野党共同で、保育士の賃金をひとりあたり5万円引き上げるための
議員立法を衆議院に提出しました。
「保育士月給5万円増=民主」
「「保育士の月給5万円増」法案を提出 民主など野党5党」
時事と朝日の記事はいずれも短いので全文引用します。
民主党は22日の「次の内閣」会合で、保育士の給与を
1人当たり月額5万円引き上げる法案を了承した。
当初は引き上げ幅を1万円としていたが、
党内外から「不十分」との指摘を受け、上乗せした。
近く維新の党と共同提出する方針で、他の野党にも賛同を呼び掛ける。
保育士の平均月収は20万円前後とされるが、低賃金のため、
資格があっても働かない潜在保育士が相当数おり、
待遇改善が課題になっている。(2016/03/22-20:46)
民主、維新、共産、生活、社民の野党5党は24日、
保育士らの賃金を1人あたり月5万円引き上げるための議員立法を衆院に提出した。
保育士の平均賃金は月約22万円で、全産業平均より11万円ほど低い。
保育士不足の要因の一つとされ、改善を図る狙いだ。
保育士や幼稚園教諭、事務職員らの賃金引き上げに取り組む
保育事業者らに対し、助成金を支給する。
児童養護施設や放課後児童クラブなどの職員の処遇改善にも取り組む。
対象者は計47万3千人で、必要な財源は年約2800億円と試算。
公共事業削減や租税特別措置の見直しで捻出するとしている。
この法案はもとは1万円引き上げだったのでした。
さすがにあまりに少額すぎると異論や批判が出て、
引き上げ額を5万円にしたのでした。
匿名記事「保育園落ちた」に対する世論が想像以上に
高まったこともあるのでしょう。
「保育士賃金引き上げ、野党議員立法へ 月額1万円増想定」
保育士賃金引き上げ、野党議員立法へ 月額1万円増想定:朝日新聞デジタル https://t.co/RuWYPtGicm …いやせめて5万円は上げろよ。 pic.twitter.com/gFLjLEg3YM
— 破レ傘(横浜駅取材班) (@kenketsumiyagi) 2016年3月11日
民主党(民新党)は、全産業平均を目指してはいて、
引き上げ1万円はその第一歩という位置付けではあったのでした。
「保育士が不足する理由」
「保育士の待遇改善の財源」
「<山尾志桜里議員インタビュー>「絶望の中から希望が生まれた」ー待機児童問題」
(はてなブックマーク)
まずは保育士さんの給与アップというのを法律にして、
今国会に提出しようと思っています(取材後、民主党と維新の党が月1万円の
賃金上昇を想定する議員立法を提出する方針を固めたと発表されたが、
翌日確認したところ、「目指すべきところは全産業平均。
ただ、今回の給与1万円アップはその第一歩という認識です」とご回答を頂いた)。
駒崎弘樹氏の算出ではひとりあたり10万円引き上げないと、
全産業平均並みにならないとしています。
「第一歩」であったとしても、たかだか1万円程度の引き上げ
というのは、お粗末と言えるでしょう。
「保育所が増えない理由」
「「保育園落ちた日本死ね」と叫んだ人に伝えたい、保育園が増えない理由」
(はてなブックマーク)
保育士不足は保育士の処遇が低いことが要因です。
保育士給与は全国平均で月20.7万円。(出典: http://bit.ly/1HwTytD )
全産業平均と比較して、月額10万円程度低い。
しかし、政府はこの保育士の処遇改善の予算をわずかしか取っていません。
月額1万円を上げるのに340億円、全産業平均値まで
上げるのに3400億円を予算として積みませば、
保育士処遇は改善し、開園スピードは大きく早まります。
気になる財源は「公共事業削減や租税特別措置の見直しで捻出」です。
金融緩和によって作られた財源は、公共事業よりも
福祉の働き手を増やすために使うべきという指摘もあります。
4月3日エントリでも触れていますが、
公共事業から財源を回すのは、結構だろうと思います。
「財政政策・福祉と公共事業」
「左派こそ金融緩和を重視するべき 松尾匡・立命館大教授」
(はてなブックマーク)
「ひどい不況の時、金融緩和で作ったお金は、
直接には使われず銀行にため込まれてしまう。
だから、そのお金が世の中に回る仕組みをつくるために、
安倍政権は旧来型の公共事業を第2の矢として実行し、それが効いた。
質はともかく、景気が拡大する方向への力が働いているのだと思う。
本来は、公共事業よりも、介護や福祉の働き手を増やすために使うべきではあるが」
公共事業は雇用をあまり作り出さないので、
デフレ脱却対策としては効果が薄いという指摘もあります。
その観点からも公共事業から財源を回すのは妥当でしょう。
「失われた20年と民主党」
「政治と経済の失われた20年 ―― データから語る日本の未来」
わたしは自民党が掲げる金融政策はまっとうだと思う一方で、
デフレを脱却するために公共事業をすると
語られている点についてはあまり評価していません。
現在、インフラの整備などの公共事業には
高度な技術や資格が必要とされています。
昔のように頭数を集めて、体力勝負で行う事業はなかなかない。
つまり公共事業に予算を投じても、あまり雇用に結びつかないのですね。