2016年04月16日

toujyouka016.jpg 性暴力の加害者の特徴

強姦をはじめ痴漢、セクハラなどの性暴力の動機はなにか、
加害者はなぜ性暴力を起こすのか?という問題を考えます。
ひとことで言えばそれは「力の誇示」です。「性欲の処理」ではないです。

「性暴力の加害者の特徴」
「加害者視点の性暴力研究 性欲の「物語」を批判」
「レイプとは何か」
「レイプにまつわる「迷信」」
「なぜ人はセクシュアル・ハラスメントをするのか」

性暴力や性被害に詳しいかたなら常識的なことだと思いますが、
今回はこれについてお話することにします。

 
http://anond.hatelabo.jp/20090417170833
性暴力の動機
目的は、性的欲求の充足ではない。攻撃、支配、優越、男性性の誇示、
接触、依存などさまざまな欲求を、性という手段を用いて
自己中心的に満足させようとする「暴力」の一種。

http://www.macska.org/saic/rape.html
レイプの最大の動機はセックスそのものではなく、力の誇示です。

「なぜ人はセクシュアル・ハラスメントをするのか」
その4
では、なぜ人は強姦やセクシュアル・ハラスメントをするのでしょうか。
相手に性欲を感じたのでやりたいと思った?相手が魅力的で異性として惹かれた?
全く違います。いろいろな調査からわかっていることは、
加害者は『相手を卑しめ辱め威圧したい』のです。


なぜ性暴力という手段で力を誇示したいかは、
さまざまな理由が考えられると思います。
自分の自信のなさや不満に対する転嫁は大きな動機のひとつです。

「セクハラする男性の(深層)心理:」
女性蔑視、相手へのコンプレックス、自分の能力への密かな絶望感と無力感、
自分の人生は失敗したと内心では思っていること。
また相手の女性の能力(可能性)への嫉妬。
(女性蔑視をすることにより、男である自分の優越感を確認し、
自信のない自分を立派に見せかけたい。
ただし"張子の虎である"ことは悟られたくない)

家庭内の人間関係への不満、仕事上の不満を晴らすため。
(大人としての人格形成が未熟なため、
自己責任を他人のせいにしてウップンを晴らす)


性暴力の加害者を研究している牧野雅子氏が、
実際の加害者にヒアリングしたところ、
加害者は権力関係に敏感であることが述べられています。

この加害者は、相手が自分より力があることが恐ろしく、
力で自分が相手に優越することで安心しようとする、
ということではないかとおそらく思います。

http://blog.livedoor.jp/ishikawamao/archives/66115722.html
権力関係に敏感で、男性への対抗意識が強く、
私に対してはへりくだる時もあれば上から目線の時もある。
力に対しておびえている。
そのおびえが性暴力として現れたのだと分かった。


「性暴力に走るのは性欲を処理するため」という、
よく言われることは、性暴力に対する誤解ということになります。
上述のように、性暴力の動機は「力の誇示」であって、
性欲の処理ではなく、性暴力加害者の中には、
ほかに性的なパートナーがいることも珍しくないくらいです。

http://www.macska.org/saic/rape.html
加害者の多くには他に性的パートナーがいます。 
性的欲求が満たされないための犯罪とは限らないのです。

http://www.macska.org/saic/myth.html
迷信8『レイプをするのは性生活に不満を持っている異常な男だけだ』

レイプの加害者は普段は普通の暮らしを送っています。
レイプの動機は単に性的欲求ではなく、力の誇示です。
レイプ犯に心理テストを取らせても、ほとんどの場合は
特に変わった特徴や精神異常を見せることはありません。
さらに、ほとんどの加害者にはレイプという
手段に及ばなくても性行為のできる相手がいます。

さきの牧野雅子氏がヒアリングした性暴力加害者は
「性欲じゃない」と笑い飛ばしていました。
加害者が直接「性欲ではない」と語っているということです。

http://blog.livedoor.jp/ishikawamao/archives/66115722.html
少なくとも加害者からは性欲の話は出なかった。
それどころか『性欲じゃないですよ』と笑い飛ばしていた。
本音の部分は本人も多分分かりたくない。
不可抗力で巻き込まれてしまったとか、
新しい世界を見たなどと日記や手紙に書いていた。



「性産業やポルノを規制すると性犯罪が増える」とか
「性産業やポルノを認めれば性犯罪の抑止になる」と
主張するかたが、以下のエントリのコメント欄にいらっしゃります。
これは「性暴力に走るのは性欲の処理のため」という、
よくある誤解にもとづく意見であると言えます。

「女性にとって性を売ること(2)」

スウェーデンが理想の売買春政策を実行している国なのかについて調べてみました。
2.スウェーデンでは日本の50倍ほどの強姦事件が起きています。
これは移民政策も関係しているとは思いますが、
それだけではノルウェーとの差が説明できないように思います。
http://totb.hatenablog.com/entry/2015/03/23/203802

(2016年03月12日 01:04)
今は妻と娘が大事なので、彼女たちの安全安心を第一に考えます。
買春を法律で禁止することでレ イプが増えるというのでは困りますね。

(2016年03月12日 01:04)
スウェーデンで買春側を摘発するようになってから、
強 姦の認知件数は約3倍に跳ね上がっています。
この事実は、この政策に狙いの効果が無かったことを示しているように思えます。

(2016年03月14日 00:13)
私が一番困るのは、持て余した性欲を一般の女性に
向かって暴力行為で解消してしまうレ イプ犯罪の増加です。

(2016年03月29日 23:07)
スウェーデンの2006年以降の性犯罪の急増は、
児童ポルノの所持規制と一致しているという主張を見つけました。
http://sightfree.blogspot.jp/2010/11/blog-post.html

(2016年04月08日 01:22)
強姦犯罪者が全てたんぽぽさんが主張するタイプではなく、
ポルノなどで性欲が解消されれば性犯罪は減ります。
引用HPの日本の強姦(認知)件数/年グラフと、
日本の未成年強姦件数/年グラフを参照して下さい。
http://sightfree.blogspot.jp/2013/06/blog-post_29.html

(2016年04月11日 00:20)

上でお話したように、性暴力の動機が「力の誇示」であって
「性欲の処理」でないので、こうした主張には意味がないことになります。
統計を持ち出されたところで、疑似相関やこじつけでしかないでしょう。


性産業や性的メディアが性暴力の抑止になるとしたら、
「力の誇示」のために女を買うタイプに対してだと思います。
日本の性産業の客は強姦まがいのことをすることも珍しくないので、
「女を買う」ことで自分の力を誇示するタイプの客も、
もしかするといるのかもしれないです。

以前、お話しさせていただいた友人によれば、
ほとんどの客が性交渉(いわゆる本番、しかも避妊具未装着で)を
要求してくるそうです(彼女の働いているところは
禁止されているにも拘らず、です)。

もっとも日本の性産業は世界的に見ても歪で、
「女性が口や手を使って奉仕する」形態が中心となっています。
つまり、対等な立場にいないことを前提としたものです。
その上に立って性交渉を教養することは、もはや強姦に等しい行為です。
ですが、実情ではこれが公然と行なわれるケースが
少なくないそうです(つまり店側もある程度了承している)。

(2016年03月19日 14:17)

このようなタイプの客が実際にいたとして、
彼らのために性産業を認めたところで、
性産業に従事する女性の基本的人権をはじめ、
労働者としての権利を守れるのか、という問題が出てくるでしょう。
こうしたタイプの客は、そもそもが性産業従事者の
尊厳を傷つけるために「女を買う」からです。



謝辞:

「女性にとって性を売ること(2)」のエントリで、
(2016年03月19日 14:17)のコメントをくださった
aka21さま、ありがとうございます。



関連エントリ:

「性暴力加害者の研究」
「セクハラのメカニズム」

posted by たんぽぽ at 14:51 | Comment(6) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽ様

あれからいろいろと自分でも考えてみました。
そしてようやく無知な自分でもわかった気がします。
ようするに性暴力犯罪者にとっての「性」というのは、目的ではなくて手段なのですね。
だから出発点が違うから、いくら性欲を解消させたところで意味がないということになる。

ところで、日本の性産業がいびつだと、以前書きました。
それはとある外国人が、日本の風俗を指してこう語ったことを覚えていたからです。
「日本は素晴らしい国だ。なにしろ女がオーラルセッ クスなんて変態的な行為を進んでしてくれる。(自国なら)別料金だぞ、普通」
通常の性交と異なる口を使った奉仕は、それだけでも十分、屈辱を強いる行為だと思います。しかし、この国ではそれが当たり前で、通常の性交をしていないのだからと許されます。
ゆがんだ価値観だとしか思えません。
そして、そんなゆがんだ価値観から成立している性産業は、やはりゆがんだ妄想・思想しか生まないのでしょう。
覚えているのは数年前に小学生男子数人が、アダルトビデオと同じ行為を試したかったという理由で、クラスの女子を襲ったというニュースです。
彼らは何に興奮したのでしょう。
性的な欲求でしょうか、それとも、そのビデオで描かれた、女性を屈服させる姿だったのでしょうか。
Posted by aka21 at 2016年04月21日 20:24
aka21さま、こちらにコメントありがとうございます。

>ようするに性暴力犯罪者にとっての「性」というのは、目的ではなくて手段なのですね

そうなのですよね。
性暴力は性欲を手段、道具にした暴力ということなのですよね。
(なので性欲が必要ではあるのでしょうけれど。)

>「日本は素晴らしい国だ。なにしろ女がオーラルセッ クスなんて
>変態的な行為を進んでしてくれる。(自国なら)別料金だぞ、普通」

「風俗店がある」「売買春が合法化されている」と言っても、
単純に比較はできなさそうですね。
この点についても、日本では性産業従事者の権利が
他国と比べて認められていないことになりそうです。


>数年前に小学生男子数人が、アダルトビデオと同じ行為を
>試したかったという理由で、クラスの女子を襲ったという

尼崎の事件ですね。
2006年なのでもう10年前ですね。
http://matome.naver.jp/odai/2141675629893550301

被害者の女の子は「ボーイッシュで、日頃から男の子顔負けの
活発な女の子」だというから、加害者の男の子たちは辱めたい、
いやしめたいという意識だったのだろうと思います。

アダルトビデオが「辱めいやしめる」ための
「手段」を教えたということなのでしょう。
アダルトビデオもかなり悪影響なものだと思うし、
そういうものを小学生が観られるようにしている
というのも問題だと思います。
Posted by たんぽぽ at 2016年04月22日 22:57
たんぽぽ様

自分は日本の性産業が歪んでいると申し上げているのは、日本の性産業の形態が決して性欲を解消するためのものではないと感じているからです。

それは日本の性産業従事社に対する表現からも理解できます。
一部の利用者は彼女らを「便器」と呼びます。
つまり彼らにとって、彼女らは性欲を解消するためのサービスを提供するサービス業従事者ではなく、排泄を促すための設備に過ぎないのです。

たとえば人の欲求には睡眠欲というものがありますが、この睡眠というものは如何に長い時間眠っても、眠気が解消されないと言うことがあります。それは睡眠の質の問題で、深い眠りに至れないために実質的な睡眠不足に落ち入っているからです。

また食欲にしてもそうです。食事をしただけで食欲は満たされません。食事をした後に爽快な排便をしなければ、食事という一連の行為は完結しないし、また欲求もすべて満たされることはありません。

翻って日本の性産業はどうかと言えば、これは性欲を満たすというよりは、射精を促すだけの行為に過ぎないものです。そして多くの場合、単なる行為としての射精は、排泄と何ら変わりがないのです。

しかもそうした自慰行為の延長に過ぎないものを手伝わせるという、ある種の恥を覆い隠すためなのか、相手に必要以上の屈辱を要求します。まさにものであるかの如く扱うことで、自分の尊厳を守ろうとします。
それが日本の性産業の大多数です。

そんなクソくだらない見栄のために、一個の人間が尊厳を投げ打たなければならない意味など、あっていいわけがない。なぜ感謝できない、なぜ、ありがとうと言えない、なぜうれしいと言葉にしない。

ラーメン屋でおいしいラーメンを食べたら、ごちそうさまと言うでしょう。なぜ、それができないのか、日本暖性の多くは、いつの間にかそんな安い人間のクズに成り下がっているのが現実なんですよ。

正直、このままの形であるのなら、性産業が国家運営になろうがどうしようが、何一つ変わりません。自分達のやっていることがハラスメントそのものであると言う自覚がなければ。

自分は性産業そのものを否定するつもりはありませんが、この国の腐りきった体質は本当に悔しくて仕方がない。恥を知れといいたい。人を踏みつけて成立する何かなど、間違っているのだ。
Posted by aka21 at 2016年04月24日 16:47
aka21さま、またまたコメントありがとうございます。

>自分は日本の性産業が歪んでいると申し上げているのは、
>日本の性産業の形態が決して性欲を解消するためのものではないと
>感じているからです。

いただいたコメントの主旨を、わたしがじゅうぶん
理解していないようでしたら、まことにもうしわけないです。


>それは日本の性産業従事社に対する表現からも理解できます。
>一部の利用者は彼女らを「便器」と呼びます。

>正直、このままの形であるのなら、性産業が国家運営に
>なろうがどうしようが、何一つ変わりません。
>自分達のやっていることがハラスメントそのものであると言う自覚がなければ。

べつのところで、スウェーデンの性産業従事者が、
自分たちの生活のために、労働者としての権利を求めている
というお話があったのでした。

これも現時点である程度以上、性産業従事者の権利が
保障されているスウェーデンだから言えることもありそうです。
(そこでもこういう意見はありましたが)

日本の性産業従事者でスウェーデンの性産業従事者と
同じように主張できるかたは、ずっと少ないかもしれないです。


>自分は性産業そのものを否定するつもりはありませんが、
>この国の腐りきった体質は本当に悔しくて仕方がない。

性産業従事者の労働環境の改善は必要だし、
それである程度は解決するのでしょうけれど、
それだけではふじゅうぶんなようですね。

なにより「買う男」の側の意識が変わらなければならない、
それは簡単にはいかないことだろうと思います。
Posted by たんぽぽ at 2016年04月25日 22:36
「ポルノと性暴力との関係」と迷ったのですが、こちらに。

>尼崎の事件

aka21さまのご指摘は、誠にごもっともで、心から共感を持って拝読したことでした。

しかし悲しいことに、実のところ同様のケースは複数発生しているようです。
昔いじめ問題を扱った報告書を読んだことがあります。
そのなかで同様のケースが報告されていました。
やはり小学生同士の男女、被害者はいじめを受けていた女児。
複数人の男児が学校内で、だそうです。
その後の聞き取り調査によると、
「あいつ臭いんだもん」
「(だから)調べてやったんだ」
「ニオイは元から絶たなくちゃ」
と言っていたとか。
尼崎よりもだいぶ前、1990年代だったと記憶しています。
立件されたかどうかは不明です。
首謀格の男児は体格も良く、大変大人びていた。
まるで(ある種の)大人の男のような振る舞いだった、
と報告書では指摘されていました。

彼らはいじめを行うことで攻撃欲や嗜虐心と満たしていたのに、
いや、攻撃欲や嗜虐心を抑制されなかったからこそ、彼らは
性犯罪までも『いじめ』の範疇に収めてしまった。
このケースでは外部からの直接的な刺激は報告されていなかった
ように記憶しています。
彼らがどの程度、自分の中に性衝動を認めていたのかわかりません。
間違いなさそうなのは幾分かの好奇心。
しかしそれは彼らが毎日楽しんでいた嗜虐心と攻撃欲を上越すもの
だったとは、私には思えません。

>不可抗力で巻き込まれてしまった
>新しい世界を見た

この、加害者の意識との目もくらむような乖離…
もうどうしたらいいのかわからなくなります。何が法だ、と。

------------------------------------------------------

おまけに付け加えるようで気が引けますが、かの事件での、
彼女とご両親の、周囲の方々の勇気を心から称えたいと思います。

あなたは正しい。あなたは賢い。あなたは勇敢だ。

と。
Posted by あやめ at 2016年05月07日 16:32
あやめさま、こちらにコメントありがとうございます。

>>不可抗力で巻き込まれてしまった
>>新しい世界を見た
>この、加害者の意識との目もくらむような乖離…

この部分、わたしの引用は半分くらいになっているけれど、
まだ続きがあるので、それもここで引用しておきます。

http://blog.livedoor.jp/ishikawamao/archives/66115722.html
========
少なくとも加害者からは性欲の話は出なかった。
それどころか『性欲じゃないですよ』と笑い飛ばしていた。
本音の部分は本人も多分分かりたくない。
不可抗力で巻き込まれてしまったとか、
新しい世界を見たなどと日記や手紙に書いていた。

本人の中でも後付けの解釈になってしまうので、
かわいそうな自分として物語を作ることもできれば、
暴力性をもった別人として描くこともできる。
結局本人もよく分からないと言いながら刑務所に行った。
========


>かの事件での、
>彼女とご両親の、周囲の方々の勇気を心から称えたいと思います。
>あなたは正しい。あなたは賢い。あなたは勇敢だ。

わたしも同じく称えることにします。

尼崎の事件は10年前なので、事件の加害者や被害者は
現在はたちくらいですね。
どうなっているのかと思います。
Posted by たんぽぽ at 2016年05月08日 08:12
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