2016年05月01日

toujyouka016.jpg 保育士の給与が低い理由

匿名記事「保育園落ちた日本死ね」をきっかけにして、
保育士の待遇改善が話題になっています。

保育士や介護士の賃金に関する記事をいくつかご紹介です。

「介護士の厳しい待遇は「女性労働だから低賃金で低待遇」」

「大学教授「保育士不足は、保育士による声なき抗議」と指摘」

 
ひとつ目の記事には、民進党の山井和則衆院議員のコメントがあります。
安倍政権は保育士の賃金を2%引き上げる方針を進めていますが、
これは2012年の民主党政権のときに決まっていたことだったのでした。

「保育士の給与を月に4%上げると言っていますが、
そのうち2%は人事院勧告といってすでに決まっていること。
残りの2%も今から4年前、民主党政権のときに民・自・公で
2%上げましょうと決めたことがまだ実行されていないだけ」

匿名記事「保育園落ちた」の反響に驚いて、きゅうに安倍政権は
保育士の賃金を2%引き上げることを、検討し始めたのでした。
これはじつは大したことではなく、いままでずっと放置してきたことを
きゅうにやることにしただけということです。

「「保育園落ちた」政権の対応」
「「保育園落ちた」政権の対応(2)」

何度かお話していますが、保育士の給与を全産業平均にするには、
月に10万円以上の賃金引き上げが必要と計算されています。
2%は月に4000-5000円程度ですから「もうしわけ程度」です。
この程度の引き上げでも、自民党・安倍政権は不熱心だったのでした。

「保育所が増えない理由」
「保育士が不足する理由」


保育士の給与がなぜ低水準のまま放置されるのかですが、
ひとつはこれまでに何度かお話したように、
「子どもと遊んでいるだけ」のように思われて、
特別な知識のいらない家庭の育児の延長のように見られるからです。

「保育士の給与はなぜ低い?」

もうひとつ大きなこととして、保育や介護は「女の仕事」と見られ、
「女の仕事は低賃金でかまわない」と思われていることがあります。
これは多くのかたが思っていたことだろうと思います。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160417-00026306-jprime-soci
「厚労省が先月発表したデータでは、保育も介護も、
全職種平均より10万円以上も月収が低い。
そして保育や介護の現場で働く人のほとんどが女性です。
つまり、女性労働だから低賃金で、低待遇だということ。
家族介護や育児の延長だろうといって、安くみられているのです」
「いまの社会のなかで、女性労働そのものが軽く見られる
構造があり、それが低賃金につながっています。
そこから根本的に変えていかないといけないのに、
安倍政権は、女性の活躍推進と口では言いながら、
いざ介護や保育の賃金を上げようと野党が言えば反対する。
本腰を入れる気がない」

日本社会における賃金のジェンダー格差が大きいこと、
それは国際的に見ても大きいことは、これまでに何度もお話しています。
こうした社会であれば「労働者は女性ばかり」とされている職種は、
全体の水準が低く抑えられることはむべなるかなです。

「学歴別年収のジェンダー差」
「男女&雇用形態別年収分布」
「収入のジェンダー格差」
「OECDの男女格差の報告」


匿名記事「保育園落ちた」を、民進党の山尾志桜里議員が
衆議院の予算委員会で取り上げたとき、安倍首相は最初は匿名ゆえに
「本当に起こっているのか確認しようがない」などと言って、
まともにとり合おうとしなかったのでした。

そのとき「誰が書いたんだよ」「中身のある議論をしろ」
なんて野次もいくつか飛んだのでした。
野次を飛ばしたひとりの平沢勝栄は、あとでテレビ出演したとき
「本当に女性が書いた文章ですか」などと論難をつけていました。

「平沢勝栄・匿名記事に論難」

保育士の賃金の5万円引き上げを要求する署名が集まりましたが、
塩崎恭久厚労相は「野党のやり方にいつまで付き合うのか」と
自民党の幹部から言われ、直接受け取らなかったのでした。
自民党・安倍政権は保育士の待遇改善には
それくらい不熱心で、反対したいことなのでしょう。

「保育士の賃金増額の署名」


不熱心なのは自民党や安倍政権だけではないです。
匿名記事「保育園落ちた」が大反響となったとき、
あからさまに反発する「反フェミ」や「自己責任論者」の
識者や為政者がたくさん出てきて、無理解なことを言い放ったのでした。
保育の仕事に対する軽視、「女の仕事」に対する軽視は、
日本社会全体に蔓延しているということなのでしょう。

「匿名記事・反発する人たち」

「保育園落ちた」は「消えた年金」と同じ事態になることを
懸念する声
も、自民党の中にはありました。
「消えた年金」のときは、「保育園落ちた」のときのような
反発はなかったのであり、この違いも「保育」「女の仕事」ゆえに
軽視されることの現れだと言えます。


保育士に離職者が多く出て人手が不足するのは、
「待遇の悪い職種には人が集まらない」という
ごく当たり前のことが起きているだけということです。

保育士が不足するのは、こうした保育士の低賃金に対する
「声なき抗議」と考え、社会はそれを受け止めることだという指摘は
まったくもっともなことだということです。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160416-00026242-jprime-soci
「今の保育士不足は、私は保育士による声なき抗議だと思っています。
辞めることで意思表示をしている。
それを社会はしっかり受け止めなければなりません」


posted by たんぽぽ at 22:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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