2016年04月20日

toujyouka016.jpg 女の子はキャバクラへ?

4月17日エントリ4月18日エントリの続き。
自民党の赤枝恒雄衆院議員の貧困自己責任論です。

「「進学しても女の子はキャバクラへ」自民・赤枝氏発言」
(はてなブックマーク)

「児童擁護施設出身大学生の要望に「進学は自己責任」
「女の子はキャバクラに行く」という赤枝議員発言の意味」


今回は発言の中でももっともエキセントリックかつ核心の、
「進学しても女の子はキャバクラに行く」を見てみたいと思います。

 

とりあえず中学校卒業した子どもたちはね、
中途半端に出てその後に、仕方なく親が行けってんで通信に行ったりしながら、
やっぱりだめで女の子はキャバクラ行ったりとかですね。
実際望まない妊娠が結局いま中学校、それから40歳以上の、
まあ40歳以上は望んでいるんですけど、出産増えているのはその世代なんですね。
20歳、30歳は全然産みませんから。

そういうことで望まない妊娠するってのは、
できちゃった婚は10代で80%ができちゃった婚なんです。
本人の、ある程度計画性のない結婚、80%ですよ。
それから離婚する、若くて、離婚したひとり親になる原因は離婚ですから。
ほとんどは。その離婚した後のご主人からの仕送りがある人は
本当に一部なんですよ。だからそういうことで貧困になっていく。


赤枝恒雄は「女の子が進学すると貧困になる」と言いたいようです。
「中学までのお勉強もできないのに進学するから、
ものにならなくてキャバクラ行ったり、できちゃった婚したりして
貧困に陥るのだ」ということのようです。
こういう認識は、わたしは初めて聞きましたよ。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/sendayuki/20160413-00056549/
アメリカなどの事例をみても、若い女性の不安定な妊娠は、
金銭的、また親との関係を含む精神的貧困のなかでの
自分の「居場所探し」の側面があり、貧困の結果であって、原因ではない。
通信課程でも女子生徒が高校に進学することが、
貧困をうみだすかのような言説は、いかがなものだろうか。

進学したほうが貧困から脱出しやすいことは、言わずもがなです。
一般に学歴が高いほど、賃金の高い専門的な知識や
技術を必要とする職種に就きやすいからです。
通信でも親が進学させようとするのも、そういう理由によります。
(当たり前のことですが。)

「義務教育しっかりやれば?」
「格差是正のための対策」


赤枝恒雄は原因と結果を完全に取り違えているということです。
貧困が原因としてあって、経済的にハンディがあるから
結果として進学に不利になるし、キャバクラのような性産業に
従事せざるをえなくなるし、望まない妊娠をしたり
ひとり親になったりすることになります。

赤枝恒雄は元産婦人科医なので、自説のサンプルは
自分の病院にかかりに来たかたたちだと思います。
眼の前にいる患者さんたちの事情を理解しないどころか、
このような偏見の眼で見ていた、ということになりそうです。




貧困ゆえにキャバクラへ行かざるをえないことが、
理解できない人は、おそらく赤枝恒雄だけではないのでしょう。
「貧困から性産業に従事するのは過去のお話だ、
現在はふつうの仕事として、カジュアルに性産業に従事している」などと
自分の本で主張する中村淳彦氏のような人もいるからです。

「貧困のための性産業従事」
「女性の権利と性産業従事」
「貧困のための性産業従事」
「性産業従事者は供給過剰か?」

中村淳彦氏の著書『日本の風俗嬢』は人気があるようで、
書いていることを真に受けている人も結構いるようです。
「貧困ゆえに性産業に従事せざるをえない」ことを
理解できない、あるいは理解したくない人は、
残念ながらたくさんいるのでしょう。


ほかにジェンダー的な観点として、なぜ女の子だけ
こんなことを言われるのか、という疑問があります。
赤枝恒雄は男の子の貧困はどう考えているのかと思います。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/sendayuki/20160413-00056549/
しかもなぜわざわざ女子学生だけを取り上げて、
「とりあえず中学を卒業した子どもたちは仕方なく親が行けってんで
通信(課程)に行き、やっぱりだめで女の子はキャバクラ行ったりとか」し、
望まない妊娠をして離婚し、元夫側から養育費を
受けられず貧困になるといわなければならないのか。

ひとり親になった女性が、元夫から養育費を受けられないのも、
その女性の責任だと赤枝恒雄は言いたげです。
それは本来は養育費を払わない元夫の責任であり、
養育費の不払いを容易にする日本の法律の責任です。
元夫が養育費を払わないほうが当然と思っているのでしょうか?

「養育費の高い未払い率」



赤枝恒雄の挙げた事例は、貧困のケースとしては
偏っていると思ったかたも少なくないと思います。
産婦人科医として自分の見てきた世界だけで、
社会全体を語っているということではないかと思います。

その自分が見てきた世界の人たちでさえ、
前述のように原因と結果を適切に把握していないことになります。
ずいぶんと見識が狭いということかもしれないです。

http://b.hatena.ne.jp/entry/284968127/comment/zhy
元産科医だから「望まない妊娠をした女の子」を
たくさん見てきたのだろうけど、それ、偏ったサンプルだから。
通信制の生徒で産科に行ったことのある女の子、ごく一部だから。


posted by たんぽぽ at 23:29 | Comment(6) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
『読んでて怒りで吐きそうになった』。

私もそう感じました。
月並みな言い方ですけど、『もうこの顔を見るのもいや』。

二つ前のエントリの続きになりますが、この赤枝議員は2期目の、
まあ党内ではまだ新顔といったポジションなんですよね?
地盤も支持層も固まっていないから支持を取り付ける為に、
こうしてアピールしている、と。
じゃあこれ、一議員の考えじゃないんですね。
日本という国は、女性をこう考えているってことなんですか。

ああもう本当に、『日本しね』ですわ。
女の子を持つ親御さん、もう親子共々心折れるんじゃないですか。
苦しい思いをして産んで、何もかもままならない中、一生懸命育ててこれか、と。

>『次に落ちるのは保育に無頓着な政治家達だ。そう脅しをかける覚悟があるのか。』

これの前段、

========================
#保育園落ちたの自業自得だ。
政治家の後援会には常に老人ばかり。加えて政治家に毎日のように陳情。
そして何より必ず選挙に行く。若者が声をあげるのは困った時だけ。
========================

なんて、よくも言ったものだと思います。
彼らは若い世代の、それも個人票になんて目もくれず常に組織票頼みで選挙やってるのに。
そもそも国民が”脅し”をかけないと働かない政治家に、じゃあ何ができるんだよ?と。
せめてこの程度のことに考えが及ぶ大人っていないんですかね、この国には。
(いなけりゃもう、本格的に「日本死ぬ」だろう。)
Posted by あやめ at 2016年04月21日 01:52
あやめさま、こちらにコメントありがとうございます。

>この赤枝議員は2期目の、まあ党内ではまだ新顔と
>いったポジションなんですよね?
>地盤も支持層も固まっていないから支持を取り付ける為に、
>こうしてアピールしている、

2012年初当選、現在2期目の自民党議員は、こういうのが多いですよね。

セクハラ野次と「マスコミ懲らしめ」発言と
「巫女のくせに」発言の大西英男。
http://lacrima09.blog.shinobi.jp/Entry/1006/
http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/30/onishi-again_n_7693646.html
http://www.asahi.com/articles/ASJ3S5R81J3SUTFK00X.html

反ワクチンや、「戦争行きたくないは利己的」発言や、
「別姓は個人主義の問題」の武藤貴也。
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20140626#p1
http://www.huffingtonpost.jp/2015/08/01/muto-takaya_n_7916664.html
http://taraxacum.seesaa.net/article/423476092.html

このような議員を2度もたくさん当選させたことに対して、
有権者は自身の責任を考える必要が、そろそろあるだろうと思います。


>彼らは若い世代の、それも個人票になんて目もくれず
>常に組織票頼みで選挙やってるのに

「選挙に行こう」「投票率を上げよう」としか言いようがないのですよね。
いかにして候補者が、組織だけでなく浮動票の民意を
重視するようにするかは、いろいろと議論され
選挙制度を変えたりもしたけれど、決定的に効果的なことはないようですね。

日本会議のような右翼組織の存在を広く周知させるのは
一案だと思うけれど、この手の組織は
マスコミが報道したがらないのですよね。
Posted by たんぽぽ at 2016年04月21日 22:39
こちらにもこっそりこんばんは。

あたしは赤枝氏が見てきた貧困自体を否定する気はないんですけど(偏っているとはいえ存在はしてるわけだし)、ほんと、原因と結果を取り違え過ぎですよね。
あたしは両親共に田舎出身の割には恵まれた環境で育って、幼稚園の頃から読める本は読んでました(その結果、カタツムリを「よかれ」と思って溺死させたことがあります…)けど、貧困層の家庭にはそういう環境なくてもおかしくないですし。
ましてや、学校に入ってからの自宅学習が出来る環境となると、どれほどの格差になるか。想像するだに怖いものがあります。

>男の子の貧困

男性は肉体労働に適性があるということで、あまり問題視されないのかもしれませんね。

http://www.nenshuu.net/sonota/contents/gakureki.php

平均を取ると、中卒男性は高専・短大卒女性と同程度には稼げるようですし。
(ただ、低学歴で正社員の職がある人は基本的に年齢層が高いと思われるので、そう考えると低学歴男性でも若い人は厳しそう)

賃金のデータを見ると学歴差別以上に性差別が浮かび上がっちゃう(ように見える)この国の状況が、凄く、しんどいですね。
Posted by 七重 at 2016年04月22日 01:43
七重さま、こちらにもコメントありがとうございます。

>あたしは赤枝氏が見てきた貧困自体を否定する気はないんですけど
>(偏っているとはいえ存在はしてるわけだし)、
>ほんと、原因と結果を取り違え過ぎですよね

そういう事実はあると、わたしも思います。
適切に状況を分析、把握できないということですね。
いくら事実をたくさん見てきても、その事実に対して
適切な理解ができない人は、ときどきいらっしゃるようです。

>その結果、カタツムリを「よかれ」と思って溺死させたことがあります…)

あうう。

>ましてや、学校に入ってからの自宅学習が出来る環境となると、

貧困層と裕福層は家庭環境が違いますよね。
学歴のある裕福層ならおおむね親に教養があるし、
子どもが知識に触れやすい環境にもなっていると思います。
それに加えて、裕福層の子は学習塾や習いごとに
行けるという有利さもありますからね。
「蛙の子は蛙」になるのもごもっともだと思います。


>>男の子の貧困
>男性は肉体労働に適性があるということで、

赤枝恒雄個人に限って言えば、産婦人科なので女の子しか見ない
ということはありそうです。

>http://www.nenshuu.net/sonota/contents/gakureki.php
>平均を取ると、中卒男性は高専・短大卒女性と同程度には稼げるようですし

こちらにジェンダーでわけた図を載せています。
差が歴然としています。
http://lacrima09.blog.shinobi.jp/Entry/768/

>賃金のデータを見ると学歴差別以上に性差別が浮かび上がっちゃう
>(ように見える)この国の状況が、凄く、しんどいですね

「男は学歴がなくてもだれでも受け入れられる、
女は学歴のあるものだけが受け入れられる」
という図式がはっきりしていると思います。
Posted by たんぽぽ at 2016年04月23日 11:12
たんぽぽ様

自分はデータを読取るということが苦手で、感情面からのみの発言になってしまうので、大変拙い内容に申し訳なく思っているのですが。

自分が嫌いな言葉のひとつが「自己責任」なのです。
これは少なくとも、政治家が言っていい言葉ではありません。

確かに選択の自由があり、その中でも何かを自分の意志で選択する場合、そこにはその選択に対する義務と責任が発生するでしょう。
しかし、その選択を行なわせる側には責任はないのでしょうか。その選択肢を用意した者、その選択肢を容認した者には、なんの瑕疵もないのでしょうか。

キャバクラという選択肢が正しくはないことを、この政治家は暗に口にしている。では、その政治家はキャバクラという選択肢が存在し、それが容易に選択できる社会システムについて、問題視するべきだった。それを野放しにしておきながら、政治家としての責任を感じることもなく、ただそれを選ぶ人を見下している。

こいつのどこが政治家ですか、あほじゃないの。

政治家としてのスタンスも見極めることができないクズの妄言は、もうさんざん聞き飽きました。いまのこの国には、真っ当な政治家もいなければ、たとえ真っ当な政治家がいても、それを取り上げようとするマスコミもない。
こんな国、本当に死んでしまえばいいんだ。
Posted by aka21 at 2016年04月24日 17:00
aka21さま、こちらにもコメントありがとうございます。

>自分はデータを読取るということが苦手で、感情面からのみの発言になってしまうので、

いえいえ、ぜんぜん問題ないですよ。
遠慮なくコメントをいただけたらと思います。


>自分が嫌いな言葉のひとつが「自己責任」なのです。
>これは少なくとも、政治家が言っていい言葉ではありません。

わたしも嫌ですよ。
強者や既得権益者のおごりを感じさせます。
でも日本人は「自己責任」を振り回すのが好きな人が多いですね。

政治家の仕事は、市民がどのような幸福でも
追求できるよう、基盤を整備することですからね。
「自己責任」論を振り回していては、
かかる基盤整備をおこたることになるというものです。

>確かに選択の自由があり、その中でも何かを自分の意志で選択する場合、

「自己責任」が好きな人は、選択の自由がない、
もしくはかぎられる人の存在や状況が理解できないのでしょう。
どんな選択でも本人の自由意志で可能だと、
思い込んでいるのだと思います。


>こいつのどこが政治家ですか、

本人の見識のなさが現れると思います。
とくに自民党には、こういう考えの議員が多いのでしょう。
自民党の「党是」的な考えだし、支持する人も多いだろうと思います。

>もうさんざん聞き飽きました。

はなはだ残念なことに、まだまだたくさん聞かされそうです。
Posted by たんぽぽ at 2016年04月25日 22:39
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