国会で取り上げた、山尾志桜里議員のインタビュー記事を
補助ブログの4月2日エントリで見てきました。
「<山尾志桜里議員インタビュー>「絶望の中から希望が生まれた」ー待機児童問題」
(はてなブックマーク)
この記事にはなぜ保育所が不足するのかについても触れています。
この分野に深く関わっているだけあって詳しいです。
保育所が不足する理由は、やはり保育士が不足するからです。
免許を持っているのに保育士にならない人も多いことは、よく指摘されます。
なぜ保育士さんたちが少ないのかというと、安倍政権では、資格保有者の不足、
既に資格を持っている人が復帰できないことにあると考えています
現状は、免許を持っている人の中で、3分の1の人しか
保育士さんとして働いていないんです。
ここには保育士も子どもがいる親なので、子どもを預けられないことがあります。
他人が子どもを預けて働けるために、保育士が犠牲になっているかのようです。
“保育士さんもママなんですよ。保育士さんが保育園に子どもを入れられなくて、保育士さんたちも復帰できない。さらに、復帰しても、給料が低いため自分の子どもを保育園に通わせるだけの生活ができない” / “<山尾志桜里議員インタビュー>…” https://t.co/kfihO6nclb
— akupiyo (@akupiyocco) 2016年3月21日
ほかの理由はやはり保育士の給与が少ないことです。
これはこれまでにも何度かお話していることです。
「保育士の給与はなぜ低い?」
「保育所が増えない理由」
「いくら稼げる? 129職業の年収ランキング」
保育士の平均給与が低くなるのは、民間の保育所が増えることによります。
以前こんなコメントをいただいていました。
ここでも他人が子どもを預けて働けるために、
保育士が犠牲になっているかのような状況といえます。
http://taraxacum.seesaa.net/article/430375545.html#comment
働く親達のキャリアアップを、パート保育士の安い賃金で支えているわけですから、
ここに大きな格差構造が発生するというのは、皮肉なことです。
(Posted by うがんざき at 2015年11月29日 13:19)
http://taraxacum.seesaa.net/article/435341415.html#comment
現実には、多くの民間が参入してくれるから
待機児童は減る、親は助かる、ということにもなります。
しかし保育労働者の低い給与に依存しなければ、民間参入は不可能です。
認可が増えれば増えるほど、ますます保育士の平均給与が
下がっていく、というジレンマが起こります。
(Posted by うがんざき at 2016年03月20日 23:17)
保育士の不足問題に対して、安倍政権は学資手当てを
20万円支給する案を出しています。
1回だけお金をもらっても、そのあとがずっと低賃金では
生活は難しいですから、これで保育士になろうとする人が
増えることは、ほとんど見込めないでしょう。
保育士さんたちの再就職のために、20万円あげてもダメなわけなんですよ。
1回20万円もらっても、保育士さんたちが子どもを保育園に預けられるのか、
これから先も保育士さんとして働き続けて、
月給で生計が成り立つのかといったら、厳しい
安倍政権はなぜに恒常的に賃金水準を引き上げようとせず、
1回だけの手当て支給でお茶を濁すのかと思います。
問題の本質がやはりわかっていないのと、
財源を回したくないと考えていることではないかと想像します。
安倍政権は保育士を増やすよりも、保育所を建てることに熱心です。
安倍政権は、ハコ(保育園)作りを強調するんですよね。
ただ、そこにハコがあっても、保育士さんたちが足りなければ、
そこに預けることができない。
そのため、私たちはまず、人を優先させるべきだと考えています
なぜなのか考えられる理由としては、もともとこの問題に対して
知見がほとんどないので、官僚の推進する政策「子ども子育て新制度」を
そのまま主張していることがありそうです。
「保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日)」
もうひとつは「ハコ」を増やしたほうが建築業界が儲かるという、
「人よりコンクリート」の発想ではないかと想像します。
2010年の閣議決定で、保育所の増設に力を入れ出したのですが、
この計画は順調に進んで、保育所の数を増やすという課題は
だいぶ解決に近づいたのではないかと思います。
「保育所の数が増えている」
2010年の段階では「質も大事だけどその前に数」という
状況だったのですが、2016年の現在は質の向上に
重心を移す段階に入ったということなのでしょう。
保育所の数を増やすことも、まだ必要なところはあります。
特に都市部では過密で数を増やせないことと、保育所を建てることに対する
周辺住民の賛同が得られないということがあります。
ハコ作りのための予算はじゅうぶんあるということです。
ハコ作りも不要だとは言いません。
都心部で、保育園が足りていないところもあって、
それをやらなきゃならないところもあります。
けど、今起きているのは、都心部のいくつもの自治体で、
作れるだけのお金は用意しても、実際作れていないんですよ。
自治体によっては施工率5割切っているところもあるんです。
それはなぜかといいますと、一つは、近隣に住む方の賛同が得られない、
ということもあるんです。
このあたりは、補助ブログの3月20日エントリでご紹介の
フローレンスの駒崎弘樹氏が指摘する「物件の壁」になります。
「「保育園落ちた日本死ね」と叫んだ人に伝えたい、保育園が増えない理由」
(はてなブックマーク)
保育所は二方向避難路の確保や新耐震基準を満たしているなど、
安全に運営するために必要な要件がどうしても多くなります。
それを満たしていて、かつ周辺住民が文句を言わず、
かつ保育所としてペイする坪単価で、駅からの距離が
そこまで遠くない物件というのは、非常に限りがあります。
自治体が保育所の建設を抑制したがる理由はほかにもあって、
それも駒崎弘樹氏の記事で指摘されています。
役人が保身に走るということです。
待機児童の常態化によって、「待機児童が解消できなくても、
担当者の評価はマイナスにならない」ためです。
一方で、保育所で事故や突然の事業者撤退があり
問題になると、評価に大きく影響します。
すなわち、自治体(と担当職員)からすると、
園を増やそうというインセンティブよりも、間違いのない事業者を
選別する方が強い動機となり、参入を抑制するのです。