2016年05月05日

mar0006.gif自民改憲草案・家族の助け合い

5月3日エントリ5月4日エントリの続き。
自民党の憲法草案の「家族」を取り上げた朝日新聞の連載です。
今回は連載の「中」を見ていきたいと思います。

「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」
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「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」
(はてなブックマーク)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:下 女性の地位向上は個人主義?」
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全文:

「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」(1/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」(2/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」(1/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」(2/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:下 女性の地位向上は個人主義?」(1/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:下 女性の地位向上は個人主義?」(2/2)


朝日の連載「中」では、自民党の草案で追加される24条1項のうち
「家族は、互いに助け合わなければならない」という文言に注目しています。
これも背景には「家族思想信仰」があるのですが、
自民党の憲法草案にきわだった特徴でもあります。

1 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。
家族は、互いに助け合わなければならない。

記事では最初のほうで、山谷えり子の認識が紹介されています。
「信仰」に従った「家族」であれば無条件で幸せになれるとか、
それをお仕着せするのが国家の役目とこころえる
「家族思想信仰」の考えかたがよく表れていると思います。

「社会の基礎単位としての家族については、かつてのように三世代の
同居・近居が増えて行けば睦み和らぎの心も豊かになっていくはずです。


三世代同居が困難であることは、以前にお話したことがあります。
配偶者の親とはずっと暮らしてきた環境が異なるし、
カチカンの違いも大きいので、同じ家に同居すれば
おのずと心理的、精神的負担が大きくなるからです。
「配偶者の親は他人と思え」です。
他人と同じ屋根の下で暮らして、簡単にうまくやれるはずもないわけです。

「3世代同居で少子化対策?」
「3世代同居の住宅政策」
「3世代同居の住宅政策(2)」



「家族の助け合い」を憲法でお仕着せしたら、カチカンの異なる
「身内」との接触も、望まなくても増えることになるでしょう。
家族どうしのトラブルはもっと頻繁になることと思います。


以下の指摘はとても大事だと思います。
「きずな」が生じるほうが奇跡と思ってちょうどいいでしょう。

「今からドキドキが止まらない『3世代同居の住宅政策』が推進された後の日本」
住んでいれば自動的に『絆』が生まれるものじゃないんですよね。
絆というのはそこにいる人間たちが一所懸命関係を構築しようという
たゆまぬ努力の上で成立する『奇跡の産物』です。

山谷えり子のような「家族思想信仰」の「信者」は、
こういうことをぜんぜん理解しようとしないということです。
「信仰」ゆえに、自分が奉じる「信仰」にのっとれば
「きずな」は自然発生するはずだと、根拠もなく思い込んでいるのでしょう。


「家族の助け合い」を強要することによって、
トラブルが増える恐れがあるのは、3世代同居だけではないです。
朝日の連載には次のような例にも触れています。

大手企業に勤める40代の男性。
両親は幼い頃に離婚し、母親に育てられていたが、
小学3年生の時、父親が目の前で母親を刺殺した。
刑務所に入った父親とは以来会っていなかったが、
ある日、福祉事務所から通知が届いた。
父親が生活保護を申請し、男性に扶養義務があることが書かれていた。
ひとくちに家族といっても内実はさまざまだ。
3世代仲のよい家族があれば、親に虐待されている子どもも、
夫に殴られている妻もいる。

虐待親やDV親に対して「家族の助け合い」を要請したところで、
実際に「助け合う」ことはないでしょう。
そして被害にあっている、もしくはあっていた子どもや妻は
生命を含めた危険にさらされる可能性が高くなります。

上述の生活保護の例のように、まったく仲がよくなくて
長いあいだ交流もなかった親族に対して扶養義務を課されれば、
さらに深刻なトラブルに発展する可能性があります。


日本で起きる殺人事件の約半分は、加害者が家族や親族です。
世界全体で起きる殺人事件のうち15%がDVの被害です。
家族こそもっとも恐ろしいと思って、ちょうどいいくらいだと思います。

「家庭がいちばん恐ろしい」

「第2章 殺人事件の動向」
「世界の殺人犠牲者15%はDV 国連機関集計、12年」

「家族の助け合い」の要請によって、親族間のトラブルが
誘発されると、このような殺人や傷害事件といった犯罪が
親族間で起きる可能性が、さらに高くなることが予想されます。


自民党が作った憲法改正草案のQ&AのQ20では、
「家族は、互いに助け合わなければならない」という
文言についての解説がなされています。

「日本国憲法改正草案 Q&A 増補版」

q20 現行24条について、「家族は、互いに助け合わなければならない」 ? という一文が加えられていますが、そもそも家族の形に、国家が ? 介入すること自体が危ういのではないですか? ? 介入すること自体が危ういのではないですか?

5月4日エントリでも触れましたが、
ここでは世界人権宣言の16条3項が引き合いに出されています。
ところが世界人権宣言には「家族の助け合い」とか
「扶助義務」といったことはまったく出てこないです。
関係ないのに引き合いに出しているということです。

「家族のかたち 最高裁がなぜ踏み込む」(全文)

確かに世界人権宣言は、家族が国に保護される権利をうたうが、
家族相互の扶助義務は掲げていない。


自民党の憲法草案の家族に関する規定は、「家族思想信仰」という
家族のあるべき姿を国家で定め、国民全体に要請することです。
それは「国家のための家族や個人」であり、
「個人のための家族や国家」ではないということです。

朝日の記事では「国のための家族や集団のための個人に
変質してしまうのではないか」という懸念が示されていますが、
そう変質させるのが自民党の憲法草案の目的だと思います。

明治大学法科大学院の辻村みよ子教授(憲法)は
「現憲法は個人の尊重に裏付けられ、家族は自由で平等な
個人の結びつきとして想定されている。
それが、国のための家族や集団のための個人に
変質してしまうのではないか」と懸念する。

自民党の憲法草案が目指す「国家による家族の管理」は
全体主義国や共産主義国の家族観に特徴的なものです。
それは人権否定の思想にほかならないのであり、
そこへもってきて「人権保障における家族の重要性」なんて
書いたりして、なにをかいわんやだと思います。

「共産主義国の反同性愛」
「共産主義国の反同性愛(2)」

posted by たんぽぽ at 22:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 法律一般・訴訟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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