤジを言った一人で、この日、
テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」に登場した。

この期におよんで、
1. 属性批判への転化
2. 匿名批判への転化
3. 特定の語句に対する批判への転化
という「だめな論客」の典型と言える批判を繰り広げて
記事の内容にはろくに触れず論難ばかりつけるというわけです。

内容にはぜんぜん反論できず、ただひたすら不愉快だった
ということではないかと想像します。

posted by たんぽぽ at 22:24 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
この件、前にちょっとだけ触れましたけど、

>平山勝栄議員

お詫びするだの殊勝なことを言っていたとしても、所詮は口先だけの釈明でしょう。
あそこでヤジを飛ばしたことの”ゲスさ”加減なぞ考えてもいなさそうです。
女子供の支持を取り付けなくても、組織票があるからダイジョーブ!
な大物議員様には、少子化問題なぞ国家大計非ず、ってとこでしょうか。

ダメ論客のダメ論客たるゆえんは、”聞いてやる”というポーズを取りつつ、
散々説明させた挙げ句、結局聞く気は無い、というところに尽きると思いますが、
案外それは意図したものではなく、素なのかも知れません。
 
日頃どれだけ自分の意向に逆らわない、自分に都合の良い言葉だけを聞いているか、
それで何の支障も無いか、いかに弱者の声を聞く必要が無いか、つまりはそれだけ
いかに大きな既得権益を持っているか、の証左のように思います。

訴える側は生活どころか(大げさではなく)命まで掛かってさえいるのに、この温度差。
『国民の皆さまの声を国会に届けます』などど白々しくよくも言えたものです。
Posted by あやめ at 2016年04月05日 03:39
こちらにコメントありがとうございます。

>お詫びするだの殊勝なことを言っていたとしても、所詮は口先だけの釈明でしょう

「本当に女性が書いた文書ですか」とか、
ごちゃごちゃ論難をつけていますからね。
「失礼なことをした」と思っている態度ではないですね。
「保育園落ちた」の匿名記事が気に入らないことに
変わりはないということなのでしょう。

>女子供の支持を取り付けなくても、組織票があるからダイジョーブ!
>な大物議員様には、

「保育園落ちた」にはごちゃごちゃと論難をつけたほうが、
組織票以外の票も集まるのかもしれないです。
そういう人たちが支持層ではないかと思います。


>『国民の皆さまの声を国会に届けます』などど白々しくよくも言えたものです

彼らが意識している「国民」も、「保育園落ちた」に論難つけると
支持するような人たちではないかと思います。
そういう人が「ふつうの国民」と思っているかもしれないです。
「オンナコドモ」は「ふつうの国民」には入らないということでしょう。
Posted by たんぽぽ at 2016年04月06日 22:39
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