4月19日から4月21日までは「家族」でした。
自民党の憲法草案のうち家族に関するところは、
わたしのブログでもこれまでにも何度もお話しています。
朝日の連載ではまだお話したことのない内容も出てくるので、
これを見ていきたいと思います。
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」
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「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」
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「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:下 女性の地位向上は個人主義?」
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全文:
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」(1/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」(2/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:下 女性の地位向上は個人主義?」(1/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:下 女性の地位向上は個人主義?」(2/2)
朝日の連載で取り上げられる「家族」の条項は、憲法24条がメインです。
「上」では現行憲法にある「婚姻は、両性の合意のみ」の「のみ」が、
自民党の憲法草案ではなくなっていることを指摘しています。
間違い探しではないけれど、現行憲法の条文と比べて、2文字消えている。
「両性の合意のみに基いて」の「のみ」だ。
「自民党憲法草案の条文解説」
現行
草案
解説
現行憲法の24条にある「両性の合意のみ」というのは、
1. 男性だけの一方的な意志によらない、
2. 親族など結婚するふたり以外の意志が入らない、
といったことを規定したものです。
戦前は「イエ制度」が存在し、結婚はイエの存続のためであり、
家長となる男性中心だったのでした。
それゆえ男性だけの意思で結婚が決められたり、
親や親族の意思が優先することが当たり前だったのでした。
旧憲法下では、結婚は家のためにするもので、
家長や親の同意が必要だった。いわゆる「家制度」だ。
新憲法はこれを否定し、「両性の合意のみに基いて成立」と
規定することで、親や第三者の意思によって妨げられることのない、
婚姻の自由を保障した。
「両性の合意のみ」という条文は、婚姻の自由を保障するための
「イエ制度」からの決別ということを示しています。
憲法24条の規定は、少なくない自由な結婚を望む人たちにとって
大いなる励みにもなったことと思います。
”自民党草案には「のみ」がない。渋谷さんは思う。「のみ」がなかったら、自信をもって結婚できなかったかもしれない、と。” / “(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字:朝日新聞デジタル” https://t.co/Lq78sfF7uS
— akupiyo (@akupiyocco) 2016年4月21日
自民党の憲法草案で「のみ」が削られたということは、
結婚するふたり以外の意思の介入を容易にするためと予想できます。
ここには男性の意思優先の結婚や、親や親族の意思が結婚に介入する
余地を作るという、イエ制度への回帰が考えられます。
2015年12月に同姓強制の現行民法を合憲とする
最高裁判所の判決が出たのでした。
現状でさえ、結婚の際どちらかが必ず改姓しなければならない
という要請が、「両性の合意のみ」の「のみ」に
反しないと解釈されるくらいです。
「夫婦別姓訴訟違憲判決ならず」
「同姓強制の合憲と家族思想」
「のみ」がなくなったら、なおさら改姓を要求しても
憲法に違反しないと解釈され、合憲となる可能性が高くなります。
自民党は選択的夫婦別姓には一貫して反対しているし、
彼らの憲法草案は、選択的夫婦別姓を認めなくても
容易に合憲とできることを意識しているでしょうから、
当然のことではあると言えるでしょう。
「自民・同姓強制合憲を評価」
「自民党・選択別姓反対小史」
「両性」という表現はそのままになっています。
自民党は「両性」となっていることを理由に、
現行の24条を同性結婚の禁止の規定と解釈しています。
「両性」がそのままというのは、同性結婚は相変わらず
認めないままにしやすくするためということでしょう。
現行憲法の24条は、上述のように「イエ制度」の否定であり、
男性だけの一方的な意思で結婚を決められたり、
結婚するふたり以外の意思の介入を防ぐためのものです。
よって同性結婚を禁止する規定ではないのですが、
同性結婚に反対したい人たちは、「両性」を同性結婚禁止の
ていのよい方便に使うということです。
「憲法24条と同性結婚」
「LGBTについての自民基本方針」