自民党の憲法草案の家族に関することを取り上げた朝日新聞の連載です。
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」
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「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」
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「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:下 女性の地位向上は個人主義?」
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全文:
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」(1/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」(2/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:下 女性の地位向上は個人主義?」(1/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:下 女性の地位向上は個人主義?」(2/2)
朝日の連載「上」の後半では、自民党の草案で新しく
追加される24条1項について言及があります。
これこそ彼らが信奉している「家族思想」を「信仰」することを
憲法で定めようということにほかならないです。
1 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。
家族は、互いに助け合わなければならない。
改憲草案の解説サイトでは「「家族」が何を指すのかが
解釈にゆだねられていますが」とありますが、
自民党の立法趣旨は「家族思想信仰」のことでしょう。
「家族思想という信仰」
戦後の高度経済成長期に、戦後民法と企業利益の家族管理によって
定着した「夫が働き妻が専業主婦で子どもはふたりがいい」
という「標準家族」を「正しい家族」とする思想です。
「自民党憲法草案の条文解説」
現行
草案
解説
これは自民党が作った憲法改正草案のQ&Aを見ると
さらにスタンスがわかるようになると思います。
Q19とQ20の両方で「家族の絆が薄くなってきている」と書いています。
2回書くのですからよほど大事なのでしょう。
「日本国憲法改正草案 Q&A 増補版」
ここに出てくる「家族の絆」というのが「家族思想信仰」のことです。
「薄くなっている」とは「信仰が薄れている」ことであり、
「信仰に当てはまらない『異教徒』」の家族が増えている
ということを意味するにほかならないです。
「伝統的価値観・きずな・一体感」
Q20では
この規定は、家族の在り方に関する一般論を訓示規定としてなんて弁解しています。
定めたものであり、家族の形について国が介入しようと
するものでは、全くありません
憲法という国の基本方針によって「家族の在り方に
関する一般論を訓示規定として定めた」ら、
それは国家による家族のありかたへの介入を意味するでしょう。
「全くありません」なんて言われても信用できないというものです。
憲法草案の解説サイトでは、婚外子差別の維持や選択的夫婦別姓の
否定を合憲とする方向に働く可能性に言及されています。
これは言わずもがなのことだと思います。
婚外子と夫婦別姓こそ、真っ先のターゲットでしょう。
家族という単位を尊重することは、
非嫡出子(婚外子)の相続分が半分であることや、
夫婦別姓が選択できないことを合憲とする方向に働く変更です。
「家族思想信仰」は「信仰」に当てはまらない家族形態を
「異教徒」として排除、もしくは黙殺する思想です。
婚外子や夫婦別姓は戦後の民法で、法的権利や地位が定められなかったため
「異教徒」ということになります。
「家族思想信仰」を憲法で国の基本方針として定めるということは、
婚外子や夫婦別姓を「異教徒」として排除することを
憲法でお墨付きを与えようとすることにほかならないです。
自民党が作った憲法改正草案のQ&AのQ19とQ20では、
両方に世界人権宣言の16条3項への言及があります。
自民党の憲法草案の24条の規定は、世界人権宣言の規定に
一致していると言いたいということです。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/1b_002.html
第十六条
3 家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、
社会及び国の保護を受ける権利を有する。
世界人権宣言の家族に関する規定は「個人のための家族」であり、
「個人の権利を保障するための国家による家族の保護」です。
「世界人権宣言と家族条項」
自民党の憲法草案は国家によって家族のかたちを決めて
それに国民を従わせるという「国家のための家族」です。
国家の家族思想のために個人の権利を否定するのであり、
「個人のための家族」という世界人権宣言の趣旨とは
まったく反することになります。
自民党の憲法草案と世界人権宣言とで共通するのは、
「家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位」という
同じ文言が入っているだけ、ということになります。
国家による家族管理が、反人権思想でありグローバルスタンダードに
反していることを言い逃れるために、世界人権宣言と同じ文言を
憲法草案に入れたのだろうと、わたしは想像します。